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ふわめで!~ふわりちゃんは今日も御曹司をふわふわ愛でる。~  作者: 秋野凛花
3「……他の人なんて、いないよ……」
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第9話「私と西園寺くんは……全然関係なんてないので!!」

 突然自己紹介? と思うけど、綺羅ちゃんにそう促される。だから私はもくもくくもパンをなんとか飲み込むと、意気揚々と席を立ちあがった。


「不破ふわりですっ!! 私はふわふわなものが大好きで、よくふわふわなものを集めたり、触ったりするのが趣味ですっ。なんかオススメのふわふわがあったら教えてくださいっ。……よろしくお願いしますっ!!」


 ふわふわ好きアピールのため、持っている鞄を見せてみる。どうだ!! 私愛用のふわふわバッグ!! あ、ふわふわなだけじゃないんだよ? ちゃんとノートパソコンも入るサイズだし、結構内容量が多いんだ。急に荷物が増えても平気!! 持つ紐もしっかりとした素材だからね、大学生にはありがたい!! 何よりふわふわ!! 常にふわふわを身に付けられる!!

 あ~、こんな理想の鞄に出会うまでには、本当に険しい道のりだった……!! こんな素敵な鞄に出会わせてくれてありがとう世界。ありがとう鞄を作る人!!


「はい、少し見たら分かる通り、この子はだいぶ変な子です」

「綺羅ちゃん!?」

「……確かに、変な子ね……」

「えぇ!?」


 知らない人にまでそう言われることある!? だって皆ふわふわなもの好きじゃないの!? え!? 私だけだった!?


「こんな変な子がいたら、西園寺惟斗だって見るでしょ。……この前はペアワークでたまたま一緒になってたわけだし、話したことがあるならなおさらね。五分話しただけで、この子からは『ふわふわ』という単語が二十回は出るわ」

「二十回も……!?」

「綺羅ちゃんそんな回数数えてたことあるの!?」


 っていうか、そんなに言ってるの私!? ……言ってても、十回くらいだと思うけど……(十分多いわよ。By綺羅)。


「あんたらだって、こんなインパクト強い子がいたら、つい見たくなっちゃうでしょ。西園寺惟斗だって同じよ。……分かったら、言いがかり付けるのやめてくれる?」


 綺羅ちゃんはきっぱりとそう言い切る。綺羅ちゃんの放つ圧に、女の子たちはまたタジタジになってしまった。だけどすぐに気まずそうに俯き、綺羅ちゃんから私に向き直る。


「……不破さん、変なこと聞いて、ごめんなさい」

「お食事の邪魔もしちゃって……」

「いっ、いえ!! 私と西園寺くんは……全然関係なんてないので!! ご安心を!!」


 自分でそう言い切ってから、ちくりと心が少し……痛んだ気がした。

 そのことに自分で戸惑って、思わず胸の部分を手で抑える。けど、一瞬のその痛みの正体は、すぐに分からなくなってしまった。……全然関係ないって、嘘吐いちゃったから、かな。


 私の言葉に女の子たちは納得したように頷いて、その場から立ち去っていく。するとその先に……こちらを見ている西園寺くんがいることに気が付いた。講義室に入って、すぐのところ。今の、もしかして聞かれてた……?


 目が合って、でも今日は、どうしてかな。微笑むことが出来ない。どうしよう、と思っていると。


 ──西園寺くんは、私から目を反らした。それを見て、私の心臓がぎゅっと絞められたみたいに、痛くなっちゃって。


 ……分かってる。ずっと入り口に立ってたら、邪魔だよね。移動するために私から目を反らしただけだ。前を見ないと危ないから。

 分かってるのに……どうして、こんなに、苦しいと思っちゃうんだろう……。


「二人ともおはよ~」

「あ、日恋。おはよう」

「なんか綺羅が啖呵切ってたのとふわりが元気に自己紹介してるのは見たんだけど、どうしたの?」

「見てたなら割り込んでくれたら良かったのに……」

「いやぁ、綺羅が頑張ってたから、余計な手出ししない方がいいかな~って思って」

「もう……」


 そこで日恋ちゃんもやって来たらしい。いつも通り三人揃ったので、私、綺羅ちゃん、日恋ちゃんの順に横並びで座った。


 二人が話しているのを、私は意識半ばで聞く目の前に置かれたもくもくくもパンをじっと見つめて。でも今は心がときめきそうになかったし、残りを食べる気も起きなかった。


「ていうかふわり、ああ言われるくらいなんだから、西園寺惟斗と遊んだりするの、もうちょっと慎重にした方がいいって……ふわり?」

「ふわり~、どうしたの? お腹痛いの?」

「……えっ? ぜ、全然、お腹痛くなんてないよ!!」

「でもふわり、元気無さそう……綺羅がふわりのこといじめるから……」

「はぁ!? 全然いじめてないし!!」

「やだ~、怖い~。ふわり、いじめられたら私に言うんだよ?」

「も~……ふわり、いじめられたら私にも言ってね!! 飛んでくから!!」

「……ふふっ、綺羅ちゃんも日恋ちゃんも本当に優しいなぁ。ありがとうっ!!」


 両隣にいる綺羅ちゃんと日恋ちゃんに抱きしめられる。そうしたら心の中がぽかぽか~、ふわふわ~ってしてきて、思わず笑顔が零れた。それを見て、綺羅ちゃんも日恋ちゃんも笑い返してくれる。


 ……でもそうしていると何故か私は無性に、西園寺くんの髪をふわふわ~ってしたくなってきてしまって、また少しだけ、心がぎゅっとなった。

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