ドキドキ本格ホラー!? なハロウィーン!!
※2025/10/31に投稿したものです。
「ゆいく~ん!」
背後から聞き慣れた声が響き渡り、俺は振り返った。そして俺は目を見開く。
「ふ、ふわり? それは……」
「ふふふ、今日はハロウィンだからね! トリックオアトリートなのだ~っ!!」
そこにいたのは、俺の彼女である不破ふわり。……だよね? 大きく厚いシーツを被っていて、正直判断材料が声と身長しかない。
「よくそれで大学入れたね……」
「ゆいくんの姿を見つけてから被ったからね!!」
「ああ、なるほど……」
俺はふわりの被るシーツに触れる。やはり見た通り、厚い生地で出来ていた。寒くなり始めたとはいえ、こうして暑いのではないだろうか……なんて心配もしてしまう。布越しにその表情を確認することは出来なかった。
「暑くないの? 大丈夫?」
「大丈夫だよ~! 心配してくれてありがとうっ」
「そう……ならいいけど……」
「それよりゆいくん、トリックオアトリートだよ!!!!」
そう言うと、シーツの下からにゅっと手が出てくる。ここにお菓子を乗せろということか。
俺は鞄を肩から下ろすと、中からあるものを取り出す。ふわりからお菓子をねだられることは想定済みだ。なんせふわりはこういう、楽しいことを積極的に楽しむ人だからね。
「はい、どうぞ」
「へっ」
無事にお菓子を渡すと、何故だか気が抜けたような声が聞こえる。そして手がシーツの下に消えた。
「あ、マシュマロ……」
「パッケージがハロウィン仕様のカボチャ柄になってて、可愛いよね。中にチョコも入ってるよ」
「ふーん……」
あれ、と俺は首を傾げる。思ったよりふわりのテンションが上がっていない。
ふわりはふわふわなものが好きだ。それは食べ物だってそうだ。ホワイトデーのお返しにマシュマロを渡した時は喜んでいたのに……あ、いや、一緒だからか。他にあげるもの無いのかって思われたかな。でも、パッケージが可愛かったからふわりにも見てもらいたくて……ってそれは言い訳か。どうしよう、呆れられたかな。
一瞬で思考が頭の中をぐるぐると回っていく。背中に冷や汗が流れると同時、声が二つ響いた。
「──イタズラできなくて残念」
「──ゆいくん? ぼーっと立ってどうしたの?」
ふわりの声が、二つ。
「……えっ」
俺は慌てて振り返る。──そこに立っていたのは、ふわりだった。シーツを被っていない、いつも通りの私服……いや、強いて言うならなんか猫耳カチューシャして裾の長い黒のカーディガンを着ているけど……。
……いや、そんなことより!!!!
「ふ、ふわり!? えっ」
「? なんでそんなに驚いてるの?」
「いや、だって、じゃあこっちのふわりは──」
俺は再び振り返り、動きを止める。……そこには既に、誰もいなかった。白のシーツも、マシュマロも、何も。
……つまり……つまり? どういう……。
「ゆいくん、顔色悪いよ? 大丈夫……?」
「だ、大丈夫じゃないかも……」
「大丈夫じゃないの!? えーっ、お水飲む!?」
俺の答えに、ふわりが心配したようにふわふわバッグからペットボトルを差し出してくれる。もう間接キスだとか何も考えられず、そのまま水を飲ませてもらった。
……そうして深呼吸したら、少しだけ落ち着いてきた。いや、結局何も分からないけど……。
「……ふわりそれ、仮装?」
「え? うんっ!! 猫耳かわいいでしょー!!」
「……うん、かわいい」
俺が素直に褒めると、えへへ~、とふわりは両手で頬を抑えて嬉しそうに笑う。
「そのカーディガンも、なんだかマントみたいだね」
「あっ、分かってくれる!? 魔女のマントイメージでお洋服選んだんだ!!」
「ふわりがふわふわじゃない服着てるの珍しいからね」
「えーっ!? 私そんなふわふわな服しか着てないイメージある!?」
「ある」
「あっ……う、ま、まあ、それもそうか……」
納得をするふわりを見て、俺は小さく笑う。本当にこの子は、見てて飽きないな。
「うっ、うぅっ、トリックオアトリートだよ!! ゆいくん!!」
そして反論を失ったらしいふわりは、ハロウィンお決まりの台詞を口にした。それで先程のことを思い出した俺は、考えるより先に口を動かす。
「……お化けにお菓子取られたから、イタズラしていいよ」
「えっ……えぇぇぇぇ!?」
「さて、ふわりが何をしてくれるか楽しみだな」
「ゆいくんお菓子くれると思ってたから、イタズラで何にするか考えてないよ~~~~っ!!!!」
ふわりの悲鳴が響き渡り、その様子に俺は声に出して笑ってしまうのだった。




