メモれ!! 特殊デート!!【後編】
※2025/8/5に投稿したものです。
というわけで、そんな会話をした後初めてのデートの日がやって来ました。
「暑いね~」
「そうだね。……気分が悪くなったりしたらすぐに言ってね」
「うんっ!! ゆいくんもね!!」
直射日光がギラギラ~って強いから日傘も差して、帽子もしてるから紫外線対策はバッチリ!! あとは飲み物も持ってるし、塩分タブレットも持ってるから、熱中症対策も出来てるよ!!
日傘を差すと横並びで歩くのがちょっと大変だから、ゆいくんに持ってもらっている(ゆいくんの方が背が高いからね!!)。でも傘をこちらに傾けてくれているから、ゆいくんがあんまり傘に入ってないかも?
だから私は傘を持つゆいくんの手に自分の手を重ねる。ふわり? と不思議そうに首を傾げるゆいくんに、私は笑いかける。
「ゆいくんもちゃんと入ってっ。そうしたらゆいくんの熱中症対策にもなるから!!」
「……うん、ありがとう」
私がそのままぎゅっと手を握ると、ゆいくんの頬が微かに赤く染まり、少しだけ目を反らす。う~んかわいい。
なんて思っていると、ふとゆいくんがスッと真顔になった。あ、この顔は知ってる。これは……。
「ふわり……ごめん、あの店入っても良い? 奢るから」
「……うん、大丈夫だよっ」
「ありがとう」
ゆいくんはそう言って笑うと、私の手を引いて指を差した店に入る。そこは雰囲気の良いカフェだった。まだ午前中だということもあり、人の姿はまばらだ。
席に案内され、私たちは座る。するとゆいくんはすぐに鞄からノートとペンを取り出す。もう何度も見ている、ゆいくんの愛用しているものだ。
「好きなの頼んでていいから」
「ゆいくんは?」
「俺は……アイスティーで」
「分かった」
短く会話を終えると、ゆいくんはすぐに何かを書き出す。そうなるともう彼は一人の世界に入ってしまっていて、もう見慣れた光景だった。
私はメニュー表をゆっくりと見る。あ、このチョコレートケーキ、ふわふわで美味しそう!! うーん、でもこの暑さだからアイスでも良いなぁ。あー、こっちのパンケーキでちょっとがっつり食べちゃってもいいかも? でもそうするとお昼が入らなくなっちゃうよね!? どうしよう~!!
一人で思う存分うんうんと悩んだ後、私はハーフアイス(バニラとチョコ味)とシフォンケーキ、そして紅茶とアイスティーを注文した。メニューが回収されてしまったので見るものも無くなり、必然的に私は目の前に座るゆいくんの顔をじっと見つめる。
う~ん、やっぱり綺麗なお顔だなぁ。視線を下げているから伏し目がちになってて、睫毛が落とす影がすっごく素敵!! 真剣な真顔もカッコいい!! ……あ、今ちょっと笑った。いいものが書けたのかな? えへへ、かわいいなぁ。大好きだなぁ。
そこで注文していたものが届く。アイスは私たちの丁度中間くらいに、シフォンケーキと紅茶は私の前に、アイスティーはゆいくんの前に置く。ゆいくんはチラリとアイスティーを一瞥したから、認識はしたと思う。
私はアイスをスプーンで掬うと、腕を伸ばしてゆいくんの口元に近づける。するとゆいくんは少しだけこちらを見て、小さく口を開けた。私はその口にアイスを放り込む。ゆいくんは口を動かして、一言。
「美味しいね」
「うんっ」
そしてまた静寂。私も一口食べて、ゆいくんに一口あげて……を繰り返すと、あっという間にアイスはなくなってしまった。
う~ん、このゆいくん集中タイムの間、あ~ん♡ をしてもゆいくん全然恥ずかしがらないから、堂々と出来て嬉しいんだよね~。普段は恥ずかしがってやらせてくれないから……。
アイスも食べ終わったので、今度はシフォンケーキに着手。ん~、ふわふわで美味しいっ♡ えへへ、何口でも食べられちゃうよ~。
「……よし、出来た」
するとそこで目の前から声が聞こえる。ゆいくんはノートを見つめて満足げな顔をしていて、その顔がまたかわいかった。
「出来たの?」
「うん。……ごめんね、いつも突然」
「全然大丈夫だよ~!! それより、良かったら読ませてほしいな」
「うん……はい、どうぞ」
ゆいくんは少し恥ずかしそうにしながら、私にノートを差し出す。私は出来上がった詩に目を通しながら、ニコニコと笑った。
やっぱりゆいくんの書く詩はすごくふわふわしてて、素敵だなぁ。一番に読めるのが私で、本当に嬉しい!!
……嬉しい、けど。
「ゆいくん」
「はい」
「私ね。……ちょっと、寂しいかも」
「……え?」
いつもはいの一番に詩の感想を言う。そんな私が急にそんなことを言ったからだろう。ゆいくんは小さく目を見開いた。
「一緒に居るのに、たまにゆいくん、一人の世界に入っちゃうから」
「……うん」
「私ね、ゆいくんの詩が大好きだよ。だからそういう、アイディアが思いついた時は私も嬉しいなって思う。でも……そこから先、ゆいくんとその時間を共有できるわけじゃないから……一緒に居るのに、一緒に居ないみたいで、ちょっと寂しいなって思う」
「……」
私がそう締めくくると、ゆいくんは黙る。眉を八の字にし、少し考え込んだ様子で。
……そしてすぐに、私に向けて頭を下げた。
「ごめん。俺、ふわりの厚意に甘えて、ふわりのこと考えられてなかった」
「……うん」
「これからは……気を付ける。ふわりが寂しく思わないようにするから」
「……うんっ」
私は笑って頷く。ゆいくんはホッと息を吐いて、それから。
「でも……その、アイディアはすぐメモしないと忘れちゃうから、メモすることだけは許してくれませんか……すぐ終わらせるので……」
「あはは、うん、それくらいなら大丈夫だよ」
「……ありがとう」
ゆいくんがふわっと笑って、私も嬉しくなる。思わず手を伸ばしてその頭を撫でると、ゆいくんの顔は更にふわふわになった。
……そして取り出されるノート。ゆいくんはそこに何かを書き込み始めて。
「え~!? 早速!?」
「だって、ふわりといると思いつくことが多くて……!!」
そう言いながらも手は止めないゆいくん。それがものすごく面白くて、私は再び大きな声で笑っちゃうのでした。
【オマケ5 終】




