メモれ!! 特殊デート!!【前編】
※2025/8/4に投稿したものです。
「あんたって惟斗先輩とどんなデートしてるの?」
私が来瑠ちゃんからそう聞かれたのは、穏やかな昼下がりのことだった。
「どんなって……普通だと思うけど」
私はふわふわかき氷を食べながらそう返す。ん~、ふわふわ!! 最高!! やっぱり夏はこうじゃないとね!!!!
私は家に居てもだらけちゃうだけだからと、学校が開いているのをいいことに大学に勉強しに来た。やはり夏休みだから校内に人は全然いなくて、図書館で快適~に勉強したんだ。
飽きたから帰ろう~、と図書館を出ると……そこで見つけたのは一つ下の後輩の来瑠ちゃん。どうやら部室に忘れ物があったとかで取りに行っていたらしい。私の顔を見てすぐ踵を返そうとした来瑠ちゃんに反射的に抱き付き、かき氷屋に行こう!!!! と誘って……今に至る。
「ぜぇ~~~~ったい嘘!!!! あの惟斗先輩よ!? すごく素敵なプランを組んで、一日中楽しませてくれるんでしょう!?」
「うーん、まあゆいくんが遊ぶ場所提案する時は、考えてくれてるかもだけど。それ結構稀だし。基本的には私から誘ってるし」
「……どういう場所?」
「水族館とか行ったなぁ。あ、あとは西の方に旅行に」
でもあの時は……色々あって、色々考えてた通りにはいかなかったなぁ……。
「旅行……!!!! くっ、マウント取りやがって……」
「えぇ!? 来瑠ちゃんに聞かれるまま喋ってるだけなのに……」
何故か机に突っ伏して悔しそうにされ、私はどうすればいいか分からなくなる。だけど視界に溶けかけるかき氷が目に写り、すぐにスプーンを持ち直して口に含んだ。ん~、ふわふわ♡
「そもそも私もゆいくんも、プラン組むのはあんまり好きじゃないんだよね」
「そうなの?」
「うん。だから基本的には大まかなことだけ決めて、臨機応変に楽しむ感じかな~」
本当に臨機応変なんだよね、例えば……。
「ゆいくん、たまに私のこと放っておくし」
「……は?」
私の言葉に、来瑠ちゃんが顔を上げる。私はかき氷を口に含んで溶かしてから、続けた。
「ほら、ゆいくんって詩を書いてるでしょ? 何かいいフレーズが浮かぶと、なんかベンチとかに座って一心不乱に書き始めちゃうんだよね」
「……デート中に?」
「デート中に」
「……その時あんたは何してるの?」
「隣に座ってボーっとしてるか、近くをウロウロしてるよ」
「……話しかけたりとかしないの?」
「ゆいくん、書いてる時に話しかけられるの嫌いだからね~」
「あんたそれでいいわけ!?!?」
「わっ!! びっくりしたぁ!!」
淡々と聞かれていると思えば急に大声を出され、私は思わず大きく肩を震わす。
しかし私の反応など来瑠ちゃんは全く意に介さず、身を乗り出して私に詰め寄ってきた。ああ、来瑠ちゃんのかき氷、すご~く溶け始めてるよ……。
「私だったら絶ッッッッ対嫌なんだけど!? デート中に放っておかれるとか!!!! 文句言ったりしないわけ!?」
「え~、でもゆいくんの横顔見るの楽しいし~、ゆいくん恥ずかしがり屋だから普段あんまり顔をマジマジ見せてくれないからいい機会だし~」
「何それ羨まし……じゃなくて!! 文句言いなさいよそういう状況!!!!」
「来瑠ちゃんは嫌なの?」
「私というか世間一般的におかしい状況だと思いますが」
「え~、そうなんだ」
あんまり考えたことなかったなぁ……。来瑠ちゃんにも言った通り、ゆいくんの横顔をマジマジと見れるいい機会だし、ボーっとするのも好きだし。何より完成した詩は私に一番に見せてくれるし!!
というかゆいくん、書いてる時に話しかけるとすごく……何て言うんだろう、すごく極まりの悪そうな顔しちゃうんだよね。一応中断してこっちに答えてくれるんだけど、すごくノートに名残惜しそうというか……。だから話しかけないようになったんだよね。
もちろんほっとかれた後はちゃんと謝ってくれるし、いっぱい埋め合わせしてくれるし、本当に気にしてないんだけどな~。
「……あんたって本当、ふわふわしてるわよね」
「え~、ありがとう!」
「褒めてないわよ!!!! 嫌味よ嫌味!!!!」
「えぇ!? 私にとっては最高の褒め言葉なのに……!!」
「……本当、めでたい頭……」
「それより来瑠ちゃん、かき氷すごく溶けてるよ」
「え。……ちょっ、あんた!! それ早く言いなさいよ~~~~っ!!!!」
「え~!? 私のせい!?」
ほぼ水分になっているかき氷を掻きこみながら来瑠ちゃんは叫び、私は残りのかき氷を美味しくいただくのでした。




