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第47話「助けてーーーーっ!!!!」「なんでこうなるのよ!!!!」

 それから大体二週間経ったかな? その間、私は平穏な日々を過ごした。綺羅ちゃんや日恋ちゃんと一緒に授業を受けたり、ゆいくんと一緒に出掛けたりお家で会ったり、迫りくる課題をこなしたり……。

 私はあれから一度も、来瑠ちゃんの姿を見ることはなかった。


「そういえば西園寺惟斗から聞いたんだけど」


 綺羅ちゃん日恋ちゃんと一緒にお昼を食べていると、唐突に綺羅ちゃんがそう切り出す。私が首を傾げると、綺羅ちゃんは続けた。


「ふわりあんた、下級生に喧嘩売られたんだって?」

「むぐっ!?」


 飲み込もうとしていた時にそう言われ、私は思わず食べ物をのどに詰まらせてしまう。するとすかさず日恋ちゃんが机の上に置いていた私の水筒を差し出してくれて、私はお茶を流し込む。そうして事なきを得た。く、苦しかった……。


 ぜぇ、ぜぇ、と息をしてから、私は二人の顔をそろ~……と見た。


「ねぇふわり、な~んで教えてくれなかったの?」

「友達なのに、寂しいなぁ」


 二人は笑っているのに笑っていない。私は思わず青ざめちゃうのでした。


 そうして二人から報連相をしなかったことをこってり絞られた後、どうなったの? と尋ねられる。だから私は今度こそ正直に話した。


「えっと……ゆいくんに『ふわりは気にしなくていいからから任せて』って言われた後は、来瑠ちゃんのことは見かけてないよ」

「珍しく西園寺惟斗がポンコツじゃない……」

「ほら、西園寺惟斗がポンコツなのはふわりに対してだけだから」

「あーね」

「二人とも?」


 なんだか二人だけの会話になり始める予感がしたので、私はそう言って流れを切る。ごめんごめん、と二人は言ってから顔を私に戻した。


「まあ、ふわりが平和に過ごせてるなら良かったよ」

「そうだね、ふわりが幸せなら何よりだわ」

「う~ん……でも来瑠ちゃん、今どうしてるんだろう……元気かな……大丈夫かな……」

「ふわりは自分に迷惑をかけた人間にも優しくていい子だね」

「えぇ!? だって心配じゃない!? 大学で一回も見かけないんだもん!!」

「うーん、講義が被ってなければそんなもんじゃない?」

「同じ学年の同じ学部ならともかく、下級生だしねぇ」

「そっか……そういうものか……」


 綺羅ちゃん日恋ちゃんが言うことには、確かに一理ある。

 ……私が気にしすぎなだけなのかな……。


「それか西園寺惟斗が理事長の孫権限で除籍したかかなぁ」

「日恋ちゃん!?」

「あー、まあおじいちゃんが運営してる大学の孫なら、そのくらい出来るか……」

「綺羅ちゃん!? ……もー!! ゆいくんがそんなことするわけないでしょ!?」

「ごめんごめん」

「冗談冗談。私たちだってあいつがそんなことすると思ってないわよ」


 私が立ち上がって文句を言うと、綺羅ちゃんと日恋ちゃんは笑いながらそう謝って来る。もう、二人ったら……。

 気を取り直して椅子に座り直す。二人は苦笑いを浮かべながら私に告げた。


「まあ、講義が被ってなければ見かけないことなんて普通だよ。そんなに気にすることじゃないって」

「そうそう。わざわざ会いに来ないってことは、西園寺惟斗がちゃんと対応したってことだろうしね。ふわりは気にしなくていいって言われたんでしょ? ならそうすればいいんだよ」

「……うん」


 なんだか納得しきれない、という思いはありつつも私は頷く。

 見かけない理由は納得できるし、ゆいくんがどうにかしてくれたんだろうなぁ、っていうのは分かるんだけど……。


 うーん、なんなんだろう。このモヤモヤは。全然ふわふわじゃなーーーーいっ!!!!





 と、そんなことを思っていた矢先だった。


「あ」

「あっ」


 目が合った。


 休日のショッピングモール。私が参考書を探していると……同じ本を手に取ろうとした人がいるらしい。譲ろうと思って隣を見ると……それが来瑠ちゃんだった。

 しばらく私も来瑠ちゃんも固まっていたけれど、先に状況を理解したのは来瑠ちゃんだったらしい。本から手を離すと……クルッと踵を返し、一目散に走り出してしまった!!


「えっ!? ちょ、待ってよ来瑠ちゃん!!」

「ッ……!!」


 私は本を持ってその背中を追いかける。名前を呼ぶけれど、来瑠ちゃんは止まってくれなくて。


「来瑠ちゃん!! 来瑠ちゃーーーーんっ!!!!」

「ッ……なんで追ってくるわけ!?!?」

「なんでって、だって!!!!」


 理由を言おうとした瞬間──けたましいブザー音が、私のすぐ横で鳴り響いた。


 私はもちろん、来瑠ちゃんも驚いて足を止める。私が音の方を見ると……そこにあるのは、防犯のための柱のようなもの。まあつまり、防犯ゲートだ。そして私の右手には会計を済ませていない本。

 ……あっ。


 駆け寄ってくる店員さん、青ざめる私、鳴りやまないブザー音……。


「くっ、来瑠ちゃーーーーんっ!!!! 来瑠ちゃん!!!! 助けてーーーーっ!!!!」

「はぁっ!? な、なんで私が!?」

「君、ちょっとこっちおいで。……そこの君も、知り合い? 一緒に来てもらえるかな」

「私も!? ……なんでこうなるのよ!!!!」





「はぁ……ほんっと最悪。災難な目に遭ったわ……」

「来瑠ちゃん、本当にごめんね」

「……あんたみたいなちんちくりん先輩の謝罪になんて、一ミリの価値もありません」

「うぅ……ごめんなさい……」


 それでも私が謝っていると、はぁ、と来瑠ちゃんは大きなため息を吐いた。


「それより」

「?」


 そう言われたので顔を上げる。来瑠ちゃんは私のことを、ジト目で見つめていた。


「……ちんちくりん先輩ってアホっぽいのに、全然アホじゃないのなんなんなの?」

「え?」

「さっきの説明……いや、初めて会った時もそうだったな。急に理論整然と説明し始めるの、本当に怖いんだけど」


 さっきの説明、と私は記憶を巡らす。


 さっき……私たちは店員さんにバックヤードの方まで連れていかれた。それでどうしてこんなことをしたのかの説明を求められたから、答えただけだよ。


「まずは、万引きをするつもりはありませんでした。私とこの子は知り合いなんですけれど、たまたま同じ本を手に取ろうとしました。でもこの子は帰ろうとしてしまったので、購入の意思があるのか、もしあったのならこの本を譲りたいと思って追いかけたら、店の外に出てしまった、という経緯です。だから万引きをしようという気は一切ありませんでした。……ですが、本を持ったまま店の外に出ようとしてしまったことは事実ですから、そこは本当に申し訳ありません。もし窃盗罪としてお店側が訴えられるのなら、私はそれを受け入れます。ですがこの子は関係ないので、その時はこの子を帰してくれてからでお願いします」


 それで私は学生証を出して身分を証明して、店員さんの言うことを待って……。


 店員さんは店長さんを呼んで、私はもう一度同じことを説明。すると店長さんが防犯カメラを確認した。私の話に嘘はないと判断してくれたのか、今回は厳重注意だけで留める。と言ってくれた。

 私たちは無事に解放され、今に至るってわけだ。


「文学部だからねぇ」

「それ関係ある?」

「ないかな?」


 一応言葉を扱う学部だから、そういうのが得意な自負があるんだけど……。それに、ちゃんと説明できることってすごく大事なことだと思うからね。

 私がそう思いながら笑っていると、まあいいや、と来瑠ちゃんは呟いて。


「巻き込まれたんですから、なんかないと割に合わないんですけど」

「なんか……あっ、何か奢るよ!! どっかお店入ろ!!」

「……ま、それでいいよ」


 行きたい店があるんだよね。と来瑠ちゃんは踵を返して歩き出す。目的地は決まっているらしい。……私はその背中を追って慌てて駆け出した。

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