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24回キスしないと出られない部屋【後編】(※)

 せっかくベッドがあるのでベッドに乗らせてもらい……少し頬が紅潮したゆいくんのほっぺたを、私は手で撫でた。


「じゃあ、ちゅーするね?」

「っ、お、お手柔らかにお願いします……」


 さっき、どっちからしても良いとは言われたけど、なんとなくいつもの感じで私がする感じになっている。まあ別にいいんだけど……と私はゆいくんに顔を近づけて。


 寸前で止める。ゆいくんはキスが来ないことを不審に思ったのか、そろ……と目を開いた。


「せっかくだから、唇へのちゅーは24回目にしよっか」

「えっ」

「それ以外いきまーす」


 私はそう宣言すると、ゆいくんの額にキスをした。1回目。

 顔を離すと、ゆいくんは恥ずかしそうに額を手で抑えた。


「……いつもこれ以上のことしてるのに」

「それは、そうだけど」

「ふふ、可愛いね」


 私はゆいくんの頬を優しく抑え、目を閉じて、と呟く。素直に目を閉じたゆいくんの瞼に唇を落とす。2回目。

 少し顔の位置を落として鼻に、3回目。ついでに自分の鼻をちょっと擦りつけてみた。こういうのって確か、ノーズキスっていうんだよね。

 今度は頬に当てていた手を退けて、その手は肩を押すのに使う。ぽすん、とベッドに倒れ込んだゆいくんの頬にキスをして、4回目。


 ゆいくんは顔を赤くしてふわふわな表情をしていたけど、何も言わずに大人しくしていた。


「かわいい」


 ぐっ、と胸の中に込み上げる愛おしさのようなものを感じながら、私は喉に口付ける。5回目。ひ、とゆいくんが小さく声をあげたのを、私は聞き逃さなかった。ちょっとびっくりしちゃったかな? 喉って触ると変な感覚するもんね。唇だったら余計にびっくりしちゃうかも。


 その反応をもっと見たいな、と思ってしまって、私はゆいくんの喉仏に指先を当てる。ぴく、とゆいくんの体が微かに上下して、ゆっくり手を動かすと、ゆいくんはふるふると震えた。


「ふ、わり、今は、キスでしょ……!?」

「えへへ~、だってゆいくんがかわいいから」

「もう……」


 全く反省していない私に、ゆいくんは呆れたようにため息を吐く。だってゆいくんがかわいいから(二回目)。


 今度は右肩に顔を埋めるように首筋にキス。6回目。ん、とゆいくんの声が聞こえて、ゆいくんが口元を手で抑えるのが分かった。あ~、もう、声聞きたいのになぁ。

 よし、と私はゆいくんから離れた。


「ゆいくん」

「え、あ、はい?」

「今度はゆいくんから私にちゅーしてくださいっ!!」

「えっ」

「ゆいくんがどこにちゅーしてくれるか気になるなぁ」


 私はベッドの上でお姉さん座りをしながら、さぁどんと来い!! と言わんばかりに両腕を広げる。


 ゆいくんは体を起こすと、私の頭のてっぺんから足元まで何周も見つめて。

 どうするのかな~、と思っていると、ゆいくんはゆっくり私に手を差し出した。


「……手、を、ください」

「どーぞ!」


 差し出された手に手を乗せると、ゆいくんは優しくその手を引き寄せる。そして……手の甲に唇を乗せた。7回目。


 ……いつもちゅーする時思うけど、ゆいくんの唇、本当にふわふわだな~。ちゅーされるだけで幸せな気持ちになっちゃう。それに、初めに選ぶキスが手の甲なの……ゆいくん、本当に王子様みたい!!


 と思っていたら。ゆいくんは次に指先にキスをする。まるで甘噛みでもするみたいに軽くんできて、ぞく、と背筋が震えるのが分かる。ちょ、ちょっとふわふわした気持ちになっちゃう……かも。えっとえっと、8回目……だよね。


 ゆいくんは少しだけ私を見てから、唇を別の位置に移す。手の平に深く押し付けて、少しずらして、手首に。……な、なんかすごく、手にいっぱいちゅーされてる!? これって別カウントになってるのかな!? と少し心配で扉の方を見ると……。

 扉の上の看板には、『10』と書かれていた。別カウントされているらしい。こ、細かい……!!


 ゆいくんは今度は手を引いて来て、二の腕に顔を埋めるようにキスをする。11回目……な、なんか恥ずかしくなってきた!! そりゃゆいくんだって顔赤くするよ!!!!


 だけどゆいくんは何も言わないし、私も何も言えなかった。鏡はないけど、たぶん私の顔は真っ赤なんだろうな……と分かる。だ、だって、すごく恥ずかしいよ~~~~!!!!


「……ふふ、いつもと立場が逆だね」


 するとゆいくんが小さく笑いながらそう告げる。私を見つめるそのふわふわな顔は、私の事が愛おしいとでも言っているみたいで……ううん、思ってくれてるんだろうな。そう自覚すると、またちょっと恥ずかしくなっちゃった。


「……ふわり、ごめんね」

「え? うん」


 なんで急に謝るんだろう、と思うと……ゆいくんは丁寧に私の脚を掴み、なんと靴下を脱がしてしまった。そして足の甲にキス。12回目。

 まさかの場所に心の中でプチパニックになっていると、ゆいくんは手にするのと同じように、私の足の裏、足の指の先にもキスをしてしまった。13、14回目。


「えっ、えぇっ、き、汚いよ!?」

「そんなことないよ、綺麗だよ。……いや、最後に唇にキスするのか……」


 そう言うとゆいくんは服の袖で口を拭う。い、いや、そうじゃなくて、生理的に大丈夫なのかなって話なんだけど!? でもこの様子なら大丈夫なのか……。


 続けるね、と言い、ゆいくんは私とは対照的に、キスする場所をどんどん上に上げていく。15回目は脛に、16回目は太ももに。


「す、すすす、ストーーーーップ!!!!」


 そこで私はようやく声をあげた。ゆいくんは言われた通り、ぴた、と動きを止める。


「いっぱいしてくれてありがとう! 選手交代!」

「あはは、スポーツみたいだね。……じゃあ、お願いします」


 ゆいくんはそう言って吹き出すと……私から少しだけ離れた。


 ゆいくん、本当にいっぱいしてくれたな……ゆいくんだけで、10回分もキスしてもらっちゃった。残りは8回。その内一回は唇にだから……実質あと7回か。どこにしようかなー。

 私はゆいくんのことをえーい、と倒し、その上に乗る。じ、と見下ろすと、ゆいくんが微かに顔を赤く染めた。


「……悩んでる?」

「どこにちゅーしよっかなって」

「別の場所にしないといけないからね……」


 額、瞼、鼻、頬、喉、首、手の甲、指先、手の平、手首、腕、足の甲、足の裏、足の指先、脛、太もも、が既に潰れた場所だ。ここ以外……うーん。


 私はゆいくんの頭に手を乗せ、よしよしと撫でる。悩みながら撫でる。もはや癖だ。ふわふわ~、かわいい。


「……髪は?」

「あ、いいね」


 ゆいくんは撫でられてあっという間に蕩けた表情になっていたけれど、そんな風に提案してくれる。私は提案してくれたそのまま、髪に顔を近づけてキスをした。ん~、相変わらずふわふわな髪。


「あと……耳、とか?」

「耳」


 私はそう繰り返し、耳に軽くキスをする。ゆいくんは微かに体を震わせた。ゆいくんは耳が弱いのである。

 ……本当ならもぐもぐ~ってしたいけど、今日は我慢。誰が見てるか分かんないしね。


「……なんか、キスしてほしい場所言ってくれてるみたいだね」


 ついでに耳元で私がそう言うと、えっ、とゆいくんが小さく声をあげる。すると顔の赤さが耳まで到達して、分かりやすく狼狽えた。


「い、いや、出るためだから、仕方なく」

「でもキスはしてほしいでしょ?」

「それは……して、ほしい、けど、さぁ。それは……違うじゃん……」


 ゆいくんは顔を赤くし、何かをゴニョゴニョと言っている。あー、かわいいな。

 衝動で唇にキスしそうになるのをぐっとこらえる意味で、私は小さく深呼吸をした。


「教えて? 次はどこにちゅーしてほしい?」

「や、だから、してほしいとかじゃなくて……いやしてほしい、けど……」

「ゆーいくん」

「……うなじ、とか?」


 私が促すと、ゆいくんは小声でそんな提案をする。はいじゃあ、ごろーん、と、私はゆいくんを転がしてうつ伏せにさせた。


「ちゅー、するね」

「……」


 ゆいくんは小さくコクコクと頷く。うーん、かわいいbotになってしまう。


 私はうなじに唇を押し当てる。ん、とゆいくんは小さく体を震わせ、声を出した。

 ついでに指先で撫でると、ぴく、ぴく、とゆいくんは体を震わせて。声を出さないように必死みたいだ。


 また、今するのはキスでしょ、と言われる前に次の行動に移すことにする。ちょっとごめんね、と言うと、私はゆいくんの服の裾を掴み……ぐいーっと上に上げる。えっ、何、とゆいくんは戸惑ったように呟いていた。


 ……さっき私の靴下を脱がす前にゆいくん謝ってたけど、なるほどこういう気持ちだったのか、と思う。キスするためとはいえ、勝手に肌を出させてるわけだし。


 私は露わになった背中に唇を落とす。そしてそのまま、腰に。ひぅ、とゆいくんはか細く声を出していた。


 そこが終われば、またごろーん、とさせる。仰向けになったゆいくんの服をまた上にずらして、そのお腹にキスをした。そして顔を少し上に持っていき、胸元にもキス。


 さて、次はどこにしよっかなー、とまた考え始めると、ふわり、とゆいくんが焦ったように私の名前を呼んだ。


「23回、なった」

「あ」


 言われて顔を上げる。確かに扉の上の看板には、「23」と書かれていた。

 どこにちゅーしようかばかり考えて、回数のことすっかり忘れてた。危ない危ない。


「なったね、23回」

「うん……」

「……ちゅー、しよっか」

「……うん」


 私はゆいくんの頬に手を添える。ゆいくんはふるふると瞳を震わせ……そっと、目を閉じた。


 ……なんか、いざ唇にキスするって思うと……緊張するな。今まで何回もしてるはずなのに。

 心なしか、ゆいくんにキスされた指先が、脚が、いつもより熱を持っている。ドキドキと高鳴る心臓の音を聞きながら……私は、ゆいくんにキスをした。


 最初は乗せるように。次は……深く。本当は一回で十分なはずだ。だって扉の方から、鍵が開く音が聞こえたもん。


 でも……だって私、このふわふわな柔らかさが、ずっと、欲しかったんだもん。手にキスしてもらった時から……ううん、ゆいくんと一緒にいると、ずっと。


「ん、んっ」

「……ッ、ふ、ん」


 唇の隙間から、お互いの吐息が漏れて、混ざり合う。あつくて、ふわふわで、きもちい。


「ゆいと……だいすき」

「……ッ、おれ、も、だいすき」


 ふにゃ、と二人で笑い合って、そこで私はようやくゆいくんから離れた。


「……出よっか。この続きは、帰ってからで」

「うん……そうだね」


 私たちはベッドから立ち上がる。「24 クリアおめでと〜」と書いてある看板の下にある扉を……開けた。

 すると向こう側から襲い来る、眩い光! 私たちは思わず目を閉じて……。





 見慣れた天井。体を起こして辺りを見渡すと、ふわふわのぬいぐるみに囲まれていて……ここは、私の部屋!

 ……つまり、これは……。


 ──夢オチ!!!!


「ん……ぅ……」


 そこで隣から小さく声が聞こえる。そちらを見ると、ゆいくんが私と同じように体を起こしていて。戸惑ったように、辺りを見回していた。


「いや……夢オチかよ」


 そしてゆいくんが項垂れてそう呟くから……私は今見たものが夢では無かったことを、悟るのでした。


 夢じゃないなら……って私は少しだけ身を乗り出して、ゆいくんの唇にキスをする。ゆいくんが驚いたようにこちらを見るから私は微笑んで、おはよう、と呟いた。





【オマケ4 終】

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