表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/61

第28話「決着をつけてきなさい」

 夏休み前最後の授業日になってしまった。


 本当なら今日は授業もないし、大学に足を運ぶ理由はないのだが……インターネットが発達した現代では珍しく、書いたレポートは紙に印刷して提出しに来い、というスタイルの課題があったのだ。だからわざわざこうして大学に来ている。後は……まあ、家にいるのはそこまで好きではないので、家を出る大義名分が出来て良かったというか。

 ……そして何より、彼女に会えないかと思ったのだ。



 数日前からのことだった。ふわりから、返事が来ない。



 初めは、疲れているから返信する気力もないのかなと予想していた。宝船さんと笑原さんから、ふわりに元気がないと聞いていたわけだし。

 でもなんとなく予感があって、宝船さんと笑原さんに連絡をしてみたところ(ふわりの件で無理矢理三人のグループを作らされた)、「私たちには普通にメッセージ返って来てるけど」とのこと。


 つまり、俺のメッセージだけ意図的に無視されていると言っても過言ではないのだろう。


 何かしてしまったのだろうか、と連日考え続けた。知らずのうちに、ふわりのことを怒らせてしまったのかもしれない。心当たりは本当に無いのだけれど、もしそうなら理由を聞いて、誠心誠意謝りたい。


 だから謝るためには会わないといけないんだけど、連絡は付かないし、大学に行ってもふわりの姿を見かけない。

 うん、詰んでいた。


 課題も提出し終わったわけだし、この後はどうするか……とスマホを見ながら考えていると、メッセージ通知が画面上部に現れる。一瞬期待をしたが、メッセージの送り主は笑原さんだった。


『今日大学に来てたら、いつもの場所に来てね~』


 いつもの場所って、あの人気のない小道のことだろうか。そんな言うほど「いつも」会ったことあったっけ……。

 と考えてると、今度は宝船さんから追いメッセージが来た。


『大学来てないなら、今から来なさい』


 ……いや、来てるからいいんだけどさ……。





 というわけで、人気のない駐輪場までの小道──もとい、いつもの場所まで辿り着く。予想通り、宝船さんと笑原さんは既にそこにいた。


「お疲れ~」

「来てたってことは、あんたも今時直接提出しなきゃならないの? の課題提出?」

「……二人もそれで来た感じ?」

「まあねー」


 同じ学部に所属しているわけだし、そういうこともあるか。そして今時直接提出しなきゃならないのか、という感想は共通のものらしい。

 そんな世間話もそこそこに、宝船さんは右手に持ったスマホを軽く振った。


「で、呼び出したのはたぶんあんたの予想通り、ふわりのことよ」

「……だよね」

「じゃあまずは西園寺惟斗、スマホを出しなさい」

「え、取られる……?」

「取らないわよ。ちょっと確認したいことがあるだけ」


 相変わらず言い方がヤンキーのそれだったので、思わずツッコミを入れてしまう。宝船さんは不満げにそう言い返すと、左手を差し出してきた。俺は少し嫌だなぁ、と思いつつ、大人しくスマホを渡す。

 ロック外して、と言われるがまま画面のロックを外し、宝船さんは勝手に俺のメッセージアプリを開いた。


「ちょ、か、勝手に見ないでよ」

「安心しなさい、あんたが誰とどんなやり取りをしてるかなんて興味ないから」

「いやっ、そ、そうだとしても、プライバシー!!」


 俺は文句を言うが、宝船さんはどこ吹く風だった。あっという間に素早く何かを操作すると、あちゃー、と呟く。


「あんた、ふわりにブロックされてるわね」

「……え?」


 宝船さんの言葉に、俺は思わず固まってしまう。


 ブロックって……つまりそれは、メッセージの受け取りを拒否されてるってことで……。


「え、それ分かるの?」

「非公式の裏技みたいなものだけど、まあ90%くらい正確だと思うわよ。……それにしても、もう数日間既読が付いてないんでしょ? あんたとしても、薄々そうなんじゃないかと思ってたんじゃない?」

「……」


 宝船さんの言う通りだ。ふわりは割とすぐに返信をしてくれるタイプだし……いくら元気がないとはいえ、返信がここまで滞ることはない、と思う。むしろ、人に心配を掛けないためにこまめに返信するような印象だ。

 ……だから、俺に返信が来ないのは……もう俺とメッセージを交わす気がないと、そう遮断されているんじゃないかと……薄々、予想はしていた。


「西園寺惟斗、本当に何したの~?」

「ふわりにブロックされるってよっぽどよ。……本当に心当たりないわけ?」

「……」


 二人からの問いかけに、俺は首を横に振る。本当に、本当に心当たりがない。


「……心当たりはないけど……もし俺の知らないところで何か、ふわりを怒らせるようなことをしてしまったのなら……謝りたい、って、思ってる。……でも、連絡も付かないんじゃどうしようもなくて……」

「……」

「……」


 俺のその言葉に、二人は顔を見合わせる。


 ……正直、期待をしていた。二人はふわりと連絡がつく。どうやら普通に話しているみたいだし。……でも俺は、もうどうしようもない。連絡も付かないし、大学に行ってもふわりと会えない。……八方塞がりだ。


 俺は……ふわりのことが好きだし、一緒に居て楽しいと思ってるし、出来れば……これからも一緒に居たいと思っている。もしふわりが、もうそう思っていないのなら……それは仕方のないことなのかもしれないけど。


 本当にそうなら、せめて、納得する形で終わらせてほしいのだ。自分勝手な言い分かもしれないけど、このままじゃ割り切れない。諦められないんだ。


「……宝船さん、笑原さん……俺をふわりと繋げてもらうことは、出来ないかな……?」


 お願いします、と頭を下げる。だから二人の表情は見えなくて。

 でも俺は、信じるしかなかった。


「……西園寺惟斗、顔を上げなさい」


 宝船さんの声が頭上から響き、俺は言われた通り顔を上げる。


「……私たちも連絡は付くけど、もう数日くらい、ふわりとは会ってないの」

「……え……」

「全く外に出てないみたい。体調不良で、テストとかも全部オンラインで受けてるって……今日の課題も、私たちがふわりの家まで取りに行って、それで出してきてあげたんだ」

「でも取りに行った時も、ふわりは顔を見せてくれなかった。……お母さんが対応してくれたんだけど、本当に今は必要最低限しか起き上がってこないみたいよ」

「まあ私たちが遊びに誘っても、今は気分じゃないからごめんねって全部断られたしね~」

「……」


 本当に、そこまで元気がないのか。……俺は無意識のうちに、一体どんなことをしてしまったんだ。心当たりがないのが、本当に不甲斐なかった。

 そしてそういう状況なら、二人にふわりと繋げてもらうことは出来ない……か。


「……でも、どうにかこうにか外に連れ出してあげるわ。上手くいくかは分からないけどね」

「……えっ」

「えっ、って……ふわりと話したいんでしょ?」

「いや、話したいけど……」


 どうにかこうにか、と、そんな頑張ってくれるのが意外だっただけだ。だって二人は、あまり俺のことを良く思ってないだろうし。

 戸惑う俺に、二人は苦笑いを浮かべる。


「本当にあんたが原因なら、あんたと決着が付いたらいつもの()()()()()に戻ってくれると思うからね」

「だから、あんたのためじゃない。ふわりのためだから」


 決着をつけてきなさい。と二人に言われる。……まあ、ふわりのためだとしても……俺は、その機会を二人から貰えることが、嬉しかった。


「……宝船さん、笑原さん。……本当に、ありがとう……!」


 俺は笑ってお礼を言う。すると二人は少しだけ驚いたように目を見開いて。


「い、言っておくけど、絶対上手くいくかは分からないんだからね」

「そ……そうそう、あんまり期待されすぎても困るから」

「それでも……ありがとう」

「……ちょっと、そのイケメンオーラ、しまってくれない? うっかりやられそうになるから!!」

「……何の話?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ