第22話「わ、私のために争わないで~っ!!!!」
「大切な友達……か」
すると柚葵さんは、私の言った言葉を繰り返す。どこか含みがあったような言い方な気がして、私は首を傾げた。……。
……ハッ、も、もしかして、ゆいくんのお家はお金持ちだから、私みたいな一般人が関わっちゃいけないのかな!? 私はそういうの気にしないけど、気にする人はいるかもしれないし……!! 私はこれからもゆいくんと仲良くしたいけど……え、ええっと、何かゆいくんと関わるメリットとか出した方がいいかな……!?
「そ、その、私、面白いです!!!!」
「えっ、どうしたの急に」
というかさっき、自分で面白いこと喋れないとか言ってなかった? と柚葵さんに笑われてしまう。ハッ、そ、そういうえばさっきそんなこと言った!!
アプローチ失敗……と落ち込んでいると、よく分からないけど、と柚葵さんは前置きした後。
「ふわりちゃんはそのままで十分素敵だよ。惟斗と、これからも仲良くしてあげてほしいな」
「ゆ、柚葵さんっ……!!!!」
「まあにしても、確かにふわりちゃんは面白いけどね」
「が、がーん……」
私そんなに面白いのかな!? いや、さっき自分で自分のこと面白いって言ったばっかなんだけど……!!
……でも、やっぱり客観的な意見の方が信憑性が高い……よね。うーん……。
「とりあえず、事情は分かった。大学近くであまり惟斗に近寄らないようにするね」
「は、はい。ありがとうございます……ん? 私がお礼を言うのは正しいのかな……」
「あははっ、ふわりちゃんって本当に面白いね」
私が首を傾げると、また柚葵さんに笑われてしまう。うう……そんなに面白いかな……。まあ、馬鹿にされているわけではないってことは分かってるから、別にいいんだけど……。
そんなことを考えながらアップルジュースを飲んでいると……ピンポーン、とどこからか音が響いた。気づいて顔を上げると、柚葵さんも顔を上げている。そして扉に向かって鍵を開けると同時、夫さんと顔を合わせていた。俺が行くよ、という言葉に柚葵さんは頷き、部屋の中に戻って来る。
部屋の扉が開いたと同時、甘~い香りが漂って来たので……私の口の中は涎ですぐに満たされてしまった。
「いい香りがしますね……!!」
「そうだね。うちの夫のスイーツは本当に絶品だから……どーんと期待しちゃいなさい!!」
私の感想に、柚葵さんが誇らしげに胸を張る。私は笑って、はいっ、と頷いた。
一体どんなスイーツが来るのかなぁ、とワクワクドキドキ妄想を膨らませていると。
「──ふわり!!!!」
「ふぇっ!?」
聞き覚えのある大きな声で名前を呼ばれ、私は思わず大きく肩を揺らしてしまう。それと同時、部屋の中に飛び込んでくる一つの影があった。
「ゆっ、ゆいくん!?」
「ふわり……良かった。やっぱり、柚葵さんのところだったのか……」
そう、入ってきたのはゆいくん。額から大粒の汗を流し、私の顔を見るとホッとしたように床に座り込んでしまった。え、えっと……。
「アップルジュース、飲む……?」
「ふわり、絶対第一声それじゃない」
「ご、ごめんなさい……?」
「飲むけどさ……」
「飲むんかい!!」
訳も分からず謝る横で、柚葵さんが面白そうにツッコミを入れる。そんな柚葵さんを、ゆいくんがギロッと睨んだ。
「柚葵さん……!! そもそも、全部あんたのせいでしょ!?」
「え、私何かした?」
「……ふわりの友達が、柚葵さんの車に乗せられたふわりを見て、誘拐だと思って俺に伝えに来てくれたんですよ……!! ……ほんと、柚葵さんは誤解されやすい行動ばっかするんだから……」
え? 誘拐? 友達? ……ちょっと嫌な予感がしてスマホを開いてみる。
……するとそこに並ぶのは、綺羅ちゃんと日恋ちゃんからのメッセージ、メッセージ、メッセージ、不在着信、不在着信、メッセージ、不在着信……。
……み、見なかったことにしよっと!!
「ふわり、待って、スマホしまうな。宝船さんと笑原さんにちゃんと連絡入れて。……じゃないと俺が殺される……」
「ひぇっ、わ、分かりました……」
スマホをしまおうとした瞬間、ゆいくんが詰め寄られる。その圧に押され、私は二人──二人の名前は、宝船綺羅と笑原日恋というのです──に連絡を入れた。あのお姉さんはゆいくんの従姉弟さんで、知り合いだから、ちゃんと自分の意思で付いていっただけです!! 何も危ないことはないです!! あとゆいくんとも合流しました。ゆいくんに伝えてくれてありがとう……といったことを。
すぐ二人からの既読が付いたけど、絶対怒られるのでスマホは閉じた。あ、後でゆっくり見ま……見たくないけど、見ます……!!!!
青ざめる私に構わず、ゆいくんはソファに座ってアップルジュースを飲んでいる。あ、それ私が使ってたコップなんだけど……まあいっか……。
「で……何がどうして、ふわりが柚葵さんと……?」
アップルジュースを飲んだら落ち着いたのか、ゆいくんが私たちの顔を見比べてそう尋ねてくる。私と柚葵さんは思わず顔を見合わせた。
「どうして……と言われても……」
「ふわりちゃんとお話ししたいな~って思って」
「なんで……」
柚葵さんのその言い分に、ゆいくんが少し不機嫌そうに眉をひそめている。どうしたんだろう、と思っていると、柚葵さんが再び私の背後に回った。そして両肩を掴まれると。
「おやおや~? ふわりちゃんはあんたのものじゃないでしょ~?」
「ッ……」
「え、え? えっと、え?」
何故か二人が私を挟んでバチバチしてる!? こ、これは、〝あの台詞〟を言うべきタイミングなんじゃ……!?
「わ、私のために争わないで~っ!!!!」




