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ふわめで!~ふわりちゃんは今日も御曹司をふわふわ愛でる。~  作者: 秋野凛花
6「こんなの全然、ふわふわじゃない」
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第20話「……今の横顔、ゆいくんにとてもそっくり」

「私、キャンピングカーとか初めて乗りました!! ……あっ、日本一周されてる、とか聞いたんですけど、もしかしてこれで……?」

「そうそう! 勘が良いねぇ。この車で日本を回って、基本的には車の中で生活してるよ。……まあ道中で出会った人の家とか、オススメの旅館やホテルに泊まることもあるけどね」

「へぇ……!!」


 私は生まれて約二十年、そういう経験をしたことがないので、思わず目を輝かせてしまう。すごいすごい!! それってすっごく楽しそうで、ワクワクする……!!


 私と柚葵さんはソファに横並びに座り、私が目についた気になったものを言うと、柚葵さんはそれについて答えてくれた。いやぁ、キャンピングカーって初めてだから、ついはしゃいじゃって……。


「というか……運転ってどなたがされてるんですか?」

「ああ、夫だよ。彼はスイーツを作る人でね、道中でそれを売って、貯金とはまた別の旅行資金を補充してるんだ」

「へぇ……!! 移動販売してる、ってわけですね!!」

「そうそう。で、私はそれを写真に撮って宣伝してるんだ」


 そう言うと柚葵さんは、スマホを少し操作してから私に見せてくれる。そこに表示されているのは、写真の投稿に特化したSNS。私も一応アカウントは持ってるんだけど(友達とのお付き合いのために)、ほとんど使ってないんだよね。「YUZUKI」という名前のプロフィール画面には、フォロワー5.3万人の文字が……。


「ご、五万人!?」

「あはは、沢山見てくれる人がいて、ありがたいよ」


 フォロワーが5.3万人って、つまり五万三千人の人が、柚葵さんの写真を見てるってことでしょ!? 柚葵さん、すごい、有名人!!


「写真家になるのが夢だったからね。こうして色んな人が私の写真を見てくれて、出版社から声がかかることもあって、色んな良縁に恵まれて、私は幸せ者だよ」

「……」


 柚葵さんはそう言って、照れたように笑う。その横顔を、私は黙ってじっと眺めていた。


 ……今の横顔、ゆいくんにとてもそっくり。

 詩を作るのが好きだ、と言っていた、あの時のゆいくんと。


 まあ従姉弟だったら、顔が似ることもあるよね。


「さて、ふわりちゃんのことも教えてよ」

「えっ、私ですか!?」

「そうそう。言ったでしょ? ふわりちゃんとお話ししたいって」

「そうですね……うーん、特に面白い話とかは出来ないんですけど……」


 でもよく、ふわりはそのままで十分面白いから大丈夫!! と綺羅ちゃん日恋ちゃんによく言われるから、大丈夫……なのかな?

 私はコホン、と咳払いをすると、柚葵さんに向き直る。


「改めて、私は不破ふわりと申します!! この名前の通り、ふわふわなものが本当に大好きで、ふわふわなものを集めたり触ったりするのが趣味ですっ。何かオススメのふわふわがあったら教えてくださいっ。よろしくお願いします!!」


 ……この前はこの自己紹介で、不破ふわりは変な子っていう総意で固まっちゃったけど……柚葵さんはどう思うんだろう?

 ちょっぴりドキドキしながら柚葵さんの言葉を待っていると。


「あはは、不破ふわりって名前でふわふわなもの好き。すごい人に覚えてもらえそうだね」

「そ、そうですね、やっぱり不破ふわり=(イコール)ふわふわ、みたいな感じで覚えられることが多いです」

「だよね。私も今の自己紹介で、ばっちり覚えちゃった」


 そう言うと柚葵さんは、両手の親指と人差し指を駆使し、丸を作って見せてくれる。とりあえず、悪い印象ではない……かな? ほっ。


「それで、ふわりちゃんは惟斗とどういう経緯で会ったの?」

「ゆいくんと?」

「そう。……惟斗、昔からちょっと人と自分の間に壁を作りやすい子だから……あんまり友達がいなくて。だから、どうやってその壁を壊したんだろうって思って」


 弟みたいなものだから、心配に思ってたんだよね。と柚葵さん。


 壁を……作りやすい。そうなのかな? と思った。だってゆいくん、最初に会った時から笑顔で接してくれたし……。

 ……でも、そうだな。最初に会った時は、なんだか……型にはめたような笑顔、なんて思ったっけ。カチカチ~、で、ぴしっ、としてて……でも、関わっていくうちに、ふわ~ってした笑顔になっていって……。


 うーん、その柚葵さんの言う、「壁」をどうやって壊したのか、いつ壊したのか、私には分からないけど……。


「えーっと、きっかけは、私がゆいくんを助けた……? ことです」

「助けた?」

「はい! えっと……ゆいくんに、ゆいくんに彼女さんを取られた! って人が詰め寄っていて……その時たまたま、私は蜂に追いかけられてて……たまたまそっちの方に逃げたら、結果的にゆいくんを助けたことになって……?」

「……あははっ、すごい出会い方だねー!?」

「私は蜂に必死になってただけなんですけど……!! それで、えっと、そこから学部が一緒だと気づいて、関わる機会も……グループワークとかでそれなりにあったので、それで、友達になった……? って感じです!!」


 もちろん、毎度のことですが、撫でていることは省く。……嘘は言ってないよ、うん!!


「……うーん、それくらいで惟斗があんな……まあ、絶対に劇的なことが必要、ってわけじゃないから、そこにツッコむのも野暮か」

「……? えっと……」

「あ、ごめんごめん。こっちの話だから、気にしないで~」


 よく聞こえなかったので私が聞き返すと、柚葵さんはそう言って笑う。……やけに真剣な表情だった気がするけど……まあ、柚葵さんがそう言うならそういうことにしておこう。


 そこで車にブレーキが掛けられたのか、私の体は慣性の法則に従って前方に引っ張られる。もちろんシートベルトをしていたので、ソファから転げ落ちる……なんてことはなかったけど。


「着いたみたいだね」

「着いたって……どこに?」

「私たちの家だよ」


 疑問を吐き出すと、柚葵さんがそう答えてくれる。家とかあるんだ! と思いながら、私は柚葵さんに促されるままキャンピングカーを降りた。

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