表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/61

第14話「すごい、美味しそう」

 というわけでお昼までの間、ふれあいコーナー以外のところを二人で見て回った。


 全部の動物さんを紹介しているとキリがないので、私が特に印象に残ったところのダイジェスト版でお送りしますっ!!


 まずはサファリゾーン!! 大きなゾウさんがお出迎えしてくれて、水浴びを楽しんでいた。暑いからね、私もお水にばしゃーって浴びたい……。

 トラさんも日陰になっている岩の上で休んでて、全然動いてなかった。それを見て小学生の男の子が、全然怖くないんだけど、と不満げに唇を尖らせて親に訴えていたのが、見ていて微笑ましかったなぁ。

 キリンさんのところでは、餌やり体験が出来たんだよ!! 餌が100円で買えたから、一人50円を出して、二人で餌やりをしてみることに。ニンジンのスティックを差し出すと、なが~い首を傾けてこちらに顔を寄せ、なが~い舌で絡め取るように食べてもらった時は、嬉しかったな!!


 次はバードゾーン!! 色んな鳥さんがいたんだよ!! 「コンニチハ、コンニチハ」ってすごく話しかけてくれる子とか、本当に、全然、全く微動だにしない子とか……。思わずじっと見てたら、不破さんは動いてもいいんじゃない……? と西園寺くんに苦笑い交じりに言われてしまった。


 爬虫類コーナーも面白かったな!! 私はヘビさんを首に巻く体験をしたんだけど、西園寺くんはちょっとヘビさんが苦手だったみたい。首にヘビを巻いた私を見て、暗室でも分かるくらい引きつった笑みを浮かべて青ざめてたから。悪いことしちゃったかなぁ。でもヘビさん、にょろにょろ~ってしてて可愛いと思うんだけど……。

 あとはカエルさんとかも見てたんだけど、西園寺くんはカエルさんも苦手だったみたい。そう思った理由は、以下略。というか、もしかして爬虫類全般が苦手なんじゃ……。


 動物園の中には、この動物園の歴史とかが展示された小さな建物があったから、そこにも入ってきたよ!! 今までどんな動物さんがいて、どんな風に生活していたのか……とかそういうのが分かったり、施設のシステムの紹介で、こういう技術で動物さんは楽しく暮らせてるんだなって分かったり、学びになったね!! とりあえず、後で慰霊碑に手を合わせに行こうかな、なんて西園寺くんと話して。


 大体全部ざっと見回れたたかな、というところで、お昼時になった。案の定フードコートはすごく混んでいて、ぐずっている子とかもいるから、親御さんは大変だな~と思いながらそこを素通り。広場にやって来ると、同じことを考えていた人がいたらしい。レジャーシートを敷いてお弁当を食べている人がチラホラいた。


「いいお天気で良かった~!!」

「そうだね。……でも熱中症とか心配だし、木陰で食べようか」

「うんっ。体調崩したら、午後のふわふわタイムが……!!」

「……水分補給はしっかりしようね」


 想像して青ざめる私に、西園寺くんが冷静に言葉を掛けてくれる。私は頷くと、木陰を見つけてそこで立ち止まる。レジャーシートを広げ、その上に腰かけた。


「お隣、どうぞ!!」

「……それじゃあ、失礼します」


 隣を軽く叩くと、西園寺くんは丁寧にそう言い、私の隣に腰かける。


 大学生二人が並んで座ると、結構狭いなぁ。なんて思った。もっと大きなやつを持ってきたら良かった、と思うけど、家にあるやつで一番大きいの、これだったんだよね……。


「大丈夫? 狭くない?」

「大丈夫。お昼食べるくらいなら、全然」


 ……それ、遠回しに狭いって言われてるような気が……。


 でも大丈夫と言われているなら気にする必要はないか。と気を取り直した。それより、こんなにいいお天気なんだもん!! ピクニック気分を楽しまなくっちゃ!!

 私は用意していたお弁当箱を取り出す。午前中動き回ったせいで中ぐちゃぐちゃになってませんように!! と天に祈りを込めながら蓋を……そっと開ける。


 少し心配していたものの、中身は無事だった。もちろん少し動いているけど、見栄えが悪くなるほどじゃない。良かった!!


「すごい、美味しそう」

「本当? 良かった~、作ったかいがあったよ!!」


 そんな感想を貰って、胸を撫で下ろす。やっぱりまずは、食欲を刺激される見た目じゃないとね!!


 西園寺くんに箸を渡し、私は取り皿と箸を持つ。そして食べたいものを取り皿にひょいひょいと乗せていった。


「……不破さん、それだけ?」

「え? うん。私、そんなに食べないから」


 食べようと思えば入るけど、最初からいっぱい食べよう!! と張り切ることはあんまりないんだよね。大好物ならまだしも。

 だから今日も、卵焼き二個、ハンバーグ一個、野菜が少し、ご飯が少しだけだ。


 西園寺くんは私の取り皿の上の食べ物たちと、私の用意したお弁当を見比べる。そして悩むように額を抑えた後。


「……もう少し、食べられる?」

「食べようと思えば……」

「じゃあ、もう少し食べてほしい。……食べてなさ過ぎて、心配になる」


 そう言うと西園寺くんは箸を駆使し、私の取り皿に食べ物を増やしていく。初めによそった量の倍くらいになった。まあ食べられるけど。


「西園寺くんはいいの? 男の子って、いっぱい食べるでしょ?」

「まあ食べるけど……それより不破さんが全然食べてない方が気になるから」

「そっか……分かった。心配してくれてありがとうっ」


 心配に思われているなら、変に断らない方がいいだろう。私は笑顔でお礼を言って、お弁当を食べ始める。……。


「……西園寺くん」

「……? どうしたの、不破さん」

「お砂糖とお塩、間違えて使っちゃったかも……!!」

「……え」


 思わず二人で青ざめる。まさかとは思って全部食べてみたら……全部お砂糖とお塩を逆に使っちゃってたらしく、二人で顔面蒼白になりながらなんとか完食したのでした。

 うう、申し訳ないことしちゃった……!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ