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人格クローン①

自分は書き込みが足りないので、これから思いついたらちょくちょく文を足していく事になると思います。ご容赦を。

 中学の頃の友達が安楽死したらしいという知らせを、人伝に聞いた。特に感動は無かった。


 近頃では、今に絶望している若者の間で安楽死が流行している。精神のみの死を選べば、誰にも迷惑をかけずに自殺する事ができるからだ。身体は優秀な人物の記憶が引き継ぎ、彼らだけの施設で生活をはじめる。もちろん、彼らというのはクローン達の事だ。


 俺も皆と同じで、大学四年生までに死ぬのが一番良いと思う。何となく。


 窓の外の空をちらりと見上げた。ヘリの音が響き渡る曇り空は、ガラス越しに酷く色褪せて見える。教壇に立って話す教師の声が、低い解像度の中で遠のいてゆく。微睡を耐え凌いでいると、いつの間にかチャイムが鳴っている事に気付いた。教室の騒音がピントを合わせるかのように次第に聞こえ始める。

 俺、蒲公英(がま こうえい)は俯いたまま目をパチクリさせた。前の席の蜆真(しじみ まこと)が振り向いた。


 「公共の課題、やった?」


 「課題?ああ、『人格クローンを用いた安楽死合法化政策に関する論文』原稿用紙十枚分だろ?」


 俺は言った。


 「そ。僕は八割くらいまで筆が進んだよ。倫理的な観点から考察すれば、かなりの文字数が稼げる。」


 蜆はペンをくるくる回しながら、自分の原稿用紙に目を通している。


 「まじ?早いな。俺なんかググった事の羅列しか書いてない。ほれ見ろ、政策の概要だけで一ページ使ってるぞ。」


 「はは。」


 蜆は笑った。

 突如、その笑みが顔から消えた。左側の最後の行まで目が到達したらしい。蜆は神妙な面持ちで尋ねた。


 「君の昔の友達、安楽死したの?」


 「ん?ああ。」


 俺は答えた。


 「理由までは知らん。俺の記憶では、結構明るい感じのお気楽な奴だったんだが。」


 そう言いながら、俺は机の横に置いてある水筒を持ち上げた。


 「そうゆうのに限って闇が深いのかもしらん。」


 蜆は固い表情を維持したまま、お茶を喉に流し込む動作を見ていた。


 「ふう。」


 俺は一息ついて言った。


 「ま、今の世の中じゃ正味人生なんて面白くも何ともないと思うわな。誰にも迷惑かけずに死ねてハイスペックな脳を引き継げるんなら全然アリじゃない?」


 蜆は少し考えて言った。


 「そうかもね。」


 若干の沈黙が場に流れる。

 一気に場の空気が澱んでしまい、何か雰囲気を変える方法はないかと、俺は椅子から立ち上がった。

 ここで、彼の待ち望んだ転機が訪れる。


 「今日はー。」


 見知らぬ学生が教室に入ってきた。

 教室にいる大部分の生徒の視線が、彼女のいる入り口付近に集中する。俺は、この雰囲気、もしくは⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎そのものが嫌いだった。


 「私、転校生の朝草倫根(あさくさ りんね)と言います。よろしくお願いします。」


 奇異の視線に気付いた転校生は、お辞儀をして育ちの良さをアピールする。

 そして重大な事実を告発した。


 「あと、クローンです。」


 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。


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