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140字小説まとめ17

作者:

推しの家を、特定した。私は、推しの恋人になりたかった。けれど、彼は女癖が悪いから無理そう。でも、一番近くで見守るぐらいはしたい。彼の家に来る女も、この手で……いけない、推しの声が聞こえる。家の前にいる事がバレたらまずい。隠れなきゃ。


嘘でしょ。推しの隣にいる女、母さんなんだけど。


『キツい』









どうしよう、兄ちゃんが死んじゃった。ジャングルジムに登ってたら、兄ちゃんがちょっかいかけてきたから、振り払ったんだ。そしたら落っこちて、何しても起きなくて……。僕はどうすればいいか分からなくなって、逃げだした。


「ハハッ、ビビってやんの!」

走り去る弟を見て、俺は思いきり笑った。


『幼いドッキリ』








公園入り口の階段を駆け上がる。兄ちゃんが死んで、怖くなって帰ろうとしたら、走ってきた。何か、言っている。きっと、お化けになった兄ちゃんは、怒ってるんだ。兄ちゃんが、僕の腕を掴んだ。

「ヤダァ!」

僕は腕を振り払った。


兄ちゃんは階段下に転げ落ちた。赤い液体が、じんわり広がった。


『二度目』








「大きくなったら、姉ちゃんと結婚する!」

弟は、そんな昔の約束なんて、絶対忘れてる。私は、ちゃんと待ってるのに。


——って、姉ちゃんは考えてると思うけど、僕は手放す気なんてない。ずっと側にいる。


……弟よ、独り言が大きい。後、勝手に妄想膨らませんな、キモい。大賛成ではあるけれど。


『相思相愛』







「可愛い〜!」

娘はテーマパークの着ぐるみに、抱きついた。大きな笑顔で、何だかこっちも嬉しく……っておい、抱きつく時間長すぎるぞ。娘が困惑してるだろ。娘を引き剥がし、着ぐるみに近づき、囁く。

「……ちゃんと、仕事しろ」

『だってぇ、私も遊びたいのよ〜!』

仕事をしてくれ頼むよ、妻。


『休日出勤の母』







「やっほ〜、久しぶり! え? なんでマンホールの下から出てきたかって? 君と逢いたかったからに決まってるじゃん! いや〜びっくりだよ〜。数十年経っても様子見に来てくれるなんて〜」

マンホールで殺害した、私の様子をさ。

かつて殺した奴が、マンホールから顔を出し、俺の足を掴んできた。


『軽』







娘が部屋の隅にいた。声を掛けると、娘は後ろ手に何かを隠した。

「お母さんは見ちゃダメ!」

娘は勢いよく背中を向け、二階に駆け上がった……後ろ手に隠した格好のまま。思わず笑いそうになったが、我慢した。


私宛ての誕生日絵の完成、楽しみにしてるね。

代わりに、心の中でこっそりと呟いた。


『サプライズ』







いつも、玄関で出迎えてくれる飼い猫がいない。帰ってきたら、真っ直ぐ飛んでくるのに。声を掛けながら部屋に入ると、ちゃんといた。ベッドの淵にグッタリと身体を前に倒して……やだ、もしかして! 私は急いで、飼い猫を抱き上げた。

ぷうぷう……。

気持ち良さそうな寝息が、飼い猫から聞こえた。


『ねんねこ』







くそ、妹を誑かしやがって。今に見てろ、お熱な妹をすぐに冷静にさせてやる。そんで、お兄ちゃん大好きな妹に戻してやるからな!

「お兄ちゃん、何でそんな怖い顔してるの?」

「なんでもないよ」

「ふ〜ん……あ、見て! 推しかっこいい〜!」

俺はテレビに映る男性アイドルに、舌打ちをかました。


『シスコン』







今日は誘拐決行日だ。金がないから、もう仕方がない。金持ちそうな所は見つけてある。ガキの登校時間に合わせて、自宅近くで待ち伏せ……ん? 柄の悪い男が、目当ての家にワラワラ……

「おい」

背後から、威圧的な声がかかった。

「ここの家、組に借金したまま夜逃げしてんだ。なんか知ってっか?」


『ターゲットは、』







今日は、推しの握手会だ。身を削ってまでバイトして、抽選券同封のCD爆買いした甲斐あった。目の前に推しがいるなんて、夢みたい……!

「来てくれて、ありがとう」

推しは笑顔で手を伸ばし……私の胸を刺した。

「自分好みの男に刺される気分はどう? かつてのイジメっ子さん?」


……最高だが?


『復讐失敗』







この絵、なんか良いな。

美術館に飾られている一枚の絵に、強く惹かれた。美しい女性が、憂げな横顔を魅せている。暫く見つめていると、絵の中の女性が正面を向いた。

『私に見惚れるなんて、センス良いわね』

驚いたけれど、彼女の笑う姿はとても可愛いらしかった。


それが、妻との出会いである。


『肖像画の妻』







オレンジジュースを沢山飲みたい。

それが、俺の夢であった。

「手伝うよ」

友達に話したら、笑顔で頷いた。……そして今、俺はオレンジジュースの中にいる。オレンジジュースが溜まったデカい水槽に、放り込まれたのだ。水槽の外から、友達が笑っている。

これが意識を失う前に見た、最後の光景だ。


『仇となる』








一人の男性が、珈琲を二つ注文した。後から、誰か来るんだろう。だが、珈琲を置いて暫くしても、相手は来ない。男性は、結局閉店まで居座った。会計をする際、男性が申し訳なさそうに謝ってきた。

「ここのカフェ、病気が治ったら来たいね、と恋人と話していたんです」

叶う事は、ありませんでしたが。


『叶わない』







嘘でしょ、完璧課長がケアレスミスしまくってる。ミーティング資料の誤字脱字、メールの送信ミス、会議ではカミカミ……どうして……。

「課長、今日使い物にならないな」

「あ、部長……」

部長は深く溜め息を吐いた。


「5歳の娘に好きな人が出来たから、パパと結婚しないって、言われただけでさ」


『溺愛パパ』







冷蔵庫にあった林檎がなくなってる? 食べたいのき、何処行った……。身体を引きずるようにして家を歩いた。すると、息子がリビングの隅にいた。声を掛けると、息子は笑顔で駆け寄ってくる……卸機を片手に。

「すりりんご作ったんだ! お風邪、良くなってほしくて!」

 私は、息子を抱きしめた。


『看病』







「自転車、返して……」

そう言っているのに、友人は僕の自転車を押して、構わず進んで行く。

「うん、ちょっと黙っててくれるかな」


道端で行き倒れてた人は大人しく、ゆっくり着いてきてよ。

友人は、後ろを振り返らずに言った。僕が泣き顔を見られるの、苦手な事知ってるんだ。優しいね、君は。


『不器用』







「お前、就活終わったのか?!」

驚く俺を他所に、友人は笑顔で頷く。

「マジかよ、いいなぁ……」

「空を飛べるぐらい、気分が軽いよ。今なら、何でも出来そうだ」

「俺も軽くなりたいよ」

友人は、ただ笑った。


数日後、友人は首を吊った……そっちの意味、だったのか。

気づけなくて、ごめんな。


『終活』








迷子のアナウンスをして、保護者が迎えに来た。それは良いんだ……でも、何で母親と名乗る人が三人も来たの。わけわかんない。

子供は静かに三人を見上げて、ボンヤリと突っ立っている。そりゃそうだ。仕方ないから、私はこっそり、子供に誰がお母さんか聞いた。


「みんな、わたしのおかあさんです」


『複雑な家庭』








私、また人を殺しちゃった。こういうニュースを見るのは、何回目かな……私の嫌いな人を思って死んでよって部屋で呟くと、次の日に亡くなっている。やめたいけど、やめられない。

「前より、息がしやすいなぁ」


それなら、良かった。僕は盗聴器越しから、安堵の声を聞く。


君を、幸せにするからね


『君の、ために』







テイクアウトを頼まれて配達したが、もう届いていると言われた。え? 何で?

確認してみたら、同じメニューの商品が届いてた……配達ミスかなぁ。この頃、疲れてるし。僕は一旦、店に戻った。


数時間後、店のテレビで配達先の一家が亡くなった事を知った。あれは偽物の品で、毒が入っていたらしい。


『テイクアウト殺人』







シルクハットの男性がマジックショーをしていた。かなりの腕前で、時が経つのも忘れた。男性がシルクハットを地面に置くと、客は一斉にお金を入れた。僕も入れようとしたけど、人に揉まれて躓いた……が、身体が浮き上がり、お札が手から離れた。男性がお札を手にしながら、僕に向かってお辞儀をした。


『不思議なファンサービス』







「こんにちは……何処に行くんですか?」

「おお、仕事場に行くんだよ」

「そうだったんですか……良ければ乗って下さい。お送りしますよ」

「本当かい? いや、悪いねぇ兄ちゃん。助かるよ」

老人は、嬉々として車に乗った。とても、機嫌が良さそうに。


良かった、お爺ちゃんが見つかって。


『他人のふり』







「今日学校行く途中に雨降って、ずぶ濡れになりながら歩いたんだけど、休校だった事思い出して引き返したら、歩道橋で頭から落っこちて血が出たの。散々だったけど、家に帰ってソシャゲのガチャ引いたら推しが出たの! 凄くない?! お姉ちゃん!」


「取り敢えず病院行こうか、まだ血が出てるから」


『報われた』








うーみはひろいーな おおきーなー

間延びしながら歌う恋人に、凝り固まった心が解れていく。手を取られて、一定に揺られながら。


うーみにおふねーを うかばせーてー

「そんなもん必要ない。君が連れてってくれるんでしょ」

呟く僕に恋人は微笑むと、ゆっくり海の中に入った。手は、繋いだままで。


『楽しみ』







「あれ、君のお父さんとお母さんじゃない?」

「……え?」

「めっちゃ笑顔で君の事見て……あ、何か言ってる」

「……何て?」

「えっと、あ、い、し、て……る? って、唇が動いて……」

僕は思わず言葉を切った。友人が、泣きながら静かに呟いたからだ。


「亡くなっても、見守ってくれるんだね」


『傍』









「ごめんね、醜い子は愛せないの」

と、母は私を捨てた。幸い、周りのおかげで何とか成人を迎えた。けれど、母の面影を未だ求めている……母が住んでいる家、特定したから会いに行ってみようかな。綺麗になるよう努力したんだ。愛してくれるかな。


母の家は、イケメンな旦那さんと可愛い子供がいた。


『美醜』







気持ち良いなぁ。開け放した窓から、新しい風が流れ込んでくる……ん? 何だこれ? しゃぼん玉、か? 遠くを見ると、しゃぼん玉の吹き口を持った子が、狼狽えていた。私は部屋奥に引っ込み、すぐに戻った。手に、しゃぼん玉の道具一式抱えて。


「一緒に遊ぼ!!」


子供は、走って逃げていった。


『不審者……か』






 

電車の中に、仲睦まじそうな男女のカップルがいた。小さな声で楽しげに話し、時に控えめに笑い合っている。平和ねぇ……まあ、それも今だけだけど。私は、二人の前に立った。


男が困惑した表情を浮かべ、私を見た。

「か、母さん……」

「楽しそうね、可愛いお嫁さん放って他の女性と遊ぶなんて」


義母(はは)、強し』







玄関の方で、親しげに話す婆ちゃんの声が聞こえた。お客さんかな? それとも、宅配便? 暫くすると、婆ちゃんが戻ってきた。とても、疲労が滲んだ表情を浮かべて。

「どうしたの、ばあちゃん」

「いやね、楽しかったけど、やっぱり疲れるわね」


「泥棒さんのご機嫌取って、帰っていただくのは」


『懐柔』







「あ、お母さん、何そんな悲しい顔して。そんなに心配しないでよ。大丈夫だよ」

私は母に向かって、満面の笑みを作る。

「……そう」

母は、やっと笑顔になってくれた。だから、私は安心して目を閉じた。


次に目を開いたら、花畑だった。ダメだったか……手術。誰もいない花畑で、静かに涙を流した。


『最期は笑顔で』







焼きたてのパンを、店に並べる。香ばしい匂いが店内にまた広がって……あら、子供が窓に……。物欲しそうに見ている目が可愛くて、店に出て試食程度にパンをあげた。子供は喜び、パンを片手に颯爽と走っていった。黄金色の尻尾を、揺らしながら。


私は自身の尻尾を揺らしながら、子供を見送った。


『バケモノ同士』







酒に舌鼓を打ちつつ、縁側で月見を嗜む。贅沢な、一時だと思う。だが、何故だろう。ぽっかりと心が欠けている。

「私が、いないからじゃない?」

ふと、月明かりの下に君が立っているような気がした。戯けて、茶化すような笑顔で……まあ、そんな訳ないけど。

今宵の月は、中途半端に欠けている。


『君がいない』







笑顔で、お辞儀をする。芝居終わりの、カーテンコールと同じで。楽しいな、ずっとしていたい。出来ないけどね。

「刑事さん、真犯人である私にたどり着いた事に、賞賛をお送りいたします」

そして、予め開かれた奈落に飛び降りる。下に落ちたら、幕は閉まる仕掛けも施した。


完璧な、僕の千秋楽だ。


『千秋楽』







今、ちくわが宙を飛んでいったような気がする。次はお皿と、コップ……凄いなぁ。色んなモノが飛んでいる。遠くの方で、パリンパリンという乾いた音が聞こえるから、食器は割れてるのかなぁ。ま、いいかぁ。


両親の飛び交う罵倒に、背中を向ける。夫婦喧嘩は犬も食わないから、逃げるが一番、だよね。


『ほとぼりが冷めるまで』







家の中に、誰か這いずり回っている音が聞こえる。だから、天井を長い棒で突きまくった。屋根裏部屋に繋がる梯子から、転がり落ちるように、人が出てくる。ストーカーだ。

「ご、ごめんなさ……」

震えるストーカーを抱え、部屋に投げ入れた。


ストーカーの……愛する人を監禁する為に用意した部屋に。


『キャッチ&監禁』







マンションの屋上から、人が落っこちてきた。目の前で潰れ、動かなくなる……よし。俺は無言で、その場を通り過ぎる。思いっきり死体を踏みつけながら。


まさかさ、ここで再会するとは思わなかったよ。俺を捨てた、元妻がさ。浮気して男と上手く行かなかったのかな、知らないけど。


ざまぁないね。


『吐き捨て』







あら、今日も来たの。最近よく来るわね、猫ちゃん。可愛いらしいわ、丸くなって、私のお膝に座って。ありがとう、いつも来てくれるから、寂しくないわ。何もあげられなくて、ごめんね。


良いんですよ、お婆さん。貴方の透明な手で撫でられる程、心地良いものはないんです。また、この廃墟に来ますね。


『会話』







眷属の女が、腕を差し出した。昔はかなり抵抗していたが、やっと大人しくなった。女の腕に歯を立て、血を一気に吸う……よし、腹が満たされたからそろそろ……と、思った瞬間、酷く眩暈がした。


「遅効性の毒薬、効いてきた?」

貴方と一緒に死ぬのは癪だけど、こうしなきゃ逃げられないから……。


『共倒れ』







ロボット掃除機が、家に来た。これで、色んなゴミが片付くぞ。さっそく、スイッチを入れて動かした。ニートで昼間から寝ている父、男遊びが激しい母、口だけで意地汚い祖母……。どんどん、掃除機に吸い込まれていく。


ああ、やっと綺麗になった……。ピカピカになった家を見て、ほっと一息ついた。


『安堵』


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