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第32話「謎のアクセサリ

今更ですが、32話を投稿し忘れている事に気がつきました。

この度は大変ご迷惑をおかけしました。

 「へぇ~……私のいない場所でそんな事していたんですか……ふ~ん」

 「ぶ、部室に来る件はキッチリ断ったんであんまりへそ曲げんでください……」


 宙銀さんの提案を何とか断り、部室に帰ってきた後、お土産を食料品の保管場所に並べながら林間学校での出来事を話したら、美音さんはこれでもかというくらいに不機嫌をアピールしてきた。

 恐らく俺が宙銀さんの人生相談みたいなのを受けていたのが気に入らなかったんだろう、ソファの背もたれから顔を出してじとっとした目で見つめて来る。


 「……冗談です、別に刑二さんが悪いことしたんじゃありませんし……怪物と遭遇しても無事だったのなら、よかったです」

 「は、はい……」


 しかし、次の瞬間にはその顔も一瞬で晴れて次いで美音さんはにこりと俺に微笑みかけて来た。

 不意に綺麗な微笑み顔を向けられた俺は思わずドキッとして言葉に詰まってしまう。

 ……ショッピングモールの一件以降、このように時折好意的と思わしき行動が増え始めている……ひょっとして今ならデートに誘えば乗ってくれるのでは?

 そんな事を考えていると、美音さんは表情を真面目なものに戻して俺に話しかけて来た。


 「でも、その宙銀さんという人とはあまり関わらない方がいいと思いますよ」

 「え? なんでですか? ……あっ、ひょっとしてヤキモチ焼いてくれてたり……すみません冗談です」


 美音さんは俺にじっとりとした視線を向けた後、一つため息をついてこう続けた。


 「気づいていないのですか? その宙銀さんって人の口から『コルウス』の名前が出ているのですよ?」

 「へ? それがどうかし……!? あっ!?」


 最初は美音さんの言っている事が分からなかったが、そういえば『コルウス』として宙銀さんと全く接点が無いことを思い出すと、頭に衝撃が走るような驚愕に満ちる。


 そうだよ、なんで宙銀さんがコルウスの名前知ってるんだ!? おかしいじゃん!?


 「……まぁ、刑二くんの言う『正義の味方』とやらが親切に教えてくれただけという可能性もありますが……なんにせよ、警戒はして下さい」

 「はい……分かりました」


 自分のあんまりな迂闊ぶりに落ち込みながら返事をすると、美音さんはそんな俺の気持ちを察したのか露骨に咳払いをして話題を変えてきた。


 「ところで、ヘンなものを拾ったとか?」

 「ああ、多分怪物の中にあったと思うんですけど……これです」


 彼女の問いに俺は制服の内ポケットから金属板の上に鳥の形にカットされた緑の宝石をはめ込んだようなアクセサリを取り出す。

 あの時、急いでマスクとコートなどを枝に変えて放り込んだポケットに普段は感じない重みがあったのだ。

 後でその中を改めると、今持っているアクセサリが混じっていたというわけだ、恐らくあの林間学校のボガスカンから手を引き抜いた時に一緒に千切ったのだろう。


 「……よく怪物の中にあるもの持ち帰ろうと思いますよね」

 「そりゃ、便利ですし……今回に関してはいつの間にかって感じですけど」


 怪物の身体は、人間にとって大いなる脅威となるが、魔術師にとってはそれと同時に強力な武器や触媒として便利な素材でもあるのだ。

 魔術師の中で退魔師がぶっちぎりで収入が高いのもそのためである。

 そして俺はそんな素材の一つであろうアクセサリを入手したのだが、相手の割にイマイチ力を感じない、ひょっとしたらハズレの部類かと確認するためにこうして美音さんの元に持ってきたというわけだ。


 「うーん……? 正反対な力があるように見えますね、それも相反しあってるというか……上手くエネルギーをコントロールできてない……?」


 美音さんは改めて眼鏡の位置を整えると、俺から受け取ったアクセサリを遠ざけたり近づけたりして状態を確認していく。

 そして何かしらブツブツと呟いているが、内容が全く理解できない俺は気になる余り彼女に尋ねてみた。


 「えっと、つまり?」

 「この触媒――汚染されてて本来の効果か、役割が果たせていないように感じます」


 汚染――その言葉の意味は様々だが、魔術師的にはその人外や魔術的な触媒の持つ力を全く別のエネルギーや呪いで無理やり歪めてしまう事を指す。

 車で例えるなら『軽自動車だし軽油でいいでしょ』とか言って車をぶっ壊してしまうアレと似たようなものである――つまり、このアクセサリは今のままだとなんの役にも立たないガラクタ同然である事を意味していた。


 「協会に送るのが一番ですかね?」

 「そうなりますね……刑二くん、返しますね」


 俺の提案に美音さんは頷くと、そのままアクセサリを俺に返す。

 ……あれ、今さらっと返されたけどひょっとして協会に行くの嫌だから俺に返した?

 ……まぁいいか、近々協会に定期報告をするし、その時に魔導師にでも渡そう。


 「しかし、よくそこまでわかりますよね、俺なんて何となく変な魔力っぽいものがあるとしか思わなかったのに」

 「術書の解析をしてると自然と身に付きますよ……あと、そろそろお腹が空きました」


 丁度お昼休みの鐘が鳴ると同時、美音さんは腹を摩って俺をチラリと見る。

 いつも通りの飯の催促に苦笑しつつ、こうして美音さんの世話をしている時間が一番落ち着くかもしれないと実感したのだった。


 「じゃあ早速お土産のレトルトを振る舞いますよ、ちょっと待っててください」

 「あ、レトルトカレーなら具を足してください、具の少ないカレーは嫌です」

 「……20分待っててください」


 訂正、やっぱちょっとは控えて欲しい。

 俺はその後結局家庭科室で炒めた野菜と肉を加え、更に『辛くて食べられません……なんとかしてください』という美音さんの要望に応えるために二度、家庭科室で甘口のルーと混ぜてほぼ手作りのカレーを振る舞う事となったのだった……。


 ★~~~★



 地球上にはない、どこかの空間。

 その暗い空間の中で、輝きを放つ数々のアクセサリが並べられている場所を前に、3つの影がその場に佇んでいた。


 「これがエスキュートの秘宝、『エスデコル』……? そんな大した代物には見えないわね」

 『ダークエナジーで汚染されたせいでス! ヴィオレンツが適当に送って来るからこうなるんでス!』


 アクセサリを前に疑問を口にするワルジャーン帝国の女幹部『インペリウム』に対し、同じくワルジャーン帝国一の科学者『スカム』が憤慨した様子でUFOを揺らす。

 そして横にいる気だるそうな青年――ワルジャーン帝国の男幹部『ヴィオレンツ』を睨み継げるが、当の本人は何も堪えていない様子でスカムの視線を睨み返した。


 「あぁ~? 元はと言えばスカムがダークエナジーの拡散にしくじったからこうなってんだろ? 責任転嫁してんじゃねぇよ」

 『な、なんでスと!?』


 売り言葉に買い言葉、ヴィオレンツの放った一言は一瞬にしてスカムの顔を赤く染め上げ、UFOからアームを出して今にも襲い掛からんとしている。

 それに対してヴィオレンツは獰猛に笑うと影を纏って狼の大男に変身し、鋭い爪をむき出しにした手を前に構えた。

 そんな二人をインペリウムが囃し立てようとした瞬間――彼らの間に闇のオーラが吹き荒れる。


 『止さぬか』


 そのオーラから鋭く、大きな目が浮かび上がって二人を諫めると、即座にその場にいる全員が膝をついて首を垂れる。

 特に止められたスカムとヴィオレンツの二人はぶわりと冷や汗が噴き出していた。


 『今はエスキュラーも潜入中の大事な時期だ……私情で争う事は許さん』

 『うぐっ……! 申し訳ございません、ワルジャーン様……』

 「……俺、いいや私も出過ぎた真似をしました……以後、気を付けます」

 『ならばよい、面を上げよ』


 ワルジャーンの言葉に、先程の態度が嘘のように恭しく頷く二人、その様子に一つ頷いたワルジャーンの言葉に3人がゆるゆると立ち上がり、次いでワルジャーンはインペリウムに視線を向けた。


 『それで、汚染されたエスデコルの件だったな』

 「はっ……回収できたエスデコルは41個、残りの1つは不明ですが……現存するエスデコルが例外なく汚染されている事から、残りの1つもそうである可能性が高いと見ています」

 『うぅむ……』


 彼らの目の前に広がるアクセサリ、エスキュートの秘宝であるエスデコルは日の光を浴びずとも強い輝きを放つと言われているが、今は鈍い金属光を僅かに返すだけ。

 強大な力を欠片も感じさせないその秘宝たちを前にワルジャーンはため息のような唸り声を吐き出すと、重々しく口を開いた。


 『……仕方あるまい、エスデコルをエスキュートに浄化・保持させよ』

 『それは……! よろしいのでスか、ワルジャーン様?』

 『よい……ただしタダでくれてやるつもりはない、汚染を利用しボガスカンを生み出しエスキュートの戦力を可能な限り削れ、最悪1人残っていれば構わん』


 目を見開いて驚くスカムに対してワルジャーンが更なる指令を出すと、スカムとインペリウムは素直に頭を下げる。

 一方でヴィオレンツは少々不満げな様子でワルジャーンに尋ねて来た。


 「……その任務には、私も従事するのでしょうか?」

 『ククッ……案ずるなヴィオレンツ、貴様には妖精界のエスキュートの追撃を命じる……我としても、あの二人を放置する気は無いのでな』

 「……クハッ! 謹んでお受けいたします!」


 ヴィオレンツの心情を察しているワルジャーンは彼に再び妖精界の何処かにいるであろう二人のエスキュートの追撃命令を下すと、途端にヴィオレンツは嬉し気に笑って頭を下げる。

 その様子を満足げに眺めたワルジャーンは次にスカムへと振り返った。


 『スカムは先程の任に加えて、引き続きコルウスの背景を追え……あれだけの事をしてきたのだ、大きな組織があると見て間違いない』

 『ハッ! 必ずや奴の尻尾を掴んで見せまス!』


 スカムとしても、何としても自分の科学力が通用する相手であるという事を証明したいのだろう、普段以上に気合の入った返事を受けたワルジャーンは、オーラの位置を下げて3人を見渡せる位置に着く。

 3人もまた改めて姿勢を正してワルジャーンの言葉を待っているようだった。


 『この戦いは我らの予想以上に激しいものとなるだろう……しかし、我らが野望をこんな事で止めるわけにはいかぬ、貴様らの働きに期待する』

 「「『ハッ! ワルジャーン帝国万歳!』」」


 暗い空間に3人の讃辞が響き、それを最後にワルジャーンが宿っていたオーラが消える。

 そして各々が己の任務を果たすためにその場を後にするのだった。

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