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罠に飛び込んでみる?

 ゲオルク・ロイターと会話を交わした後は、絡んでくる人が少なくなった。なぜかはわからない。


 ラインハルトとジークとシュッツは、他国の外交官や商人と談笑している。わたしも最初はいっしょにいたけれど、お腹がすいたのでリタとゾフィに付き合ってもらって食事をすることにした。とはいえ、立食なので料理をつまむ程度なのだけれど。


 それでも、わたしにはご馳走にかわりはない。


 人心地ついたあたりで、貴族令嬢たちが絡んできた。だれもが義務的に接触していているだけだから、当たり障りのない会話を交わす。


 そういえば、ディアナの姿が見えないわね。


 キョロキョロと捜していると、リタが情報を入手してきた。ディアナはオイタがバレてしまったとかで、パーティーへの参加は禁止されているらしい。つまり、自室で謹慎しているのだとか。


 もしかして、エーデン伯爵子息との厩舎での乗馬トレーニングのことかしら。


 そう思ったけれど、どうやらそれではないみたい。


 わたしの知らない貴族子息とのトラブルというわけね。


 大変よね。


 つくづく思った。


 時間が経ち、そろそろお暇する人たちが出始めた頃である。


 リタとゾフィは、他国の外交官や商人の奥様方の相手をし始めた。わたしではまだ他国の貴人の相手をするには荷が重すぎる。だから、二人が代わりにしてくれている。


 それを近くで見て勉強することにした。すると、ロイター家の執事が近づいてきた。


 ディアナが会いたがっている。例のことで耳に入れたいことがあるので、自室に来て欲しい。


 耳に彼女からの伝言をささやかれた。


 ラインハルトとジークとシュッツは、他国の外交官や商人だけでなくヨルクやこの国の官僚なども交え、ヨルクの執務室で非公式の会談を行っている。


 その間、リタとゾフィがその奥様方の相手をしているのである。


 大広間内を見渡してみた。


 すでに帰ってしまった招待客もいるけれど、まだ多くの人たちが料理をつまんだりお酒を飲みながら談笑している。


 オリーヴィアは周囲に男性をはべらせ、女帝のように振る舞っている。


 ディアナがわたしに「耳に入れたいことがあるから待っている」なんてこと、小説ならぜったいに罠よね。


 わたしを孤立させ、殺すか攫うという計画に違いないわ。


 さて、どうしましょう。


 チラリと執事を見た。


 どこにでもいる普通の執事ね。


 彼も一味の一員なの? それとも、そんな悪だくみなどまったく知らずに言われたまま伝えにきているの?


 もしかして、わたしの考えすぎ? ほんとうにディアナが会いたがっている可能性だってある。


 わたしを暗殺するとか、そんな計画じたいないのかもしれないし。


 小説のヒロインみたいに、あれやこれやと悩んでしまう。


 それを、執事は辛抱強く待っている。


 そうね。罠だとしても、ここはアクションを起こすべきね。だいいち、囮になってラインハルトが優位に立てるようにすると決意しているんだし。


 それに、ここなら叫べばだれか来てくれる。


 それに、小刀をちゃんと隠し持っている。ラインハルトには出来るだけ使うなと言われているけれど、いざとなったら威嚇くらいは出来るかもしれない。


 こんなふうに、小説のヒロインも悩むのよね。


 だけど、これだけは言える。


 ぜったいにまんまと誘き出されるの。


 だから、わたしもそうするしかないわよね。


「わかりました。ディアナさんのところに連れて行ってもらえますか?」


 そして、執事にお願いをした。


「妃殿下、畏まりました。どうぞこちらへ」

「あっ、ちょっと待ってもらえますか」


 執事について行こうとしたタイミングで、グラーツの姿を認めた。


 この前、調練のことでラインハルトを呼びに来た自信なさげな将軍の一人である。


「グラーツ将軍」

「これは、妃殿下」


 彼は、すぐに駆けよって来た。わたしと同年齢くらいの可愛らしいレディを伴っている。


「妃殿下、ご挨拶申し上げます」


 彼女は、スカートの裾を上げて挨拶してくれた。


「妹のカルラです。二人ともパートナーがいませんので」


 グラーツが、苦笑混じりに教えてくれた。


「初めまして、カルラさん。チカです」

「キャアッ、どうしましょう、お兄様。妃殿下に話しかけられたわ」


 彼女のあまりの可愛さにキュンときてしまった。


「あの、妃殿下」


 執事はイライラしているみたい。


「ごめんなさい。すぐに終わります」


 執事に言ってから、グラーツとその妹のカルラに向き直った。


「カルラさん、またゆっくりお茶でもしていただけますか?」

「そんな、妃殿下と? あ、いえ、もちろんです」

「よかったわ。グラーツ将軍、ミステリー小説がお好きでしたよね?」

「ミステリー小説? あ、いえ……」

「あそこで談笑しているリタとゾフィが談笑を終えたら、わたしにミステリー小説のことをきかれたと言ってみて下さい。きっと、最高のミステリー小説を勧めてくれますよ」

「ええっ? いったいどういう意味……」

「それでは、また。お待たせしました。参りましょう」


 なにがなにやらわからずパニックになっているグラーツとその妹のカルラを残し、大広間をあとにした。


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