義理の息子たちとその嫁たちの馴れ初め 2
「そんなときに舞い込んできたのが、ジークとシュッツの暗殺でした。『それでは、お手並み拝見』ということで、意気揚々と二人を殺しに行ったのです」
ソフィは、「噂にきくかっこいい皇子様を見に行く」的な軽さで言った。彼女は、形のいい唇を開いた。
「二人でいるところにそっと近づき、首をかき切ろうとしたのです。そうすると、二人はわたしたちの気配を察知していたのです」
「あれは感心したわよね、ゾフィ。さすがはバーデン帝国の皇帝の息子にして将校よねって思ったわ」
「そうよね、リタ。久しぶりに興奮したわ。殺し甲斐があるわ、とね」
リタ、ゾフィ、ごめんなさい。そういう系の小説も読んだことがあるけれど、あなたたちの話の内容はわたしにはハードすぎて想像の範疇をこえてしまっている。
「彼らと死闘を繰り広げている最中に、『ビビビッ』ときたのです。わたしだけでなく、リタもです。二人とも直感しました。『これよ、これ。この二人よ。わたしたちの伴侶は、この二人しかいない』というふうに」
「それで、いまにいたるというわけです」
どうしましょう。整理どころか頭も心も真っ白だわ。
リアクションがとれずに呆然としていると、二人はクスクス笑い始めた。
「お義母様、お許し下さい。お義母様の反応が可愛すぎてつい揶揄ってしまいました」
「お義母様、可愛すぎます」
二人はわたしの両脇に腰をおろし、ギューッと抱きしめてきた。
「そ、そうよね」
ハハハ、と苦笑してしまった。
「ですが、命を削るような死闘を繰り広げたのは事実なのです」
えっ? そこは冗談じゃないのね。
「二人がわたしたちの探し求める男性かどうかを見極める為には、本気で遣り合う必要がありましたから」
リタ、そこは理解したわ。
「じつは、バーデン帝国とは密約があるのです。いいえ。あったのです。バーデン帝国内、というよりかは皇族にまつわる仕事は受けないという密約です。おそらく、当時の皇族が保身の為に取り決めた約束だと思います。もっとも、それも時代の流れや経済的なことでうやむやになってきたようです。結局、いまはもうそんな密約じたい忘れ去られています」
「ですが、わたしたちはその密約の存在を知っていました。ですが、リタの言う通りわたしたちは彼らが相応しい相手かどうか見極めたかったのです」
「なるほど。でっ、ジークとシュッツは合格したわけね。もしかして、彼らの方が強かったとか?」
それはそうよね。だからこそ、いまがあるのだし。
が、二人は同時に頭を振った。上下にではなく左右に。
「一応、合格点です」
「男性って、ムダにプライドが高いでしょう? だから、彼らに花を持たせたのです。まぁ、彼らも襲ってきた相手がレディですから、無意識の内に力をセーブしていたようです。そこのところは気にかかりましたけれど、それを差し引いても合格点です。ですので、正直に話しました。そして、あれよあれよという間に結ばれたわけです」
「ゾフィ、あれはちょっと積極的すぎたわよね」
「リタ、それもうまくやったでしょう? 彼らが主導権を握っているようにみせかけたのだから」
そういえば、別荘でラインハルトがわたしに会うのに恥ずかしがっていたとき、ジークかシュッツが言っていたわよね。
「あなたの息子たちも勇気をもってトライしたのです。あなたにだって出来るはずでしょう?」
そんなふうに。あのとき、わたしは緊張しまくっていたけれど、なぜかその言葉が耳に残っている。
なるほど。仕事人としてもレディとしても素晴らしいリタとゾフィは、ジークとシュッツをうまく操っているわけね。
これが、男性を手玉に取るということなのかしら。
 




