あなたたちも双子だったの?
だれかがいる前では、わたしたちはイヤな義理の娘たちと義母を装っている。そんなわたしたちも、実際のところは親密すぎるほど親密である。いいえ。リタとゾフィに仲良くしてもらっている。
義理の母娘どうしというよりかは、親友みたいな関係かしら。
リタとゾフィの勧めで、料理やスイーツづくりを趣味と公言している。これまでは、そんなことが許されなかったので出来なかった料理やスイーツづくりを、ここではふつうにさせてもらっている。だから、厨房を借りては三人でスイーツを作ったり、ラインハルトたちと料理を作ったりする。
それはそれで楽しい。出来上がったものを食べる楽しみも味わえるから、二重に楽しい。
ただ、こっそりしなければならないというところが正直不便でならない。
早朝鍛錬の前か、鍛錬の終わった夜遅くか。
まれに昼食から夕食の準備をするまでの間に厨房を使わせてもらうときがある。その時間帯は、料理人たちが数時間の休憩に入っているからである。だけど、万が一のことを考えて人の目があるときバージョン、つまり仲が悪いふりをしている。
この日は、料理人たちの昼休憩時に三人でスコーンを作った。甘さ控えめで食物繊維たっぷりのバナナスコーンである。
ラインハルトとジークとシュッツは、軍の調練の打ち合わせがあるらしく朝から出かけている。だけど、夕方までには戻ってくる予定なので、三人の分も作った。
さっそく、わたしたちの部屋でいただくことにした。
わたしたちの部屋というのは、ラインハルトの寝室の続き部屋、つまりわたしの部屋である。
帝都に来てからというもの、続き部屋を使わせてもらっているのである。
とはいえ、夜も鍛錬をしているのでほぼ眠るときくらいだけど。
続きの間は、ラインハルトの主寝室の奥になる。その為、多少キャーキャー騒いでも廊下まで響きにくい。
だから、リタとゾフィとレディトークする際にもここを使うことにしている。
続きの間とはいえ、大きな寝台にローテーブルに長椅子、執務机に本棚、チェストにクローゼット、浴室にトイレと主寝室とほぼかわらない。主寝室よりわずかに小さいくらいかしら。
バナナのスコーンは、控えめに言っても美味しすぎた。それに、特製ドリンクを添えた。当然、ドリンクも美味しかった。特製ドリンクは、ヤギのミルクにダイズ粉とハチミツを混ぜたものである。美容と便秘に効果のある飲み物らしい。便秘については、鍛錬や健康食を常食するようになってからまったくしなくなった。便秘どころか快便すぎて困っている。特製ドリンクは、便秘だけでなくお肌にもいいらしい。大豆粉じたいはミルクと混ぜてもいいし、水やお湯に混ぜてもいい。だけど、個人的にはミルクと混ぜるのが好みかしら。
それはともかく、午後のひとときを三人ですごしているとき、ふとリタとゾフィの馴れ初めを尋ねてみた。当然、ジークとシュッツとの、である。
「仕事で知り合ったのです」
「ええ、それは別荘でききました」
リタにうなずいてみせると、彼女もうなずいた。
「わたしたちも双子なのです」
「なんですって?」
ゾフィの告白に、思わず叫んでしまった。
別荘では驚きの連続だった。驚きすぎて、しまいには驚くことじたいに飽きてしまった。というよりか、驚き疲れて最後の方には感覚がマヒしてしまっていた。
いまのゾフィの告白は、別荘以降で久しぶりに驚いた。シンプルに驚いた。
「なるほど。ジークとシュッツ同様、二卵性双生児というわけですね」
「その通りです、お義母様」
ゾフィは、うなずいてから続ける。




