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斬新な誹謗中傷

 さすがのわたしも面食らってしまった。これまで容姿のことや境遇のことで誹謗中傷されてきた。それは当たり前のことで、わたし自身もそれをされることを前提にして人前に立っている。

 だけど、これまで一度たりともあっち系のことでは誹謗中傷はもちろんのこと、揶揄われたり話題をふられたりなどということすらなかった。


 こんな見てくれだから、あっち系のことには縁がないと思われているのだ。


 それが、いきなりこれなの? しかも、そのものズバリ?


 でも斬新だわ。わたしへの誹謗中傷の類のあらたな一頁を刻んだという感じかしら。これは、メモに残しておかないと。


 もう二度とあっち系の誹謗中傷まがいの言葉は、叩きつけられるようなことがないかもしれないから。


「あの、夜の営みって、もしかして、もしかして……」


 そんなことを内心で考えながら、おずおずと言いかけていったん言葉を止めた。しかも、わざと声を大きくしたので、向こうにいるラインハルトも気がついたみたい。ジークとシュッツを連れ、こちらへ歩き始めた。


「それってもしかして、『セックス』のことでしょうか?」


 そのワードをことさら強調した。


「もしかして、陛下との『セックス』のことを尋ねていらっしゃるのですか? 陛下との『セックス』が満足しているか、と? それとも、陛下がうまいか下手くそかということをお知りになりたいのでしょうか?」


 自分で言いながら、めちゃくちゃ恥ずかしくてならない。恥ずかしすぎる。


 ヨルクは、わたしが真っ赤になって恥ずかしがると思い込んでいる。そこに追い打ちをかけて面白がろうとしている。


 そうはいくものですか。


 目には目を、よ。


 だからがんばった。わざと事もなげに恥ずかしいことを言ってみた。


 こんなことを大勢の前で言うだなんて、褒めてもらいたいくらいね。


「い、いや、なにもそこまで」


 ヨルクは、多くのレディを魅了してやまない美貌を真っ赤に染めつつうしろへよろめいた。


 ほら、やはりそうね。彼の中では、わたしが真っ赤になって最終的にはいたたまれなくなってこの場をあとにすると考えていたのよ。


 ふふん。そうはいかないわ。


「チカ、何事だ?」


 ラインハルトがやって来た。彼の渋い美貌は、真っ赤に染まっている。


「陛下、申し訳ございません。ロイター様が尋ねられたことが遠まわしすぎてわたしの頭では理解出来なかったのです。それで、念のため確認しておりました」

「ヨルク、妻に対して不躾すぎるな」

「いや、すまない」

「陛下。ロイター様は悪くございません。わたしがはしたなさすぎました。ですが、陛下は夜の営みとやらでもご立派ですのに、ロイター様は遠回しに『陛下は夜のことはイマイチ』とにおわされていらっしゃる気がしたのです」

「そ、そんなことは、そんなことは言っていない」

「ロイター様、それは失礼いたしました。お集りの皆様も、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。陛下、お叱りは後程受けたいと思います。わたしは皆様のお目汚しでしょうから、先にお暇させていただきます」


 ラインハルトが口を開くよりもはやく、ドレスの裾を持ち上げて挨拶をした。そして、さっさと大広間を後にした。


 リタとゾフィが、すぐにあとを追って来てくれたのは言うまでもない。


 そして、この懇親会の後に六人で大笑いした。


 だけど、ラインハルトから叱られてしまった。


 あんなに無理をする必要はないのだ、と。


 それから「恥ずかしいことを言わせてすまなかった」と、ギューッと抱きしめられた。


 ちなみに、夜の営みが鍛錬やトレーニングのことなのであれば、たしかにラインハルトは立派である。


 だから、多くの官僚たちの前で公言したことはまったくの嘘ではない。


 あの場にいた人たちは、「獅子帝」は夜も獅子みたいにすごいのだと感心したに違いない。


 それなら、恥ずかしい思いをした甲斐があるのだけれど。


 だけど、その場合はつぎにでてくるのが子どもの問題ね。


 ラインハルトがすごく立派なのに、どうしてわたしが懐妊しないのかということになるわよね。


 いまのところ、わたしが懐妊することはぜったいにない。それこそ、子どものときに読んだお話みたいに「聖獣が赤ん坊を運んでくる」というのなら話は別だけど。


 いずれにせよ、現状のわたしたちにおいて肌と肌が触れ合うのは、殴り合うとか蹴とばし合うとか投げ飛ばすとか床や壁に叩きつける場合か、ギュッと抱きしめ合う場合だけである。そのギュッと抱きしめ合うのも、そういう行為の前触れ的なものではなくただのハグである。


 もうすぐしたら、わたしはちんちくりんの「メガネザル」もしくは「メガネブタ」にくわえて、産まず女認定までされることになるかもしれない。


 でもまぁ、それも仕方がないわよね。


 わたしに出来なくっても、ラインハルトにはジークとシュッツという立派な後継者がいるのだから。


 充分よね。


 それを思えば、是が非でも後継者を産まなければならないというプレッシャーがなくてよかったのかもしれない。


 と、前向きに考えましょう。


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