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夜の営みについて問われる

 会が始まってからしばらくの間は、閣僚たちがわたしのことをかまってくる。それは、興味本位以外のなにものでもない。だから、なるべくヘラヘラと笑ってかわすことにしている。尋ねられても、「政治的なことはわからなーい」で通す。つまり、バカのふりをする。政治的なことではない話題については、適当に面白い話をして相手を笑わせてかわす。そして、ラインハルトはそんなバカな妻をあからさまに愚妻扱いする。


 閣僚たちがわたしに飽きてくると、ラインハルトから離れて料理に専念する。並べられている料理をつまみながら、観察する。その際には、リタとゾフィがついてくれる。彼女たちは、ちんちくりんの義母を小バカにしつつ周囲に目を光らせている。


 サンドイッチやチーズやハム、カナッペやスティック野菜、スイーツ系のパンなどをモグモグ食べつつ人間ひとを観察するのはすごく楽しい。


 一番目立っているのは、ヨルク・ロイターである。


 まだ宰相になってもいないのに宰相気取りの彼の周囲には、取り巻き以外にも大勢集まっている。


 現宰相が彼のお父様である。ヨルクは宰相の地位とロイター公爵家の当主の座と人脈を、すでに継いでいるようなものみたい。


 ラインハルトと二人の皇子たちが帝都を留守にしているのをいいことに、現宰相もヨルクもすっかり自分たちの派閥を築き上げてしまっている。それは、もしかすると皇帝という立場であっても崩すのは難しいかもしれない。

 何度かこういう会に出席しているけれど、ラインハルトよりもヨルクの周囲に人が多い。ラインハルトの周囲にいる人のほとんどが、ヨルクに反発してたりよく思っていないとか反対にヨルクに気に入られていないとか、なんらかの理由があってヨルクに近づかないか近づけない人たちである。

 もちろん、もともとラインハルトを慕っている人も少なくない。だけど、その数以上にヨルクをちやほやしている人は多い。


 あとは、ジークとシュッツに期待をかけている人も多い。将来、もしかすると二人のうちのどちらかが皇帝の座を継ぐことになるかもしれない。世襲制ではないけれど、いまのところ武力でもって皇帝の座を奪うことの出来る武人がいないからである。だから、どちらかに取り入ろうとしている。その流れでいけば、わたしをヨイショしようと接触してくる人もいる。わたしに子どもが授かれば、ジークとシュッツ同様武闘派に育つ可能性が高い。そうなれば、皇帝の座を狙える可能性がある。それをいうなら、リタとゾフィも子どもを授かれば同様である。


 だけど、わたしに異常なまでに期待をかけている人もいる。厳密には、まだ見ぬわたしの子どもに。


 というのも、皇太子がいまだに決まっていないからである。皇帝は、皇太子を決める気がないのだと噂されている。皇帝は、ジークとシュッツのことを認めていない。だから、わたしとの子を皇帝にするつもりだという噂が、まことしやかに流れている。


 こんなに年齢のはなれた妻を迎えたのだから、そういう噂が流れても仕方がないのかもしれない。しかも亡国とはいえ王女というのは、一応はステータスになる。そのステータスは、ラインハルトとまったく釣り合わないわけではない。いくらわたしの外見がちんちくりんでも、血筋だけを考えれば問題はない。


 ほんと、こういう世界って面倒くさいわよね。つくづく実感する。


 リタとゾフィもそう思っているのかしら。



 そんなふうにして男たちの見えないところでの戦いを見つめていると、ヨルクが近づいてきた。


「皇妃殿下。ラインハルト、あっ、いや、皇帝陛下との夜の営みは、いかがですかな?」


 はいいいいい?


 不躾というよりかは、いきなりセクシャルハラスメント的かつ超個人的な問いを叩きつけられてしまった。


 さすがのリタとゾフィも、両隣で息を飲んだのが感じられた。






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