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お茶会にて 2

「ちょっと、ぬるいじゃない。ティーポットごと交換してちょうだい」


 突然、公爵令嬢が金切り声を上げた。


 彼女がラインハルトに絡みまくっていたときのキャピキャピ声は、甲高すぎて耳障りだった。いまの金切り声は、鼓膜がどうにかなってしまいそうなほど不快な声だった。


「か、畏まりました」


 侍女は恐縮しまくっている。


 すぐに言いつけを実行に移そうとした。


「ちょっと待ちなさい」


 ゾフィがそれを制止した。


「ディアナ、ここがどこだか知っているの?」


 ゾフィは、尋ねてから鼻を鳴らした。


「自覚していないようだから教えてあげる。ここは、皇宮よ。皇宮の庭園。ロイター公爵家の庭園ではないの」

「そして……」


 ゾフィのあとをリタが継ぐ。


「いまあなたの周囲にいて、あなたのお茶を注いでくれているのは皇宮に務める侍女よ。皇族専属の使用人たちなの」

「だから? だからなに?」


 公爵令嬢は、美しすぎる顔の素敵な青い目をひん剥いた。


「あなたに命令権はないの。わかる?」


 リタは両肘をついて手を重ね合わせ、その上に形のいい顎をのせた。


「わたしは客よ。客をもてなすのがあなたたちの役目でしょう? だったら、客の要望には誠心誠意尽くすのが当然じゃない」


 彼女は、謎理論をぶってきた。


 ハハハ。ここまで勘違いしていたら、逆に可愛らしいわよね。


 あ、失礼よね。彼女の方が年上なのだから。


「あの」


 オロオロしている侍女に声をかけた。


「すみませんが、あたらしいお茶を持ってきてもらえますか? そのお茶は、わたしがいただきます」

「で、ですが、皇妃殿下……」

「いいのです。わたしは、このくらいの熱さの方が好みです。それに、これだけスイーツをいただくのです。わたしの分のお茶だけでは足りませんから。リタ、ゾフィ。あなたたちはどうするの? あなたたちも熱いお茶の方がお好みかしらね? ごめんなさいね。まだあなたたちの好みが把握出来ていなくって」


 リタとゾフィに尋ねると、ほんの一瞬二人の口角が上がった。


 面白がっているのに違いない。


「問われるまでもないですわ。先程、言いましたよね? くだらないお茶会ははやく終わらせたい、と。それに、面倒くさい。このままで結構です」

「リタの言う通りです。それと、リタはどうか知りませんが、少なくともわたしは好みを把握してもらわなくて結構です」

「あら、そうなのね。鈍い義母でごめんなさいね。では、公爵令嬢の分だけお願いします」

「承知いたしました」


 侍女は深々と頭を下げて去り、他の侍女たちがお茶を注いでくれた。


 そして、ディアナのお茶も注がれ、スイーツを楽しむことにした。


 あまり食べすぎると太ってしまうわよね。そうすると、動きが鈍くなる。


 もう少しでバック転が出来るようになるのに、お尻や胸に贅肉がついてしまったら飛んだり跳ねたり出来なくなってしまうわ。


 残念ながら、ついてほしいところにつかないのがお肉。いらないところにばかりについてしまう。


 マドレーヌを頬張りながら、ついついリタとゾフィに視線を送ってしまう。厳密には、二人の胸のふくらみに。


 二人とも美貌というだけではなく、スタイル抜群ですものね。しかも、胸がドーンと出ているだけでなく、形もいい。


 あんなスタイルだったら、男性もおおよろこびするでしょうね。


 もちろん、まだラインハルトに見せたことはない。鍛錬やトレーニングのときは、動きやすいシャツにズボンだけれども、リタとゾフィのような体の線がわかるようなピッタリしたトレーニング用のシャツやズボンは着用しないことにしている。


 だって、三人で並んだら悲惨すぎるから。


 ラインハルトは、いろいろな意味で困ってしまうに違いない。


 この先、ラインハルトとそういうことになったら、真っ暗闇にしてもらわないと。だけど、彼は夜目がきくのよね。


 だったら、いまのうちから布石を打ちまくるべきね。


 というよりか、もしもそういうことになったら、わたしは大丈夫なのかしら?





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