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愛おしすぎる

 皇帝は、心なしかシュンとしている。


 そして、その双子の息子たちもドギマギしている。


 また笑ってしまいそうになったけれど、皇帝がシュンとしている姿がいじらしすぎるのでガマンした。


 それに、すでにわたしの心は決まっている。


 それを伝えることにした。


 少しだけでも強くなった気がするから、それを証明してみたい。


「『大嫌い。死んじまえ』、だと?」


 口を開こうとしたタイミングで、皇帝がつぶやいた。


「もしくは、『娘といってもいい年齢のわたしなのに、そういう趣味の持ち主なの?』とか」

「あるいは、『お父様といってもいい年齢なのに、夫としてみることなんて出来ないわ』とか」

「……」


 リタとゾフィの勝手な推測に、皇帝は打ちひしがれてしまった。


 というか、いまのって彼女たちが思っていることなんじゃないかしら。


「リタもゾフィも陛下を揶揄うのはやめろよ」

「そうだよ。愛に年齢など関係ないさ。たとえ陛下が八十のじいさんだったとしても、愛さえあればなんのその、だろう?」

「いや、シュッツ。それはさすがに無理がありすぎるだろう」

「それで無理なら五十手前も無理じゃないかな、ジーク?」

「……」


 血を分けた息子たちまでそんなことを言いだし、皇帝はますますシュンとしている。


 これが「獅子帝」のほんとうの姿なのね。


 クラウスと思い込んでいたときの彼もカッコよかったし魅力的だった。だけど、いまの彼は彼で可愛くて魅力的である。


 どちらの彼も素敵だわ。なにより、愛おしすぎる。


 いやだわ。わたしったら、ずっと年上の男性、しかも大国の皇帝に対して愛おしいだなんて。


 顔が火照ってきているのを感じる。


「そうか。やはりダメか」


 皇帝がポツリとつぶやいた。


 立派な両肩が落ちてしまった。


「陛下、そんなことありません」


 それを見て、思わず口を開いていた。


「その、わたしも言いにくいのですが、とにかく、そんなことありません。たしかに、ルーベン王国の国王から陛下に嫁ぐよう一方的に告げられました。そのときには、また違う国にたらいまわしにされるんだと諦めるしかなかったのです。ですが、なぜか今回は陛下のことが気になったのです。これまで予備知識を得ようとか考えもしなかったのに、今回はなぜか気になって仕方がありませんでした。ですので、このバーデン帝国のことを知っている人に教えたもらったのです。とはいえ、噂程度ですが。結局、不安になっただけでした」


 苦笑してしまった。


「いまにして思えば、気になったり調べてみようとしたことじたいが何か虫の知らせのようなものがあったのかもしれません。それはともかく、バーデン帝国で陛下、というよりかはクラウス様と出会い、いっしょに旅をするうちにこれまでとはまったく違うと確信しました。いつの間にか、クラウス様に魅了されてもいました。クラウス様に気づかされたり励まされたりしたことが、クラウス様を慕い、想いを抱くようになった要因です。だから、クラウス様と別れることがどれだけつらかったことか。そのときにはわからなかった感情が、別れる直前になってどういう類の感情なの理解しました。もっとも、そのときにはもう遅かったのですが」


 自分でも脈絡なく話をしていると自覚している。だけど、想いを伝えたい。その気持ちだけで口を開いている。そして、言葉を紡ぎだしている。


 クラウスと別れ、ジークとシュッツ、それからリタとゾフィに出会い、クラウス同様あたたかく接してもらえたこと。こちらも驚きだった。意外というよりかは、あまりにもあたたかすぎて信じられないほどであった。

 これが夢なら冷めないで欲しい。というよりかは、夢でなければいいのに。


 そう強く願いもした。


 そして、クラウスとの再会。いいえ。皇帝との対面……。


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