五話 治癒師の意思は固い
次回のところあとがきに書くことにしました。
あと、感想とかどんどん書いて頂けると筆者は喜びます
森の中、治癒師はひたすら逃げていた。夜になった森、しかも新月の日に、明かりもろくに持たずに入って行ってしまったため、入り口をスライムに押さえられた治癒師はどこに行けばいいかもわからず走り回っていた。
治癒師(森中心部の方向は理解していますが、どこを見ても同じ光景、間違えてしまいそうです。はあ、勇者様は今頃何しているでしょうか。もう家に帰って私のことなんか忘れちゃったりして、、、。どっちにしろもう死ぬし、ああ、、、最後に思い出してしまうのがあのボルシチなんて最悪ですね。これが最後の思い出になるくらいなら全力であがきます!!!)
スキル「狂化」発動
スキル「狂化」
魔法が使用不可能、ある程度ダメージを受ける、またはある程度の時間が経つと解除される。ATK(攻撃力)1.5倍、AGI(素早さ)1.5倍。視覚強化Ⅰ思考鈍化Ⅰ
治癒師はこれを逃げることに使用、ある程度引き離したところで「狂化」は解除された。
治癒師「ふう、、、これで引き離せましたかね、、、。ここはどこでしょうか。もっと離れておかないと。念のため回復しておかないと、、、へ?」
何かが聞こえる。よく耳を澄ます。断続的な音だ。まるで地面を蹴るような、、、
治癒師は絶望した。馬だ。馬が走ってきてるんだ。いや、馬型のスライムが。持久力も違う。もう逃げきれないことを覚悟した治癒師は、その場で腰を下ろす。
治癒師(なんでこんなことになっちゃったんでしょう?ああ、最後にあの人に会いたい。勇者様が最後に出てこないだけマシな死に方か。)
スライムは、ゆっくりと近づき、体を広げて捕食しようとした。しかし、体に異常が出始める。体のまとまりがない。まるで溶けていくように地面に広がっていく。形を保つことができない。
??「死んでたりしないよな?大丈夫だよな?それだったら後味悪すぎだろ。」
そこにいたのはダメ勇者だった。
治癒師「ああ、、、あ。」
泣きそうになる。あんなに悪いことをしたのだ。そしてこんなにも自分のために駆けつけてくれてたんだ。きっと死にそうになることもいっぱいあっただろうに。そして治癒師にもう一つ疑問ができる。
治癒師「どうやってスライムが倒せたんですか?!あんなに弱かったのに!」
勇者「毎度ひどいこと言うじゃん。それに、倒してねえよ。まだ生きてやがる。」
スライムは形を作ることを諦めたようだ。そのまま自らの酸を吐き出す器官を表に出し、こちらに向けて広範囲に放つ。
治癒師「危ない!!」
という言葉と同時に酸は勇者に直撃する。しかし、勇者は死んでいない。
治癒師「え?なんで?アイデンティティ失ったんですか?」
勇者は答えることなく核である酸出器官を切りつける。スライムは液体となって地面のシミになった。
Lv UP 勇者 Lv1→Lv2
治癒師「あれ?まだレベル1だったのになんで?」
勇者「俺はあいつの体にこれをかけたんだ。」
そして勇者は木でできたバケツの中の液体を示した。
治癒師「なんですかこれ?」
勇者「石鹸水さ。スライムってのは水を溜め込んだりするんだよ。どこにたまるのかというと、この酸出器官。そんなに溜め込むことはないけれど、外部からの水分はどんどん体が吸ってしまう。凝縮もその原理と一緒だったんだ。体の水分をとばして硬くなっただけ。これをかけることでスライムは水を吸いすぎて凝縮できない、石鹸水で中和された酸はかかっても痛くない。」
治癒師は忘れていた。スライムの常識を。弱すぎるが故に対策もされず、どんどん忘れられていった常識を。そしてあのスライムの魔王と勇者のオチも思い出して二段得した。
治癒師「よく知ってましたね。あんな要らない常識。」
勇者「あー、なんかアイテムないかと立ち寄ったホームセンターでー養殖スライム売られてたから殺そうとして止められて、そこの張り紙に書いてあったレシピの下準備に書いてあってさ、これは使える!と思ってやってみた。」
治癒師「そんな幸運あったんですね。すごい役に立ったじゃないですか。それに、養殖のスライムは魔素の少ない土地で育てられてるので経験値0に等しいですよ。」
勇者「え?そうなの?いやー、食べようと思ってたけどつい切りかかってしまった。おいしかったのか気になるわ~。そしてお前が死んでなくてよかったよ。」
治癒師はその言葉で少し感動する
治癒師(なんでこの人が勇者なのか、ずっとこの人を見てきた。見たつもりになっていた。いつもなよなよしていて志も低い。おまけにすぐ楽な方法を思いつく。でも一度も他人を責めたことがない。誰かのために大きなことを成し遂げられる、そんな人が勇者なんだな)
治癒師「というかよくここがわかりましたね。どうやって私を?」
勇者「え?ここ森の入り口入ってすぐだよ?」
治癒師、必死で周りが見えていなかった。死ぬことを考えていて、どう生き延びようか考えていなくなったのである。ここで死ねば恥であった。
勇者「まあ、レベル上がったし、帰ろうか!」
治癒師「、、、帰りませんよ、、、」
勇者「え?」
治癒師「レベル5になるまで帰らせませんからああああああ!」
恥ずかしさのあまり勇者に八つ当たりする。
勇者(もうやだこの人。)
勇者は真っ黒な天を仰いだ
次回「これ、使える!」