一話 勇者弱すぎ問題
勇者の冒険が今、終わろうとしていた!!
「お前、クビな」
勇者はそう告げる。今まさに勇者はメンバーを一人、クビにしようとしていた!
「そんな,,,なぜそんな急に,,,」
治癒師は自分の今までを振り返る。超難関校である、センギャグマ国立魔法学校を優秀な成績を修めて卒業、その後国指定の一級治癒師に任命されたはずなのになぜこの勇者は自分をクビにしようとしているのかわからなかった。顔もそこらの女性とは比べるまでもないと自負している。
「私がいなくなったら勇者さんは一人になるんですよ!?まだ冒険前で仲間が集まってもいないのに。最初は治癒師が就くことになってるんです!私以上の治癒師なんてこの国中どこ探しても見当たりませんよ!?」
勇者は頷いている。しかし、彼の決意が揺らぐにはまだ足りない。
(なんで私がこんな目に,,,)
「お伺いします!なぜ私を追放しようとしているんですか!?」
勇者は重く閉ざされた口を開き、
「だって、、、、、俺!HP1しかないんだもん!」
そうである。この勇者、歴代勇者の中では最弱のHP1!!ステータスが偏りすぎているのである。ちなみに1であれば防御力がいくらあろうと即死である。その分のポイントはどこへ行ったのかというと、なんと必殺技。どう考えても一発撃ったら反動で死にそうであり、そもそもそれまで生きていられない。溜める時間に死ぬ。この勇者、教会からの嫌われ者であり、逆にこっちのほうが国家を悩ませている。勇者はいくら死のうと復活するし、魔王を殺すまでは彼は勇者なのである。故に、詰み!ほかの国は大体世界をあきらめている!
「最初のほうは待遇よかったのになあ」
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一回目
教皇「まあ、死にましたか。大丈夫安心してください。いくら死んでも生き返れますからね。ネバーギブアップです!」
二回目
教皇「まあ、お帰りが早いこと。あの頃の勇者エルリック様を思い出します。彼も死んでばかりい ましたが、仲間の助けもあってどんどんお強くなられて、、、。焦らずどんどん行きましょう!」
十回目
教皇「さすがに死にすぎでは?大丈夫ですか?最初のところにユニークモンスターとかですかね。えっ、そんなのいない?そうですか、、、まあ、死なないでくださいね」
九十九回目
教皇「あなたほど死んでる人初めて見ましたよ。何をやっておられるのですか!?もう100人目のお客様入っちゃいますよ!こっちはあなただったものの残骸片づけるの大変なんですよ?もう来ないでください!!」
百九十二回目
教皇「欲を捨てて早50年、こんなに怒りがわいてくるとは、、、。もう来ないでください!!お願い!ほんと!!ギブしろギブ!!」
百九十三回目
教皇「魔王は、、、ここにいたのかあああああああああああ!!」
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あれ以来、あの教皇は退職したらしい。今まであの教皇は何人もの勇者を復活させてきた凄腕だというのに。年のせいだろうか。彼はすっとぼける。
勇者「だからお前必要ないって。HP1だったら何を回復できるっていうんだよ?」
治癒師「ほかにもたくさんできますよ!!えーっと円陣回復、防御力アップの陣、全体回復陣、、、、、やっぱないですすいませんでした。 でも勇者様をサポートせよと国王が申しているもので無理なんです。」
勇者「もうやめね?魔王に降伏しない?」
治癒師「もう何言ってるんですか。あなたがそんなこと言い始めたら世界終わりですよ?」
勇者しか魔王を倒す術はないのだ。勇者の称号を持つ者だけがダメージを与えてしまう。降伏なんてしたら、勇者は真っ先に死ぬと生きるを永遠に繰り返すことになってしまう。それを勇者に言うのはちょっとやめておこう。
治癒師「この世界を救えることを光栄には思えないのですか!?あなたは神様に選ばれたんです!きっと魔王を倒す素質は備わっていますよ!」
勇者「神様だって間違いはするよ!そんなことはどうでもよくて、俺の気持ちを考えても見てくれよ。HP1しかないから世界を救えないって知った国民が石とか投げてくるんだよ?お前が死ねば勇者がほかの人に、とか、美女侍らせてそれでも勇者か、とか。何にも悪いことしてないじゃん。あいつら守りたくないんだけど。てか、何?居酒屋とか冒険者ギルドとか俺も行きたいんだよ?でもその度に絡まれて死んでるんだ。どっちかって言うと人間に殺された回数のほうが多いんだよ。」
治癒師「はあ、わかりました。森に行きましょう、まず。」
勇者「聞いてた?話。」
治癒師「いいから行きましょう!あなたそろそろレベル上げないと!最近どんどん魔物が狂暴化しています。死者もかなり出てきているし、何より、この国とほかの国の航路が立たれています。最近の調査では、なりたい職業ランキングの最下位が行商人ですよ!?私たち何使って冒険すればいいんですか!?」
彼女は勇者オタクであった。そのため歴代勇者のセオリーを大体把握、それを今の勇者にも当てはめようとしているとんだ迷惑オタクなのである。
勇者は何も抵抗できぬまま森へと連れてこられた。
次回、「激闘」