そういう存在
かなり遅くなって申し訳ない!!
僕は、リオナに連れられまずは宿に向かった。街の中は様々な屋台やお店が並んでおり、とても賑わっている様子だった。
「何を見ているのだ少年。宿はこっちだぞ。」
「ちょっと!?何をしているんですか。手なんかつながなくても大丈夫ですから!」
「何を言ってるんだ、君は初めてこの街に来たんだから迷子にでもなったら大変だろう。」
「そうですけど、手をつなぐ必要はないじゃないですか!!それに....」
(女の人と手をつなぐなんて、まるで恋人化カップルみたいじゃないか....)
その時リオナと目が合う
「どうした少年?」
「なんでもありません!」
そうしてとっさに僕はリオナから目をそらすのだった。僕は結局宿までの道をリオナと手をつないで行くこととなった。
宿はそれほど豪華ではなく、民家をそのまま宿屋にしたような感じだった。店の人に話をすると意外と素早く契約が済み部屋を貸してくれることになった。お金は無かったのでリオナが立て替えてくれることとなったのだけど。
部屋は単純そのものだが、だからこそ教会にいたころの部屋によく似ていて居心地はとても良かった。荷物を置くと外からノックをする音が聞こえた。
「少年、荷物を置いたら何か食べに行こうじゃないか。」
僕はリオナのその言葉に自分が朝から何も食べていなかったことを思い出す。
「わかりました。今行きます。」
そういうと僕はリオナと共に表通りの屋台に向かうのだった。
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「報告します、王ガイザース。今朝、アイル村に調査隊を向かわせたところ村人は全員死亡したとの報告を受けました。」
男はさらに続ける
「村人一人一人を確認するまでには至ってはいませんが、彼を確認することはできませんでした。まだ生存しているものと思われます。」
「......そうか。」
ガイザース王の低く唸り声にも似た声があたりに響く。
「現在は周辺地域の残り香を捜索中です。発見次第捕獲します。」
「なるべく奴に刺激を与えぬよう確保するのだ。」
「はい、承知しました。」
男はガイザースに一礼をすると素早くその場から退出した。王はそれを確認するとこぶしを強く握り
「どこに行ったのだ....」
そう、呟いた。
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「お、おいしい.....」
「おい少年、普通サンドイッチにそこまで感動するものか?」
僕はリオナのおごりでサンドイッチを食べていた。僕が教会にいたころはほぼ毎日野菜のスープとパンだけだったせいか、味は悪くないのだが、その味しか知らない僕にとってはここにある屋台の食べ物すべてがこの世のものとは思えぬほどにおいしく感じた。
「ま、まぁそんなに喜んでもらえたなら私もうれしいよ」
あはは、というリオナを横目に僕はサンドイッチなるものの味を堪能した。
「ふー、もうおなかいっぱいです。」
「それは良かったよ。」
リオナは満足そうに僕のほうを見た。そんなリオナの顔を見て僕はここに来る間に疑問だったことを聞いてみる。
「リオナさんは、どうしてここまで僕に親切にしてくれるんですか。今朝知り合ったばかりのどこの誰とも知らないやつをどうして...」
リオナは一瞬驚いたような表情を見せるがすぐにいつもの顔に戻り
「それは、私がただのお人好しだからさ。」
あまりにもあっさりとした、まるでそう答えるつもりだったかのようにリオナは言った。
「そうだったんですね。わかりました。でも、もう大丈夫です。これからは僕一人でできますから。」
そういうと僕はその場から足早に立ち去ろうとした。それは、この人にこれ以上頼るわけにはいかないという僕なりの決意だった。もちろんこれから彼女に返さなくてはならないものはたくさんある。でも、それは彼女に頼ってばかりじゃ二度と返せない気がしたからだ。
「どこにいくんだい?」
「これから僕を雇ってくれそうな場所を探しに行くんです。」
くくく、というリオナの笑い声が後ろから聞こえた。
「何がおかしいんですか。」
「いやぁね、君にはそれは無理だと思ってね。」
「ど、どうして無理だってわかるんですか。」
「あのね少年、君は一度自殺をしようとしたんだ。一度生きることを放棄した人間が生きていけるほどこの世界は甘くないんだよ。」
僕はいつの間にかリオナに目が釘付けになっていた。リオナの目はとても冷たかった。
「働いたとしてもまた君は生きるのが嫌になって自殺しようとする。君のことだからね。」
まるで見透かされているような目でこちらをずっと見つめる。
「いいかい少年、一人だといやなことを思い出してしまうかもしれない。」
いやなことを思い出す。それが僕の自殺の原因だった。
「だがな、それを支える人がいると大きく変わると思うんだ。私は、君のそういう存在になりたいんだ。」
リオナがそっと僕を抱きかかえる。とてもいい匂いが僕を包んだ。
これからできる限り多めの投稿頻度を目指していきたいと思う。