第二章 竜の国アウスベルクへ
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遅れてしまいましたがようやく続きを出すことができました。
リオナに連れられ近くの枝に繋がれたケープを発見した。
ケープとは、その力強い走りと水をあまり必要としない利便さから冒険者や商業者などに愛用される小型のドラゴンのような動物で飛ぶことはできない。主に長距離を移動するときや荷物を運びたいときに利用される。性格はおとなしいのだが一度怒らせるとんかなか機嫌が戻らないという繊細な一面もあるためか、愛好家もいるのだとか。しかし...
「なんでこんなところにケープが?」
と言うとリオナは枝に括り付けていた手綱を取り
「これは私のケープだよ少年」
と、説明した。
するとリオナは軽い身のこなしでケープにまたがるとこちらに手を伸ばしてきた。それに応じるように僕も手を伸ばすとリオナの後ろに乗った。小型のドラゴンといっても二人くらいなら余裕で乗ることができる。するとリオナがケープに合図をすると勢いよく走りだした。
自殺をしに来た時も思ったが実際、僕は村から出たことは無かった。いつもは協会で本を読むか庭で
虫や鳥を見ていた。だから、ここまで遠くに来たことは無く何もかもが新鮮だった。ケープが地を蹴
る音、頬を通り過ぎていく風、草のにおい、そのすべてが僕にとっては新鮮に感じられた。
「どうだ?気持ちいいだろ?私も冒険者をしていて思うがこの時間が一番好きだ」
リオナはそう、僕に言った。だから僕も
「はい、とても好きです」
そう答えたのだった。
しばらく走ると、大きな城壁が見えてきた。よく物語の挿絵に出てくるような巨大な石の壁だ。するとリオナがおもむろに、
「少年は竜の王子の物語は知っているか?」
「えっと...はい、その話はもう絵本で何回も読みましたから。」
竜の王子の物語、それはこのあたり一帯に伝わる伝説だ。
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その昔、竜と人は住む世界が違いました。竜は竜の世界で、人は人の世界を生きるよう神様に命じられたのだとか。その掟を守り続けて数百年が経ったある日、竜の国の王子が人と竜の世界を分ける森を散歩していると一人の人間の女の子と出会いました。どうやら父の狩りに同行していたところを迷子になってしまったというのです。そんな女の子に竜の王子は一目ぼれしてしまいました。しかし、竜と人は住む世界が違うため、結ばれることはありません。それを知っていた王子は、無事女の子を国まで送り届けました。ですが、王子その名も知らぬ女の子のことを忘れることはできませんでした。
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「で、確かそのあと竜の王子が国を抜け出して見事女の子を探し出し、結婚したって話じゃなかったですか?」
「うむ、それで合っているよ少年」
「でも、それがどうしたっていうんですか」
「実は、その竜の王子が今から行く国の王様なんだよ」
「そうなんですか....えぇ!?」
一瞬ケープから落ちそうになるのを必死で耐えると
「その話って今から数百年以上前の話ですよね、しかもただのおとぎ話なんじゃ...」
「そういう噂だよ噂。今から行く王国アウスベルクは竜の一族が国を治めているって話だよ」
「そ、そんなことあるはずないじゃないですか。そもそも竜が人の姿になるなんてことありえませんよ」
「そんなこともないぞ、竜の魔力からすれば人の姿になるのは造作もないはずだ」
「は、はは、まさかそんな...」
「それに、今の国王は竜の姿になり他国の攻撃から国を守ったという話もある」
「ほ、ほんとですか...」
「信じるかどうかは君次第だよ。...そろそろ門だ、いったん降りるよ」
近づいてみるとかなり大きい門だった。すると、
「よー、お客さん。どうだった、うちのケープの乗り心地は」
と、いかにもにも怪しそうなオヤジが近づいてきた。
「とてもいい子だったよ。育て親の技術の高さがよくわかる」
「よせやい、褒めても何も出ねぇぞ」
「いいケープをありがとう。これ、今回の代金だ」
「へい、毎度ありがとうございました。」
そうオヤジは元気よくあいさつするとお金の入った袋を鞄にしまった。
「あのケープ、借り物だったんですね」
「そうだな、あそこにはいつもお世話になっているよ」
そうなのか、と思っているとリオナがこちらに向き直り僕に目を合わせて言う
「さぁ少年、ここが竜の国アウスベルクだ」
次回からはアウスベルクを散歩したりします。ギルドも登場したりします。