~序章~
ゆるく投稿できたらと思います。評価次第で次を上げる予定です。
プロローグ
「.........」
その少年は、これから死のうとしていた。頭の中で幾度となく恐怖心を払拭するような暗示をかけながら。自分はこれから目の前の谷へ飛び降りてそのまま死ぬ、それだけの事.....大丈夫大丈夫。少し痛いだろうがそれも一瞬だって。そんな言葉を自分にかけながら少しでも怖さを紛らわすのであった。
もともと生に対する執着もなかった。自分が死んだところで悲しんでくれる人もいない。こんな世界にどんな未練があるというのだろうか。
(それに、もうすぐあの人に会えるんだ...)
そう思うと、自然とさっきまでの恐怖はなくなっていた。
(.....よし)
少年は目を閉じ一歩その場から足を踏み出した......。
第一章 空飛ぶ僕と空跳ぶ君
体はまっすぐに下へ降下していた。それはまるで永遠のようにも感じられた。冷たい空気が僕の頬を通り過ぎていく感触が心地いいとさえ思えた。その時だった.....
ドサッッ
といった音が聞こえた。
(ここは....地面か?)
しかし、自分は死んでいないどころか痛みもない。さらにもう一つ奇妙なことがあった。それは風向きが変わったのだ。下から上ではなく次は横から風が吹いているのだ。
「ギェエエエエエエエエエ」
その鳴き声で少年は閉じていた眼を勢いよく開けるのだった。
「ギエエエエエエエエエエ!?」
自分でもどこから出たのかわからないほどの叫び声が谷中に響き渡った。それもそのはず、今自分は空を飛んでいるのだ。しかもこれは.....
(ドラゴン?)
艶のある茶色の鱗に両側には巨大な翼、そしてその翼には巨大な爪がついていた。それは誰もが絵本や劇などで見たことのあるドラゴンそのままだった。その巨大なドラゴンは僕を乗せて、さっきまでいた草原の上空を飛び回るのだった。
あまりの突然の出来事に僕はさっきまで無理やりかき消していた死への恐怖心が一気に戻ってきたのだ。そして、ただ死にたくないがために必死にそのドラゴンにしがみつくのであった。
「やばいやばい、これ死ぬ奴だよね?落ちても死ぬし助かってもこのドラゴンに殺されるしなぁ.....ほんとに無理?無理ですか?まぁ、最期にドラゴンの背中に乗れたしいい人生だったなぁ...」
むしろ笑えてきた、あぁ笑ってやるさ、どうせこんな人生。
そんなとき下に人がいるのを発見した。遠くてよく見えないがソロの冒険者のようだ。諦めかけてはいたがそれでもこんな死に方をしたくはなかった僕はその人に向かって大声で叫んだ。
「じぬうううううう、たすけ...」
その時、ドラゴンが大きく旋回したため声はここで途切れることとなった。しかし、声が聞こえたのかその冒険者と目が合ったのだ。
(助けてくれ....)
心の中でそう願った時だ、先ほどまで冒険者がいた場所には何もなくただ草原が広がっているだけだった。逃げたのか...そう心の中では思った。確かにソロの冒険者がドラゴンを一人で倒すなんて夢物語...ここはおとぎ話でもなく現実なんだ。かなりの高ランカーでもない限り倒すのなんて...。
その時、急に風が止まったような気がした。そう、ドラゴンが突然飛ぶのをやめたのだ。いったい何が起きたのか理解が追い付かなかった。ドラゴンは羽を動かすことをやめてそのまま下に....
「ぬおおおおおおおおお!?」
ドォオオオン
という音がしたと思うとそこは地面だった。
「大丈夫?生きてる?ほんとは生きてるんでしょ、ほら、起きて」
「ううん....」
まだ実際あの時の浮遊感が体に残りしばらく放心状態であった。
「まさか私の獲物を横取りしようなんて強欲な冒険者もいたものだなまったく....」
そうすると僕はその冒険者に肩を貸してもらい近場の岩陰で休憩をした。
「あ、あの...ありがとうございます」
僕はその冒険者から水をもらい一息ついた。よく見るとその冒険者は女性だった。
「どう?落ち着いた?」
「はい、おかげさまで。それで、どうやってあのドラゴン倒したんですか。」
「ちょうどいい高さに来たから私が跳んでそのまま首を切ったのさ」
「...はい?」
「それにあれはドラゴンじゃない。鳥だよ」
「鳥なんですか!?」
よく見てみてもやはりドラゴンのようにしか見えない。少し小ぶりにも見えるが...
「あれはドラゴンに扮しているだけの鳥だな。急所が違う。ドラゴンはここだ」
そう言って自分の胸をトントンと叩く
「でもあの高さをどうやって、しかも一太刀で...」
「さぁ、私は自分のことをはなしたよ。次は君だ...そうだな、まず名前を聞かせてもらおうか?」
「え?あ、はい、レンって言います」
「うむ...いい名前だな、私の名はリオナだよろしくな少年」
「少年って...自己紹介した意味がないじゃないですか!そもそも僕はもう18歳で...」
「そうか、それは悪かったな少年よ」
「直ってないし....。もうそれでいいですよ」
なぜかもうこの際呼び名などはどうでもよくなってきた。
「それはそうと、なぜ私の獲物の上に乗っていたのだ?」
「別に乗りたくて乗ったわけじゃないんですよ」
「じゃぁ...なぜ...」
あまり聞かれたくはなかったが命の恩人である以上話さなくてはならない気がして僕はいきさつを話すことにした。
「自殺しようとしたんですよ。あの谷から飛び降りてね」
「僕はいまは廃村になった小さな村の教会で育ったんですよ。家族がいなかったから孤児として」
その村はとても小さな村で家族がいない子供なんて僕だけだった。村のみんなは子供だけを置いて夜逃げするとは許せない。とか、顔も知らない僕の両親を罵っていた。
「教会ではとても親切に育ててくれました。貧しかったですが僕をここまで育ててくれたことは感謝はしているんです。」
でもある日、事件が起こった。それはある日の夜、突然外が自身のように動き出したかと思うと突然意識がなくなったのだ。長い闇が何時間も身体にまとわりついた。永い眠りから目を覚ますように瞼を開けるとそこは何もない荒野だった。
「え....?」
そうやって声を漏らすことしかできなかった。ひどく痛む頭を押さえながらあたりを見渡すと
「シスターーーーーー!!」
僕より少し離れたところにシスターが横たわっていたのだ。
「シスター!起きて!シスター!!」
しかし、シスターは息をしていなかった。
それからはただ何もない自分の育った村を見渡しながら泣くことしかできなかった。
「そのあとです、僕が自殺しようと思ったのは。もちろんこのまま生きようとも思いましたけど...」
シスターの顔を思い出すたびに生きていくのがつらくなってしまったのだ。
「そして、死のうとした時に偶然あなたの獲物に助けられたんですよ。」
リオナに一通りを話した僕は、もう一度水を飲んだ。
「そうか....」
とリオナは僕に一言言った。そして
「生きていてくれてありがとう」
「え?」
突拍子もないことを突然言われ、困惑していると
「いや、もし私がそのシスターなら君にこう言っていただろうなと思ってな。」
「でも...」
彼女...リオナは泣いていた。少し、ほんの少しだが涙を流して。
「どうした?私の顔に何かついているか?」
「い、いえ、何でもないです」
リオナは一度首をかしげるとあくびをして
「よし!このまま街にいこう。そこでまず飯を食べないとな。」
そう言って半ば強引に僕の腕を引っ張る。
「いたた、何するんですか。」
「どうせこのまま放っておいてもまた自殺する気だろ?ならこのまま私が引き取る」
「そんな、身勝手な」
「善意というんだよこういうことは。ほーら、早く歩いて」
ぼくはそのまま街に連れていかれるのだった。
一日で書こうと思ったら結構大変ですね。次からも頑張らせていただきます。