拳の4
ギルドに向かった俺は、再びアレリアと出会った。これは運命なのかと声をかけるが、俺の後ろから跳び蹴りが。どうやらアレリアの知り合いらしく、和解の為に同行を提案した。内容を教えてやるが、初心者には無理だと別の物に強引にかえさせられてしまう。力を使うのは怖がらせるかな~と思った俺は、普通に雑魚敵との戦闘を繰り返しレベルを上げて行く。レベルは俺に力の感覚を与え、普通に行動できるぐらいには落ち着いて来ていた…………
俺はそれからも二人に同行し、順調にレベルを伸ばしている。
レベルが上がるにつれて、力の使い方が楽になって来た感覚があった。
もう扉も普通に掴めるし、無理に力を入れなければ物を壊したりもしなくなっている。
ちなみに強敵三体を倒したといっても、山ごと倒したから経験値は入っていない。
「うん中々成長したし、今日はもう少し強い所に行きましょう!」
「そうですね、テンマさんも戦いになれてきましたし、いいかもしれませんね」
「おう、任せてくれ!」
二人にそう言われ、これがチャンスと了承した。
俺達が狙うのは、ゴブリンと呼ばれる、知名度があり過ぎる有名なやつだ。
今の俺達なら充分に、いや普通に勝てる相手である。
特徴として人の落とした剣やこん棒などを持ち、夜中にひっそり家畜などを襲う臆病な奴だ。
人前には滅多に出て来ず、町中で襲い掛かって来ることもない。
もし子供に見つかっても勝手に逃げて行くだけで危険度もない。
人を襲えば本気で潰されるのを知っているのだろう。
依頼主は牧場を持つ農家の人達で、定期的な駆除を行っているらしい。
だが完全な殲滅は出来ていない。
ちょっとした農家の被害と、低額の依頼料、それで逃げ続けるゴブリンを全部退治するのは不可能なのだ。
今回向かう洞窟もゴブリンの巣なのだが、逃げる為に幾つもの通路を作っている。
やれる事といえば、ちょっと痛い目に遭わせて散らすぐらいで、また何週間かすると戻って来るという不毛なものだ。
「ここかぁ」
「はい、ここです。無理せずに行きましょうね」
「迷わないようにしなさいよね。探すのに苦労するんだから」
「はいはい、知ってます知ってます」
場所としては山肌剥き出しのはげ山の中央。
上下左右どこにも何にも一切なんの植物も生えていない。
よくゲームとかに出て来そうな、カクカクした鉱山の様な場所。
その場所に目立つ穴が開けられている。
穴の中を覗いてみると、地面にはトロッコの通れそうなレールが作られている。
思った通り廃鉱山なのかもしれない。
その中にゴブリンが住みこんでしまったのだろう。
「じゃあ私が先に行ってあげるから、二人は後について来て」
そう言ったのはリリリエである。
そろそろ目立った活躍をしたい所なのだが、逃げるゴブリン相手に真ん中に居ては何もすることなくおわってしまう。
ここは一つアピールをしなければ。
「まあ待てよ、そろそろ俺に任せてもいいんだぜ?」
「ゴブリン相手に強がってるんじゃなわよ。あんなの雑魚なんだから、誰だっていいのよ別に」
「じゃあ俺でもいいじゃないか。俺が前に行ってやるよ」
「あんたがぁ?」
「いいじゃないですかリリリエ、相手が相手ですからお任せしても良いのでは?」
「え~、後で調子に乗られたら嫌だし」
なんか露骨に嫌な顔をされている。
そんなに俺が嫌なのか?
「乗らない乗らない乗らない!」
「分かったわよ、じゃあ勝手にすれば。その代わりぜ~~~ッたいに助けてあげないからね!」
というわけで、俺が先頭を進みだした。
リリリエは俺が目を合わせようとしても目をそらしてしまう。
そんなにも俺が嫌なのか?
ただちょっと声をかけただけなのに、モテたいと思うのは、男の子全体の意思のようなものだぞ。
いや、違うんじゃないだろうか?
もしかしたら自分が声を掛けて貰いたかった、これではないだろうか?
美人ではある、がアレリアの影に隠れてしまいがちなリリリエだが、顔を見るとやっぱり美人である。
これはこれで有なんじゃないだろうかと、考えを改めた。
「リリリエ、どうやら俺は君の事を好きになってしまったようだ。この依頼が終わったら一回デートしてくれないだろうか?」
「あ~ん?! 何でこんなタイミングで変な事を言ってるのよ! 私を揶揄って遊んでいる積り?!」
「あれ、テンマさんって私に気があったんじゃ? あれぇ?」
二人が混乱してしまったらしい。
リリリエは怒り、アレリアは悔しがっているという感じでもなく、普通に不思議がっている。
もう少し悔しがってくれた方が嬉しいのだけど、そこまで好意的に見られていなかったのだろう。
「二人共勘違いしてはいけないよ。俺の体は一つしかないが、どちらとも本気で付き合おうと思っているんだ! 愛という物は無限大だからね!」
「なんというか、あなたは駄目な人ですね」
「死ね! 今直ぐ死ね!」
「はぁ、他の男は手を変え品を変えて女の子を落とそうとするのに、俺は正直に打ち明けているんだぞ。なのに何で分かってくれないんだ。なんだよ男女の機微って、そんなの分かる訳がないだろう。やっぱり異世界でも俺は理解されないんだろうか」
「あんたは悪い人間じゃないかもしれないけど、やっぱりただの馬鹿よ! というか異世界ってなに?!」
「う~ん私もそう思います」
「批判はどうでもいい。で、デートはどうなんだ二人共、俺は本気で言ってるんだぞ?」
「まだ言ってるのあんた。私達とデートをしたいって言うんなら、この山に住むと言われる伝説の怪物でも倒して見せなさいよ! 山の頂上に巣食う黒煙食いの魔獣をね!」
「あれ? リリリエ、私も巻き込まれていませんか?」
「よし乗った! 絶対、約束だからな!」
怖がらせるかもと封印した力だが、デートが出来るならと俺は力を解放する。
俺は右腕に力を込めて、思い切って天井に振り抜くと、ドゴーンと大きな音を立てて周囲の天井が消失した。
天井からは青空が見えて、周囲数メートルは何も無いから崩れる心配もない。
「…………」「…………」
二人とも驚いて声も出ない様だ。
「その魔物はたぶん倒した、と思う。これでデートはOKだよな」
「……え~っと、何が起こったのかわからないのですけど、何かなさったんですよね?」
「えっ……何? え? 何したの?!」
「うん、じつはこの世界に転生するときにチート能力を貰ったんだ。だから俺は、この世界の誰より強い(力が)」
「う、嘘じゃないようね」
「ええ、確かに……」
『そういう事は最初に言って!(ください!)』
何故か俺は怒られて、山を壊したら駄目とか色々言われてしまった。
後で思ったのだけど、この力を見て怖がらないとは、良い仲間なのかもしれない。
才牙天真(男主人公)
アレリア(同行者1)
リリリエ(同行者2)




