拳の3
圧倒的な力のみを手に入れてしまった俺は、思い切って足を踏み出すと、強烈な速度で町の前に到着した。そこで出会ったリイリアさん(門番)に、俺は同情されて泊めて貰えることとなる。ギルドの場所を教えられ、軽く向かおうとするのだけれど、途中で女の子が襲われていた。助けるチャンスと向かってみるも、この力で触れたら相手は普通に死にそうなのである。ただのナンパ男にそこまでするのは駄目だと思い。俺を殴れと叫んだのだった。相手はやる気をなくして去って行き、女の子も軽く挨拶して去って行くのだった。
女に逃げられた俺は、当初の予定通り仕事斡旋業者へと向かった。
妙に厳つい男や強そうな姉ちゃんが、ガハハと笑い合って腕組みしたり、ナンパしたら殴られたりとか色々だ。
俺が入ろうとも誰も気にしないし、相当煩く騒ぎ合っている。
中に入って奥を目指し、適当に三枚の依頼書を見た。
受けたのは今出ている中では中位クラスの討伐任務の三枚で、デッドスプリガン、アックスビースト、ウォー・キング・リザードを狙う事にする
その強さは知らないが、俺の一撃で倒せないほどだとは思わない。
楽勝だと高を括る俺に、さっき助けた女が声を掛けて来た。
「あの、先ほどはありがとうございます。それで、あの、失礼ですけど、あなたではその依頼は無理だと思いますよ?」
一応俺を心配してくれているのだろう。
この人がこの場に居るのが不思議だが、まさか冒険者だったり?
それなら同行してもらって、俺のかっこよさを見せつけるのもありだろう。
「えっと、君はもしかして冒険者なのかい? 俺は初めてだからちょっとわからなくってね。良ければ教えてはくれないだろうか?」
「えっ、私もそう詳しくは……あ、私アレリア・ヴィオラって言います。ごめんなさい名前も名乗らずに」
「いや、気にしないで、俺も名乗っていなかったね。俺は天真、テンマでいいよ」
よし、さらっと自己紹介が出来た。
ここからが本番だぞ!
「それでねアレリア、良ければ俺と一緒にパーティを組まないかな? 仲間が居ないと戦いが辛くなるかもしれないからね。そうだ。君の得意な事を教えてくれないか?」
「え、私はまだ行くとは……」
「大丈夫、俺と君が居ればきっと余裕で戦えるよ。さあ行こう、俺達の未来の為に!」
「えっ、え?!」
俺は彼女の手を……掴めないじゃないか!
もし手が潰れたら目も当てられんぞ!
伸ばした手をワキワキさせていると、後ろの方から床を走る足音を感じた。
「こんの、ナンパ野郎!」
「ぐおおおおおおおおおおおお!」
女の声と共に、俺の後頭部に痛みが走る。
どうやら蹴られたらしく、頭を押さえるのを必死に我慢し、手を顔の前で止めている。
自分の頭を潰してはどうにもならないし。
俺の力をパーセンテージで減らせるアイテムが欲しい!
「リリリエ、私別にナンパされていた訳じゃ……」
「えっ、そうなの? ……ごめんね!」
「人を蹴り付けといて、ごめんねじゃ……」
俺が顔を上げると、そこにはやはり美少女が居た。
活発そうな黒髪の子で、たぶんアレリアの知り合いとか友達なんだろう。
「じゃあ俺の依頼を手伝ってくれたら許してあげるってのはどうだろう? もちろん君が良ければだけどね」
「……依頼内容を先に教えて貰いましょうか」
「ああ、えっと……」
俺は改めて依頼の内容を伝えると、二人の顔がドン引きしていた。
たぶん相当強いのだろう。
「テンマさん、やっぱりそれはやめた方がいいんじゃないでしょうか? 初心者がポンと倒せるほど優しくありませんよ?」
「マジあり得ないわ。あんた自殺志願者なの? そんなに死にたいのなら一人で行って! 私達をまきこまないで!」
「あの、やるなら手順を踏んで倒せる物から行きましょう。それなら私達も同行できますから……」
俺なら勝てると思ったのだけど、なんか同情されてしまった。
しかしこの二人と同行できるというなら、弱いものから順にやるのも悪くないだろう。
「やっぱり無謀だったかな? じゃあ依頼内容は任せるから、俺も同行させてもらえないだろうか」
「そ、それならいいですけど……」
「ええ? こんな初心者連れて行くの?! 私達の命の方が危なくなるわよ。やめときましょうよアレリア!」
「でもさっき助けられちゃったから、一応お礼も兼ねて……」
「はぁ? こんな変な奴に助けられたの? ……う~ん、今回だけは許してあげるから、私達の言うことを絶対聞くのよ?」
「ああ、約束しよう。その代わり使えると分かったら今後も仲間として頼むよ」
「安心しなさい、そんな未来には絶対に、絶対にならないから!」
「ははは、そんなことないってー!」
俺は二人に同行して魔物討伐に向かうが……
どうもかなり嫌われてしまったらしく、警戒されているらしい。
それでも一緒に行けるならまだチャンスはあるだろう。
俺の絶対的な力を見れば……
見れば……
……
「そんな力があったなんて……あんた私達を騙して何をするつもりだったのよ!」
ってもっと警戒される気がしないでもない。
ある程度実力を隠して苦戦した様子をみせつつ小指で倒す。
これで行こう!
もし二人がピンチになったら、その時こそ俺の本来の力を解放する時だ。
「この辺りならいいでしょうか? ここで陣を張るから、リリリエは魔物を引き寄せてね」
「まっかせてー!」
どんな魔物が来ても全部倒してやるぜ!
そう意気込んだ俺だが……
「今ですテンマさん」
「ほら、もう随分弱っているから、サッサと止めをさしなさい!」
「そ、そうだね」
ピンチなんて訪れなかった
魔物は本当に初心者がかる様なもので、小さな動物っぽい奴や虫っぽい奴、それをおびき寄せて何事もなく二人の力で狩りを続けている。
前衛にはリリリエが剣を振り、後衛はアレリアが回復と攻撃魔法を担当していた。
俺はというと二人の言うことを聞いて、殆ど動けなくなったような奴に殴ってる振りをして軽く小指をぶつけるだけだ。
こんな感じでは、いくら待っていても俺の良い所は見せられない。
その間にも三レベルほどの力が上がり、一応成果はあるのだが、ほとんど作業レベルの動きである。
ハッキリ言って飽きる、飽きるのだ。
だが言う事を聞くと言った手前、意見をするのも躊躇われる。
「何を油断しているの?! ちゃんと集中しないと危ないんだからね! しっかり前を見て敵の動きを見極めなさい!」
「ああ、はい……すみません」
それから日が落ちるまで作業が繰り返され、俺のレベルは五にまでなっていた。
しかし力の値を確認しても、下一桁が九増えただけである。
まあ見えないほど先にある数値がどうなっているのかは分からないが、百億ふえても一兆増えても代り映えしないだろう。
「もう日も暮れそうですから、二人共今日はお終いにしましょうか~」
「うんそうね、弱いながらも充分稼げたと思うし、いい感じじゃないかしら。まああんたも良くやっていたわよ。誉めてあげる。この調子なら明日も手を貸してあげてもいいわよ。ちゃんと私達の言うことを聞くのならね!」
俺は悩んだ。
美女二人と冒険するのは嬉しいが、このまま続けても作業が続くだけだ。
「じゃ、じゃあお願いします」
それでも俺は二人と居ることを選んだ。
これ以上の美女と出会えるチャンスなんて滅多にないのだから。
二人と別れた俺は、レイリアさんの家に帰っていた。
「ただいまー」
『おかえりなさい』
慎重に扉を開けた時、見えたのはピンク色の世界だった。
二人共裸ではないのだけど、肩を抱き合ってイチャイチャしている。
見せつけてやろうぜ的な雰囲気を醸し出して、軽いキスとかしている。
ここに泊まるのは無理だと俺は再び扉を閉めると、夜のとばりを走り出す
「こうなったら当初の予定通り、あの三体をぶっ倒してやる!」
一つの山がなくなったのは、それから暫く経ってからのことだった。
才牙天真(男主人公)
アレリア(同行者1)
リリリエ(同行者2)
レイリア(今日の家の主)




