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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第三章~王都~

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72 ダルク公爵夫人の店

 ダルク公爵夫人の店は、高級な旅宿やバーが建ち並ぶ貴族街の大通りから一本外れた小さな通りの奥にあった。


 白い石壁に黒に近い焦げ茶色の扉と窓の二階建ての建物で、表向きは茶葉の専門店だが併設されたカフェで選んだ茶葉を楽しむこともできる。

 小物系の雑貨も取り扱っており、昼前である今の時間帯は雑貨売り場の方が賑わっているようだった。





「あ、可愛い」


 雑貨売り場の奥にある二階へと続く階段へ向かう途中、思わず足を止めた私の視線の先に、ガラスで作られた猫の置物があった。


 丸くなって眠るハチワレの黒猫の頭の上に小さな白い花がちょこんとのっている。

 そんな、なんともほっこりする一品だ。

 大きさは片手の手の平の上にちょうど収まる位。猫の下に便箋が敷かれているので、おそらくペーパーウエイトだろう。


「そちらの商品は猫好きのお客様に人気の品でございます。お時間を頂く事になりますが、猫の色や柄、花の種類を変更してお客様だけの特別な品に変更することも可能です」


 そう説明してくれたのはこの店の支配人のローデリックさん。


 白髪まじりの黒髪に焦げ茶色の瞳。彫りの深い顔には皺が幾つも刻まれてはいるが、背筋がピンと伸びた立ち姿からは老いを感じない。

 品のある優しげで落ち着いた老紳士って感じの人だ。


 そんなローデリックさんに「素敵ですね(でも買わないよ)」と返すと、ローデリックさんは「有り難うございます」と微笑み、どちらからともなくその場を離れた。


 にゃんこは気になるが今日の目的ではない。

 あと、結構高い。にゃんこの置物以外の商品も――物にもよるが――若干高めの設定だ。

 とはいえ庶民には手が出せないというほど高い訳でもない。

 気軽に買える物ではないが、誰かへのプレゼントや自分へのご褒美には丁度良さそうだ。


 それにしても……と、ローデリックさんの後に続きながら改めて周囲の商品に目を向ける。


 淡いピンク色のリボンが付いた小物入れ、細かな細工が施された携帯用の手鏡、いい香りのするアロマキャンドル、繊細なレースのハンカチ、ぽてっとしたフォルムが可愛らしい白い陶器のティーセット、温もりを感じさせる木の人形、可憐な花のイラストが刷られたメッセージカード、etc……。


 これぞまさしく乙女の世界。

 内装も淡いクリーム色やピンク色のパステルカラーで統一されており、お客さんもフリルやレースが多めのロリータファッションのお嬢さん達ばかりだ。


 ちょっと意外だった。

 ダルク公爵から夫人が手掛けているのは、茶葉や女性向けの雑貨を主に取り扱っている店だと聞いてはいたが、まさかここまで乙女チックなお店だとは思わなかった。

 ダルク公爵夫人に会ったことはないが、聞いていた話から男勝りの豪快な美女を想像していたので、取り扱っている商品もシンプルで使い勝手の良い実用的な品だとばかり思っていた。


 とはいえキリッとした迫力美人が実は可愛い物好きでした。なんていうのは結構よく聞く話だ。おそらく公爵夫人もそうなのだろう。


 だだ、店内の様子からみてソラが欲しがっているナイフの直しに使う革は置いてなさそうだ。

 ここでの買い物はさっさと終わらせて貴族街にある武器屋に行こう。そう思いながら螺旋階段を上り二階へと足を踏み入れた。


 そして私の目は点になった。


 赤。


 赤。


 赤だ。


 壁と天井が真っ赤に塗られている。

 そしてその壁一面に所狭しと飾られた大量の武器。特にナイフ等の近接武器が多いようだ。

 客はいない。

 ただ、カウンターの奥にいるでっぷりとした体型の、目付きの悪い赤いモヒカン頭の男が、何かを削っている『ガリ、、、ゴリ、、、』という不気味な音だけが室内に響いている。


 私は思った。


 ――――この世界にもモヒカンってあるんだ。


 いや、違う、そうじゃない。


 私は思わず取って返し、階段の上から1階を見下ろした。そこには乙女な世界が広がっており、可愛い物に囲まれ買い物を楽しんでいるロリータなお嬢さん達がいた。


 よし。夢ではない。癒される。


 ゆっくりと振り返る。


 赤い壁一面の武器。ガリゴリと何かを黙々と削っている目付きの悪いモヒカン。


 よし。夢ではない。癒されぬ。


 脳内に『お姉さんのお店ってどんなお店なんですか?』と聞いた私に『まぁ……あれです…………姉のような店です』と虚ろな目で答えた副隊長さんが甦った。


 ――――ナ、ナルホド。


「二階では武器を取り扱っております」


 戸惑っている私に気付いているだろうに、何事もなかったかのように説明を始めるローデリックさん。

 さすがです。

 でもこの赤く染め上げられた武器ばかりの部屋で上品に微笑まれても、サイコな香りがするだけである。

 こわいです。


 そしてひきつった愛想笑いをしている私をよそに、ソラがローデリックさんと会話を始めた。珍しい。


「ナイフばっかだな」

「当店の主人はナイフを好んでおりますので」

「……集めてんのか?」

「いえ。使用するためです」


 ――――え゛!? 公爵夫人が!? 使うって……何に? いや、誰に!? も、もしかして…………。


「ダルク公爵にか?」


 ――――ちょっ!? ソラ君!?


「いえいえまさか。魔物にですよ」


 その返答に「え?」と私とソラの声が重なった。


「お貴族様が魔物と戦うのか?」

「おや? ご存知ありませんでしたか? 公爵閣下のカードをお持ちでしたのでてっきり……」


 ローデリックさんは少し考えたあと、ややあって口を開いた。


私共(わたしども)の主人は現役の冒険者でもありますから」


 「え!?」と再び私とソラの声が重なった。

【後書き】

一階……ベル○ら

二階……北斗の○

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