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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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61 条件と覚悟?

 結論からいうと私とソラが第7部隊の宿舎に住むという件は条件付きで許可が下りた。


 条件は3つ。


 まずひとつ目は私達が暮らす部屋を独立させること。

 これは男性ばかりの宿舎に子供とはいえ異性が暮らすのは問題があるのではないかという意見が出たからだ。


 とはいえこの問題は直接二階から出入り出来る外階段を設置し、緊急時以外はその階段を使用して出入りすることを条件に落ち着いた。


 これは私が子供だから許されたというよりも、この世界の考え方によるものが大きい。

 意外に思われるかもしれないがこの世界には性差による偏見があまり無い。

 その理由は種族により身体能力に大きな違いがあること、そしてなによりも『スキル』という概念が存在することによるものだ。

 性別よりも持っているスキルが重要視されるこの世界において、性的な差はあまり意味がないのだろう。

 

 これは庶民だけでなく王侯貴族も同じだ。

 そのため女性の王や公爵も存在するし、商人や職人として名を馳せている女性も大勢いる。もしかしたら現代日本よりも女性の社会進出は進んでいるかもしれない。


 とはいえ性差別の代わり――代わりというのもどうかと思うが――の種族による差別があるので素直に感心は出来ない。

 それに性差による偏見も全く無いわけではないし、貞操観念も不貞行為による刑罰も当然存在する。


 私が宿舎に住むことが許されたのは、私がまだ成人していない子供だということも勿論だが、そういったこの世界独特の考え方もあったのだろう。

 あとは錬金術のスキルを持っている私が強く希望したことと、そしてなによりも保護者である師匠さんが認めていることが大きく影響したのだと思う。


 もうひとつの条件は宿舎に住む期間。簡単に言ってしまえば宿舎に住めるのは成人するまでだ。

 これに関しては問題ない。

 もともとソラが成人するまでに自活できるようになっておく予定だったし、ソラが正騎士を目指さないと決めたなら成人するのを待たずに出ていくつもりだったから。

 なので宿舎に住むのはポーションの契約が終了するまでの3年間とすることでこの問題もクリアした。


 そして最後の条件。

 それは上級貴族の後ろ楯を得ること。


 師匠さんだけでも十分――というかこれ以上の後ろ楯は王族くらい――なのだが、医師である師匠さんではなく貴族の後ろ楯もあった方が良いそうだ。やはり第7部隊と一部の貴族との確執は大きいのだろう。


 私の知っている上級貴族はグリシャさんだけなのでお願いしようと思ったのだが、フロック家は止めた方が良いと役所のお姉さんだけでなくグリシャさん本人にも止められた。

 獣人の保護を唱えているフロック家をよく思わない貴族が王都には多いのだそうだ。


 とはいえ私に貴族の知り合いなんている訳がない、さてどうしたものかと困っていたら騎士達と役所のお姉さんの視線がひとりの人物に集まっていることに気が付いた。


 皆の視線の先にいるのは渋面の副隊長さん。

 副隊長さんは暫しの沈黙の後に大きな、とてつもなく大きなため息をひとつ吐き


「………………分かりました、私の義兄を紹介しましょう」


 もの凄く嫌そうな顔と声でそう言った。

 基本、笑顔を絶やさない副隊長さんが不快感を隠そうともしない。お義兄さんと仲が悪いんだろうか?


「副隊長さんのお義兄さんですか?」

「……そうです。実姉は公爵家に嫁ぎました。義兄は獣人の件に関しては中立の立場を貫いていますから、問題ないでしょう」


 は? え、公爵? 公爵って確か貴族のトップじゃなかったっけ? え、副隊長さんのお姉さんって公爵夫人なの?


「義兄は現王の補佐もしているとても優秀な人です。領民の声に耳を傾け、異種族や庶民だからといって差別もしません。貴族としての誇りも持っています。――昔は色々あったようですが、姉と結婚してからは問題も一切起こしていません。子供も3人いて夫婦仲も良好です」

「……」


 なんか凄そうな人っぽいが問題はなさそう、というか、かなり良さげな人なんですけど?

 なのになぜ副隊長さんは渋面なのだろうか?

 あ、もしかして大好きなお姉ちゃんを取られた的な? でも、なんか、……違う?


 訳が分からずに困惑していると、副隊長さんはもう一度大きく息を吐いた。そして難関に挑むような強い視線を私とソラに向けて言った。


「…………二人とも、覚悟しておいてください」

「は?」


 覚悟? 覚悟って…………何に?





 数時間後、私は絢爛豪華な公爵家の屋敷の一室で一人の男性と対面していた。


 シミひとつないキメ細かな白い肌に、白銀にも見える金糸の髪、同色の長い睫毛に縁取られた美しいアメジスト(宝石)の瞳が神秘的な光をたたえている。

 フカフカのソファーにゆったりと腰掛け、優しげな微笑みを浮かべている男性の名は『オーレリー=ヴィ=ダルク』、35才。ダルク公爵家、現当主、その人だ。


 そう、ダルク公爵は絶世と言っても過言ではないほどの美貌の持ち主だった。


 ダルク公爵はアイボリーのスーツを身に纏い、長い足を優雅に組んで一目で高価と分かる茶器に注がれた紅茶を上品に飲む。


 その姿はとてつもなく美しく、そして、彼は、とてつもなく――



「私はその瞬間恋に落ちました。そしてエヴァに、私の妻となる女性に(ひざまず)き、切願(せつがん)しました」



 とてつもなく――――。










「『もっと踏んでくれ!』……と」



 ――――ブッ飛んでいた。

【後書き】

ハル「とてつもねぇ……」

ソラ「……」

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