さみしくなんかない。それどころじゃない。
「お二人に今回の事を説明するので、その間ハルさんはこれでも読んでおいて下さい」
怯えるアニマルズから私を遠ざけた女神ちゃんは一冊の本を私に手渡してきた。ちょっと薄めの雑誌みたいだ。しかし――――
立って読めと? ……と視線で訴えてみると、女神ちゃんがソファーとテーブルを用意してくれた。
気が利く子で助かるわ。ついでにお茶とお茶菓子もよろしく。
☆
女神ちゃんの用意してくれたソファーに座る。
離れた所で女神ちゃんとアニマルズの「マジで!」とか「ところで怪我は……」とか「え! 嘘だったの!?」とか楽しそうな話し声が聞こえてくるけど気にしない。
寂しくなんかない。ないったらない。
あの世にも雑誌なんてあるんだなぁ……。と遠い目をしながら表紙を見てみると、女神ちゃんが物凄いキラキラした笑顔で表紙を飾っていた。
寂しさが一瞬で吹っ飛んでいった。
(あの娘。結構遣り手かもしんない……)
付箋が貼ってあったのでそこを開いてみると、一回りほど小さな冊子がついていた。
『転生ポイントでスキルをゲット! ~失敗しないポイント使い~』
『これがマスト! いまオススメするスキル50』
そして冊子と共に一枚のピンク色のメモが挟んであり、メモを開くとそこには可愛いらしい文字でこう綴られていた。
“なんとか5万ポイント頂けるようお願いしてみます”
どうやらのんびりお茶なんて飲んでる場合ではなさそうだ。
☆
ひと通り読み終え、女神ちゃんが用意してくれた紅茶を一口飲む。お茶請けはクッキーだ。どっちも美味しい。
転生ポイントについて自分の中で簡単にまとめてみた。
転生ポイントとは分かりやすく例えるならば携帯のポイントだ。
同じ会社で長く使い続けると溜まるポイント。
同じ世界で転生する事により溜まるポイント。
そして今の私は別の会社に乗り換えをしたお客さん……。というよりは携帯そのものかな。
だってポイントが貰えるのは神様達だから。
神様達は貯まったポイントで世界に新たなシステムを導入したり、壊れた世界を修復したりする。
他にもポイントで好きなスキルを購入して使う事が出来る。スキルは携帯のアプリだと言えば分かりやすいだろうか。
私にポイントを譲与するとは、私という新しい携帯に私の望むアプリを容れてくれる。簡単にいうとそういうことだ。
勿論好きなだけアプリを貰える訳ではない。ある程度のまとまったポイントを貰えるということだろう。
女神ちゃんは【5万ポイント】とメモに書いてくれたが、アニマルズとの交渉次第では5万ポイント以下の可能性も十分ありえる。
だが逆にいえば5万以上のポイントを手に入れる可能性もあるということだ。
女神ちゃんが渡してくれた冊子を見る限り、5万ポイントあれば必要最低限のアプリは手に入れる事ができそうだが、アプリは多いにこしたことはない。
だって私の新しい体はスマホではなくガラケーなんだから。