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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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小話~ハルの祈り~

【前書き】

今更ですが明けましておめでとうございます。

本編とは関係ありません。

神殿の役割的な話です。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 テッドさんの墓参りを済ませ、そろそろお暇しようと神殿の前の広場まで戻ってきたとき、ふと何の気なしに目を向けた神殿内に数名の人影が見えた。


 あんな真っ白で何もない空間で一体何をしているのだろうと首をかしげていると、神殿長さんにどうかしたのかと声をかけられたので質問しようと口を開き、僅かに迷う。

 地球では宗教の話はデリケートな話題だった。だが、だからといって何も知らないまま王都へ行くのは危険だろう。


 覚悟を決め神殿内にいる人達が何をしているのかと問うと、少しだけ驚いたような顔をされたものの、「そういえば森で暮らしていたのでしたね」と頷き教えてもらえたのだが、その内容に私の目が点になる。


「彼等は神と会話をしてるんですよ」

「……………………ん?」


(神? 神ってトラちゃんの事? ……んなアホな)


 思わず神殿長さんを懐疑的な眼差しで見てしまったが、にこにこと笑顔を崩さない神殿長さん。


 はて、これはどういう意味だ? 言葉の綾だとは思うのだが……。それともこの世界では神殿で神様と会話する事が可能なのだろうか? 小説の中には転生後にも神様とやり取りをする話も幾つかあった。


(じゃあ、まさか……本当に!?)


 トラちゃん達と話せる!? だったらめちゃくちゃ嬉しいんですけど! とキラキラした目で神殿長さんを見上げた。


 ごほん。


 空咳が聞こえ、そちらに目を向けると師匠さんが叱責するような視線を神殿長さんに向けていた。

 あ゛? と神殿長さんを見上げるとすっと視線を反らされる。


(……オイコラ)


「あ~。“神と会話”という表現は誤解を招きますね、すみません」


 神殿長さんにジト目を向けていると、咳払いをしつつ詳しく教えてくれた。


「神は万物に宿ります、海にも山にも空にも。そしてもちろん己の内にもです。――神殿にいる方達は己の内にいる神と対話しているんですよ」


 もちろん神に祈りを捧げている人もいますけど。そう言って神殿長さんは自分の胸、心臓部分に左手の手のひらを当てた。

 左手の手のひらを胸に当てるのがこの世界の祈りの形らしい。


 神殿長さんの話を自分なりに解釈すると、神殿では神に祈りを捧げる事、そして自分自信と向き合う瞑想的な事をする場所で、この世界の神様は日本でいう“八百万の神”の考えに近い存在のようだ。


(じゃあ世界中のありとあらゆる物にトラちゃんとリーハちゃんが宿っているって事?)


 そう思いながらぐるりと辺りの景色を見渡す。


 すると、私の脳内(妄想)に神殿の屋根の上でだらりと寛ぐトラちゃんとそのトラちゃんをナデナデしているリーハちゃんが、神殿の木で一生懸命爪を研ぐトラちゃんとそれを微笑ましげに見守るリーハちゃんが、海をバックに砂浜を楽しそうに駆けるトラちゃんとリーハちゃんの姿――リーハちゃんは水着であった、ありがたや――が浮かんできた。

 大変楽しそうである。……ふむ。





 ………………良い。


 世界中のありとあらゆる場所にトラちゃん(モフ)リーハちゃん(美少女)が……デヘヘ。とにやけていると、神殿長さんが「分かってもらえたようですね」と嬉しそうに微笑んだので、笑顔で「うん」と頷いておいた。


「では神殿はモ、――神様に祈りを捧げたり自分自身を見つめ直す場所なんですね!」

「(モ?)ええ、そうですよ。でも神殿という場所に拘る必要はありませんよ」

「と言いますと?」

「神殿はあくまで象徴にすぎません。己と向き合う時間をあえて作る為に神殿は存在しているのです」


 祈りはともかく、日常生活の中で神や自分自信の事を考えるのは難しいですからね。と言う神殿長さんの言葉に成る程と頷く、確かに忙しい日々の生活の中で、自分と向き合う時間なんてそうそう無い。

 だから神殿という場所にわざわざ赴く事で、そういった時間を強制的に作ろうという事なのだろう。


「ああ、でも神殿で祈る事で神託を授かる方達がいらっしゃいますよ」

「神託ですか?」

「ええ、王族の方がそうです」


 詳しく聞くと王族の人達は神託により未来を見る事が出来るらしい。ただし祈れば必ずしも見れる訳ではないし、断片的な映像や文字だったりと不明確な物ばかりだそうだ。


「ハルちゃんも祈ってみませんか?」

「私が? 今ここでですか?」

「ええ、祈る事は何処でも誰にでも出来ます。それに王都に行って医師見習いとなれば神殿で祈る機会もあるでしょうし、今ここで祈り方を覚えておいた方が良いと思いますよ?」


 簡単な作法ですからすぐに覚えれますし。という神殿長さんの言葉に、それもそうかと正しい祈り方の手順を教えて貰い、もしかしたらトラちゃんとリーハちゃんに繋がるのではと少しだけ期待しながら目を閉じて祈りを捧げた。




 ……うむ、なにも起こらん。


 やはり会話は無理のようだ。

 残念だがこればかりは仕方がないので、今頃神様's(みんな)どうしてるかなと想像してみた。



 暖かな春の日差しが新緑の隙間から降り注ぎ祈りを捧げるハルを優しく照らす。


 それを見ながら本当に不思議な少女だと、ガレーパの神殿長であるラファエル=フロックは改めて思った。


 行動も思考も、とても10歳の少女とは思えない。そして何よりもその知識だ。

 誰も知らない事を知っているかと思えば、幼い子供でも知っているような事を知らない。


 今だってそうだ。神殿内で祈りを捧げている人影を不思議そうに見ていたので、どうしたのかと声をかけたら、彼等が何をしているのかと問われた。

 森で暮らしていたと事前に兄から知らされていたので、神殿を知らないというのは理解出来たが、ハルは祈り方すら知らなかった。

 大抵の子供は物心付く頃には祈り方を教わる。“名”を持たないソラでさえ祈り方を知っているのに“名”を持つハルは知らなかった。


 ハルを育てた人物はよほどの人間嫌い、または神嫌いだったのかとも思ったが、それにしてはハルは人間に物怖じしないし神の話にも興味を示した。


(どんな教育を受けてきたかは知らないが、本当に不思議、いやここまでくると“異質”というべきか……)


 そんな事を考えていると祈りを終えたハルがゆっくりと目を開き、ぼんやりと空を見つめた。

 その表情(かお)に思わずはっとする。それは、その表情(かお)はまるで王族が神託を得た時の――


「神様が……」


 ハルが小さく囁くように呟いた。


(まさか神託を!? そんな馬鹿な!)


 神託は王家の血筋を持つものにしか授かる事が出来ない。ならばハルはもしかしたら王家の血を――



「木陰で昼寝してた」

「…………………………………………はぁ!?」

「いいな」

「…………え? え? 昼寝?」


 ハルは混乱する神殿長をよそに「まぁ猫だから仕方ないか」と呟いた。そして神殿長と目を合わし、「猫の1日の平均睡眠時間は12~16時間ですからね!」という非常にマニアックな知識を自慢げに披露してきた。


 確かに猫はよく寝る生き物だ。

 ガレーパは港町だからか猫が多いのでよく見かけるが大抵は寝ている。今日は天気も良いし、いつも以上に日向で寛ぐ猫を見かける事だろう。

 そういえば花屋の店主から飼い猫のミーちゃんが妊娠したので、子猫の貰い先を募集する張り紙を神殿の掲示板に張って貰えないかと相談が来ていた。そろそろ産まれる頃だろうから掲示板に空きを作っておくように指示を……。


(――――いや、いやいやいや待て! 猫の話をした覚えは全く無いぞ?)


「あの――」

「しかも美少女の膝枕付きとか。………………くっ。羨ましい!」


 そして「私も美少女に膝枕してもらいたい、もしくはモフりたい」と悔しそうに呻く。


 はて、自分は一体何の話をしていたんだっけと呆然としていると、護衛をしていた副隊長と目が合い、お気持ちお察しします的な顔で微笑まれた。


 神殿長はそれにひきつった笑顔を返し、そして同時に悟った。


(不思議でも異質なんかでもない。この子ちょっと、いや、かなり“変”だ)


 と。

【後書き】

ハルさんは百合ではありません。一応追記。

それから、ハルさんは転生前に神様に会ったとはソラ・師匠さん・トビー君には話していますが詳しくは話しておりません。会ったんだよね~位です。

ソラは出てきませんがハルさん達の会話を側で聞いてます。(こいつまた変な事考えてやがる……)的な目で、ですが。

更に余談ですが警護中のアレックス(チェシャ猫君)は心の中で大爆笑中。

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