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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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51 ≪ラ・ルゥ≫

「≪ラ・ルゥ≫を知らないんですか!?」


 神殿長さんにめちゃくちゃびっくりされたけど、ごめん知らない、なにそれ? と首をかしげた。

 神殿長さんは「保護者は教えなかったのか? 教え忘れた? いや、いくら森で生活しているからといって……」などとぶつぶつ言いながらも≪ラ・ルゥ≫について説明してくれた。すまんね。


「≪ラ・ルゥ≫とは精霊や神竜等の神格を持つ生命体に祝福を与えられた者の総称ですよ。≪愛し子≫とも呼びますね」

「へぇ~!」


 あらやだ。なんか凄そうだし良さそうじゃないと思い、へい。と再び挙手する。


「どうぞ」

「なんかお得な事とかあるんですか?」

「お、お得、ですか?」


 うんそう。と頷く私を変な生き物を見るような目で見てくる神殿長さん。……失敬だな。


「そうですね。祝福を与えた者の力によって大きく変わるので一概には言えないのですが……」


 と、前置きしてから教えてくれた祝福は本当に様々だった。

 数時間後の天気が分かるとか、探し物が見つかるというような小さな物から、怪我や病気になりにくくなる――ならない訳ではない――や、貴重な薬草を見つけたり、商売が上手くいったり、新たな属性魔法やスキルを使えるようになったりする者もいるらしい。


「おそらくソラ君は下位、または中位精霊の≪ラ・ルゥ≫でしょう」

「どうして分かるんですか?」

「ソラ君に祝福を与えたのがもし上位の精霊なら力が弾かれる程度ではすみません。私の手の甲に警告の印が現れ、しばらく魔力を使用する事が出来なくなるでしょう。しかし今回は弾かれただけでした。ですから下位か中位の精霊の可能性が非常に高いと推測出来るんですよ」


 といっても、それもあくまで推測にすぎず絶対ではないらしい。

 精霊はとても気まぐれな存在で、時に人間には理解不能な相手に祝福を授ける事がある。罪を犯した者、魔物、動物、虫、時には建物や銅像などの無機物に祝福を与える変わり者の精霊もいるそうだ。

 そして上位の精霊の≪ラ・ルゥ≫だからといって必ずしも巨大な力を与えられる訳ではないし、下位や中位だからといって授かった力が小さいとも限らない。


 赤ん坊や幼い子供が祝福される事が多いのだが、そういった幼い頃に与えられた祝福は、自我が芽生え、ある程度大人になると自然と消えてしまう事が多いらしい。

 ちなみに神竜は世界に一体だけだが、精霊は目に見えないだけで実際にはかなり沢山いるらしく――上位種は除く――気付かないうちに祝福を受けている事もあるそうだ。


「大人になってもずっと≪ラ・ルゥ≫でいる方もいらっしゃいますし、途中で精霊が変わったなんて方もいます。マルチーノ様は大人になってから祝福を受けた事でも有名ですね」

「え、師匠さんも≪ラ・ルゥ≫なんですか?」

「ええ、しかも神竜から生まれし5人の上位精霊のうちの一人、花の精霊のフィオーラ様の≪ラ・ルゥ≫です」


 そのため貴族どころか王族ですら師匠さんには敬意を持って接するのだそうだ。

 そりゃそうだろう、だって師匠さんに何かあれば上位精霊の怒りを買うことになる。しかも相手は花の精霊。

 花の精霊なんてなんだかふんわりしてて優しげなイメージがあるが、とんでもない。

 花の精霊の怒りを買えば花は咲かない、そして花が咲かなければ実はならない。

 収穫が大幅に減って食糧難になる、食事の栄養が偏れば病気になる。国は一気に衰退する事になるだろう。


「まぁ、幸いにもフィオーラ様は人間がお嫌いではないようですし、今の王家の方々も聡明で賢明な方達ばかりですから。……一部の貴族には馬鹿がいますけどね~ははははは」


 そう言って笑う神殿長さんから黒い物が見えた気がしたがこれはスルーして話を反らした方が良いだろう、とりあえず「そうなんですかあはは~」とさらりとかわして逃げるようにソラとの会話に切り替えた。


「ソラは自分を祝福してくれた精霊がどんな精霊なのか分かる?」


 神殿長さんの話では気が付かないうちに祝福されている事もあるらしいので、もしかしたら本人に自覚がない可能性もあるがとりあえず聞いてみたのだが……。


「………………変なやつ」

「え?」


(……ちょっと。それ大丈夫なの?)


「なんか体力付いたな~とか、新しい力に目覚めた気がする~的な感じは?」

「ない」

「……」


 それってどうなの? 祝福の意味あるの? その精霊使えねぇ~。と眉をしかめた私に神殿長さんがフォローを入れる。


「あ~まぁ、そういう方も沢山いらっしゃいますよ。生活していてある日ふと気付く事もありますしね。とりあえず≪ラ・ルゥ≫には隷属を付帯する事は出来ませんので、隷属期間が残っていてもソラ君が奴隷に戻る事はありませんから。それだけでも良かったのでは?」

「あ、そうなんですか?」

「ええ」

「う~ん。そっか。じゃあ、まあ、良かったね? ソラ」


 やっぱその精霊微妙だわぁ……。と思いながら振り返るとソラにじっと凝視されていた。


(え? なに?)


 そして呆れたように深いため息をつかれた。


(なぜ?)


「そうだ、ソラ君にひとつ伺っておきたいのですが、ソラ君はその精霊に名前を貰ったので間違いないですか?」


(……は?)


 ソラは少し迷う素振りを見せたあと、頷いた。


(……え?)


「やはりそうでしたか。ソラという名前の子供に隷属を付与したという記録が残されていなかったので、もしかしたらと思っていたのですが……。隷属が付与されている者に名付けをするなど人には不可能ですからね。体や能力に変化はないようですが、祝福を受けてからなにか変わった事などはありますか?」


(え? あれ? ちょっと待って? ソラに名前付けたの私だよね? でも私って精霊じゃなくってスライムなんですけど???)


 ソラは混乱して固まっている私にちらりと視線を送り、そして非常に恐ろしい事を口にした。


「……なんとなくそいつの考えてる事が分かる」


(……はぁあ? は? え? う、げぇっ!?)


「それはあまり聞いた事がないですね」

「別に問題ない」


(あ、あるよ!? あるよね!? すんごいあるよね!?)


「う~ん。ソラ君がそう言うなら良いでしょう」


(良くねぇよ!!)


「おっと、少し話し込んでしまいましたね。隷属などの詳しい事はお二人の保護者であるマルチーノ様を交えてお話した方が良いでしょう。皆さんを呼んできますので二人はここで待っていて下さい」


 そう言い残すと神殿長さんは師匠さん達のもとへと歩いて行く。

 硬直して動けない私にソラが近付いてきた。

 目が合う。


「……わ、私?」

「お前だな」

「私、スライムなんですけど?」

「そうだな、なんでだろうな」

「…………考えてる事?」

「なんとなくだけどな」

「……」

「……」

「……ぅ……………………え」

「?」


「えっち」


 神聖な空間にそぐわない言葉を小さく呟いた私は、両耳をソラにつかまれ左右に思いっきり引っ張られるという罰を受けた。

【後書き】

☆☆おまけ☆☆

「……っ!」

「お前、今『くそっ』て思っただろう?」

「くぅっ!(くっそぉぉ!)」

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