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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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47 何処に? そして 何故に!?

 港町ガレーパへ向かい馬車は山を下る。

 遅くても昼前には町へ着くそうなので、感覚的にあと一時間といった所だろうか。


 ソラは8歳までガレーパで生活していたらしいので、少しは覚えているかと聞いてみたのだがあまり良く覚えていないと返事が返ってきた。

 印象に残っているのは嵐の過ぎた次の日は屋敷中が海水でベタベタする為、掃除が大変だった事位だそうだ。

 まぁ奴隷だったのだから仕方ないかと思っていると、向かいに座っていた騎士が教えてくれた。


「ガレーパは海岸沿いの岩山を削って造られた古い町ですよ。旧王国時代が存在している事を証明する歴史的にも価値のある町ですね」


 落ち着いた野太い声でニコニコしながら教えてくれた騎士の名前は『グリシャ=フロック』さん。


 焦げ茶色の短い髪と金茶の瞳をしたがたいの良い男性だ。

 分厚い胸板と太い首の上には厳つい顔が乗っており、黙って立っている姿は騎士というより戦士と言われた方がしっくりくる。

 太い眉と三白眼気味の目のせいで近付きがたい雰囲気を醸し出しているため、女性や小さな子供に怖がられるそうだが、本人は大の子供好きらしく、顔合わせの時に私もソラもグリシャさんを怖がらなかった事にものすごく感動された。

 母親が神官だった為、子供の頃は神官を目指していたそうだが、恵まれた体格と戦士としての才能があった事もあり騎士の道を選んだのだそうだ。


 休暇には近くの孤児院を訪問して、子供達に物語の読み聞かせなどのボランティアを行っている為か、グリシャさんの説明は詳しい上に分かりやすい。


 ちなみに私のグリシャさんの第一印象は“森の熊さん”である。


 そんな森の熊さん――ではなくグリシャさんから教えてもらったガレーパという町は、200年程前までこの国の中心的な町として栄えていたそうだ。

 だが海底の高低差が激しいために大型船が港まで近付く事が出来ず、新しい港町の完成と共に国の中心としての役目を終えたらしい。

 しかし、だからといってガレーパが廃れてしまう事はなく、歴史的な価値と山に添うように建てられた町並みという独特の外観が珍しいと評判となり、今では人気の観光スポットとなっているらしい。


「捕れる魚介類もガレーパ特有の珍しい物が多いですし、貝殻や真珠を使った装飾品も人気ですよ」

「あと酒な!」


 グリシャさんの説明に付け足すように叫んだのはもう一人の騎士の同乗者、『アレックス=ヤンセン』さんだ。


 アレックスさんは赤銅色の髪と灰色の瞳の17歳の青年で、左の耳に小さな金色の輪っかのピアスを3つ付けている。

 ノリの良いいたずら好きのお兄ちゃんって感じの人だ。


 グリシャさんが“森の熊さん”ならアレックスさんは“チェシャ猫”だ。


 グリシャさんは27歳で、アレックスさんとは年齢が10も離れているので、グリシャさんにとってアレックスさんは年の離れた弟みたいなものなのだろう。

 アレックスさんの発言にグリシャさんがやんわりと突っ込みを入れる。


「アレックス、酒は二人にはまだ早いだろ?」

「俺、10の時から飲んでましたよ?」


 ちなみにこの世界ではお酒に年齢制限はない。ただ、子供が酒場に来ても良識ある店の主人はお酒は出さない。

 暗黙の了解というやつらしい。


「ソラ、大人になるまでお酒は飲まない方が良いよ」


 そっとソラの耳元に顔を寄せて囁くと、ソラが「何でだ?」と不思議そうに問い返してきた。


「背が伸びない(生活習慣が乱れる可能性が高いから)」

「マジか!?」


 ソラがお酒に興味を持っても大人になるまで飲まないようにする為に多少説明をはしょったのだが、それに反応したのはソラではなくアレックスさんだった。

 そして「酒のせいで俺の身長は伸びないのか!?」と頭を抱えて落ち込み始めた。


(20歳位までなら普通に伸びるんだけど……。言わない方が良いかな? ――というか今の聞こえたの? アレックスさん耳良いな)


 落ち込んでいるアレックスさんの身長は約170センチ。

 元日本人の私からしたら十分高いと思うのだが、どうやらこの世界の平均身長は地球より高いようで、他の騎士の人達は180は余裕で越えていた。

 側に座っているグリシャさんに至っては確実に2メートル以上ある。


「よし! ソラ! ガレーパで俺が旨い酒を奢ってやるぞ!」

「……俺、飲まない」

「先輩命令――」


 ゴホン。


 師匠さんの咳払いで黙り、私とソラからの冷たい視線に我に返ったアレックスさんは「スミマセンデシタ」と言いながら大人しく席に座り直した。

 そんなアレックスさんにグリシャさんが呆れたような視線を向けながら優しく諫める。


「お前なぁ、子供を巻き込むなよ。それに別にそこまで言うほど低くも無いだろう?」

「2メートル越えのグリシャさんに慰められたくねぇっす……。何食ったらそんなにでかくなるんすか?」

「そう言われてもなぁ……。俺は獣人の血が入ってるからなぁ」


「…………獣人?」


 私の呟きにグリシャさんだけではなくアレックスさんも“しまった”みたいな顔をして固まる。


「あ~。祖父がな、その、なんだ」

「獣人なんですか?」

「あ~。まぁ」

「何の獣人ですか?」


 かなり歯切れの悪いグリシャさんに、前のめりになって質問する私。


「……ハル、止めなさい」


 師匠さんの声に我に返った私は慌てて周囲を見渡した。

 師匠さんは眉を寄せており、ソラは呆れたような、アレックスさんは不愉快そうな、当の本人であるグリシャさんは困ったような顔をしていた。


「あ、ごめんなさい」


 しまった。久々にやってしまった。

 いくら気になるとはいえ人様の事をあれこれ聞くのは失礼だ。

 私にとっては興味のある話でも、グリシャさんにとっては話したくない事かもしれないのだ。

 お節介なのと夢中になると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。

 猛省してしょんぼりする私にグリシャさんが声をかけてくれた。


「そんなに落ち込まなくても良いですよ。……お話しましょう」

「……え? あの、私が言うのもなんですが無理ならいいんですよ?」

「いえ、隠していてもいずれ知られてしまう事です。それに知らない所で変に伝わる位なら、自分の口からきちんと伝えておきたいですからね。…………私の祖父は熊の獣人です」

「くま!」


 私は「くま、リアルもりのくまさん」と呟きながらその場にふらりと立ち上がった。


「ハル?」


 何してるんだといぶかしむようなソラの声が聞こえたが私はそれどころではなかった。

 しかしどうしても目的の物を見つけられなかった私は、ごくりと生唾を呑み込み緊張しているグリシャさんの金茶色の瞳を真っ正面から見つめて言った。



「ケモミミは何処に?」

「…………え? ケモ? 耳?」

「そうです! ふわふわでもこもこのケモミミ様です! ……はっ! も! もしかして出せないんですか!?」


 なにそれ最っ悪っ! っと絶望のポーズを取る失礼な私に、若干引き気味のグリシャさん。

 と、ガッツリ引いているその他の人々。



「…………いえ、出せます……よ?」

「なんと! それは良かった! お願いします!」

「え?」

「さあ! 遠慮なさらずに! さあ!」

「あ、はい……。え? いや!? 出しませんよ!?」


 何故に!?


「ちょっとでいいんですよ?」

「いえ、……ダメですよ?」

「見るだけ!」

「だ、ダメです」

「…………じゃあ触るだけ」

「ハードルあがってませんか? ダメです」

「…………」

「…………」

「来月のポーション代無料」

「っぐ!」


「……ハル、止めなさい」


 ちぇっ。

【後書き】

はい、またファンタジーのお約束ですよ!

ケモミミ様登場。今後も出す予定。


トビー君は馬車に乗ってないのかって?

乗ってません。馬車酔いするそうです。馬は平気。

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