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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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43 番外編~副隊長の思惑2~

 話し合いの場が設けられたのは少年が目覚めた2日後の昼過ぎだった。


 天幕の入り口でドクターに二人の身元保証人になったと告げられたが、想定の範囲内だったため「二人にとってもそれが良いでしょう」と返した。

 実際その方が二人にも自分にも都合が良いのは事実だ。


(ドクターが保証人になってくれた方が私としても少しは気が楽ですしね)


 別に二人に不利益となる契約をするつもりはないが、第7部隊と係わりがあるというだけで役人達に辛く当たられる事もある。

 実際それを恐れて自分達と契約をしない見習いも多い。

 だが、筆頭医師でもあるドクターが保証人となればある程度は緩和されるはずだ。


 罪の無い少年と少女をそういった大人の事情に巻き込む事に良心が痛みはするが、それ以上に第7部隊のポーション問題は切迫している。

 トビーのポーションの味を抜きにしてもだ。


 第7部隊は嫌われているが実力もあるため、辺境の地に派遣される事が多い。

 そしてそんな辺境の地程、力の強いモンスターは多く存在する。

 いくら実力があっても毎回無傷ではいられないし、国から支給されるポーションにも限りがあるため、常にポーション集めには苦労させられている。

 足元を見られ、効力の少ない粗悪品を規定内ギリギリまで引き上げた値で売り付けられる事もしばしばだ。

 それでも隊員達の命に関わる為、買わないという選択肢を選ぶ事は出来ない。

 幸運にも今のところ死者が出るような事態は避けられているが、いつまでもこの幸運が続くとは限らない。


 見習いとして生活を始め、自分のおかれた状況に気付いたハルから恨まれるのも覚悟のうえだ。



 足を踏み入れた天幕内のテーブルの席には既にハルと少年が座って待っていた。

 立ち上がって挨拶をしようとするハルを笑顔と手で制し、ヨハンと共に席に着く。


 ハルは笑顔で。

 少年、ソラはじっとこちらを観察してくる。

 かなり警戒されているようだが特に気にはならなかった。というよりもこれが普通の反応だ。

 どちらかといえばハルの警戒心が薄いのだ。

 祖母と二人っきりでずっと森の中で暮らしていたと言っていた。それが本当かどうかは分からないが、人を警戒する環境にいなかったのは確かだろう。

 だが一度も村や町に行った事が無いとは思わない、なぜならハルは人と会話する事に馴れているからだ。

 もともとそういった性格なのかもしれないので確実とは言えないが。


 ヨハンと共に席に着き、改めて挨拶を交わす。


「ハルさんもソラ君も快復されて何よりです。まだ体調は万全ではないでしょうが、お二人の今後について大事な事を決めなくてはなりません。申し訳ないのですが少しの間お時間を頂きますね」

「いえ、こちらこそ助けて頂いた上に今後の事についても考えて頂いて。とても助かります。ありがとうございます」


 ペコリと頭を下げたハルがソラの方を見たあと、申し訳なさそうに見上げてきた。おそらく私達に対するソラの態度を気にしているのだろう。

 気にしていませんよとにっこりと微笑むと少し安心したような顔をした。

 そしてちらりと私とヨハンの後ろに立っているハルムートに視線を送る。


「彼に会うのは初めてでしたね、先に紹介させて頂きます。彼はハルムート=ボット。私とヨハンの補佐をしています。若いですが彼は非常に博識なので、今回の話し合いにも同席させる事にしました。色々と知恵を貸してくれる事でしょう」

「そうなんですね。私はハルです。こっちはソラ。ハルムートさん、よろしくお願いします」


 ハルの挨拶にハルムートは無言で軽く頭を下げるだけで返すが、ハルは嫌な顔ひとつしなかった。

 分かってはいたがやはり身分や礼儀などにはあまりこだわらないようだ。

 貴族なら確実に今のハルムートの態度に対して嫌味を言う。

 残念ながら大半の見習いもそうだ。

 自分達が選ばれた人間だという意識が強いために横柄な態度を取ることが多い。

 ドクターやトビーが例外なのだ。


 ハルがそうなるとは思いたくはないが、今までの経験が期待するなと警告してくる。

 やはり今のうちに契約した方がいいだろう。

 もしハルが世間を知り、自分を特別な存在だと意識してしまったとしても一度交わした契約から逃れる事は出来ない。例え第7部隊を恨んだとしてもだ。


「話し合いの前にひとついいか?」


 ハルの隣に座っていたドクターがコツとテーブルを人差し指で叩き、注意を向ける。


「入り口でも言ったがこの二人の身元はわしが預かる。二人も了承済みだ。騎士団の“契約”に立ち入る気は無いが、あまり無茶な事を要求するようなら口を出すからそのつもりでおれ」


 私とハルムートを睨み付けながらそう言うと、ドクターは腕を組み目を瞑った。

 そんなドクターに私は顔に出さずに感謝する。

 ドクターは無茶な要求でなければ黙認すると言ってくれているのだ。ドクターも第7部隊がポーションで苦労している事を知っているからだろう。


「もちろんですよドクター。さて、では単刀直入に言いましょう。ハルさん、私達と契約していただけませんか?」


 ソラの視線が強まる。

 当のハルは目をぱちくりさせている。

 いきなり本題に入ったので驚いているのだろう。

 遠回しに説明をして契約に持ち込む事も考えてはいたが、ドクターが保証人になるのなら事前に契約の申し出がある事を説明されている可能性は高い。

 もちろん第7部隊の現状とその後の可能性までは伝えていないだろうが……。

 おそらくドクターは、私達と契約をしたハル達がどのような状況になるかも分かった上で保証人になると言っているのだ。ドクターはそういう人だ。


 私の言葉にハルは少し考えてから口を開いた。


「私が作る『錬金術』のポーション。ですね」

「そうです。是非とも私達の第7部隊と“契約”して頂きたいのです。もちろん法に則った適正価格での取引ですし、契約金もお支払します」


 他にも条件があれば伺いますよと微笑むと、条件ではないがひとつ質問したいというハルにどうぞと手のひらを向ける。


 そしてその質問の内容に今度は私が目を見開く事となる。


「戦い方を学びたいのですが、一番良い方法を教えて頂けますか?」

【後書き】

トビー君もヨハン隊長もちゃんと天幕内にいるんですよ。しゃべってないけど(笑)


二人ともぽけーとしてます。

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