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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第二章~邂逅と別離~

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41.5 お年頃と隠れた才能

【前書き】

無くても良い話かなと思ったので「.5」にしました。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 ソラの瞳が天幕内をゆっくりと彷徨う。

 体を起き上がらせようとするが、まだ熱が高いらしく、体がぐらりと倒れそうになるのを慌てて支えた。


「ここ、何処だ?」


 掠れた声で問いかけながら、ソラは天幕内を睨み付けるように観察している。支えた腕からソラの緊張が伝わってきて、かなり警戒しているのが分かった。

 安心させるように背中をゆっくりと撫でながら「騎士の人達と、一緒にいたお医者さんに助けて貰ったんだよ」と伝える。


「騎……」


 咳き込んだ為に言葉が途中で途切れる。


「お水貰ってくるから待ってて」


 そう言ってベッドから離れようとした時、急に腕を掴まれた。振り替えると不安そうな顔をしたソラがいた。

 私と目が合うと慌てて手を離し、ばつが悪そうに視線を反らす。


 少し迷ったあとソラに再び近づいてベッドに乗る。

 目を丸くして驚いているソラに向かって両手を拡げて伸ばす。ソラは「お、おい!?」と焦ったような声を出して後ろに仰け反るが、気にせずにソラの頭を胸に抱きこむようにして抱き締めた。


「大丈夫、大丈夫だよ」


 柔らかな髪の毛をそっと撫でる。

 頭皮近くの髪の毛が少し湿っぽい。

 熱で汗が出たのだろう、服も着替えた方が良いとは思うが貸して貰えるだろうか?


 そんな事をナデナデしながら考えていると後ろから「ゴホッ」と咳き込む音が聞こえてきた。


 音がした方を見ると入り口に師匠さんが立っていた。でもなんだか困ったような顔をしている。


(んん?)


 そしてソラから腕を離して顔を見上げて、“あ~”と思う。


 ソラの顔がびっくりするくらいに真っ赤に染まっていた。

 熱のせいじゃない、いくら干物女といえどもそこまで私は鈍感ではない。


(まぁそっか、そうだよね。正体と精神年齢はともかく今の私の見た目はソラと同い年位の女の子だもんなぁ……)


 年頃の男の子には些か刺激が強すぎたか……。

 と、他人事のように思う。


 ふむ。


「よいしょ」


 ついでに押し倒してやった。

 ソラの顔がさらに赤くなり、口をパクパクさせている。

 別の理由で熱が上がらないかと少し心配になったが、これで少しの間なら側を離れても不安にならずにいられるだろう。


「寝てて。お水貰ってくるから。……起きたら怒る」


 そう言って頭をもうひと撫でしてからベッドから下り師匠さんの側に寄る。


「師匠さん、ソラが起きたのでお水とご飯とお薬下さい」


 師匠さんも固まっていたが、さすが年の功。すぐに復活して「着いてきなさい」と言って仕切りの布を捲る。

 ただ、隣に並んだ時にぽつりと一言注意された。


「……ああいうのはよしなさい」

「……気を付けます」


 決して“止めます”とは言わずににっこり微笑んだ。

 可愛いものを愛でないなんて“横山ハル”が廃るではないか。

 師匠さんは眉を少しだけ顰めたが、それ以上はなにも言わずに歩きだした。



 仕切り布を出るとトビー君が平たい板のような物を持って立っていた。

 師匠さんは私の背中をそっと押し「食事の用意はわしがやる」と言うと、キッチンに向かう。少し迷ったが大人しく従う事にした。


「ハルちゃん。これ良かったら使ってね」


 トビー君が差し出してきたのは5百円玉サイズの青い石が、縦に3つ並んで嵌め込まれた金属の板だった。良く見ると青い石には白と緑の細い線で文字のような模様が描かれている。

 私はこれ何だろうと首を傾げた。

 “使ってね”と言う事は何かをする道具なのだろうけど、まったく予想出来ない。


「あれ? もしかしてこの魔道具使った事ない?」


 魔道具? これが? というかやっぱあるんだ。まぁ、短剣とかコンロとかに魔石が使用されていたから他にもあるんだろうとは思っていたけど……。


「これは使った事無いです」


 全く知らないと言うのもおかしいかなと思い、とりあえずどちらにも取れる回答をすると、トビー君は「そっか」と言って説明してくれた。


 どうやらこれは地球でいうところの洗濯機らしい。

 対象物に向かって発動させると一瞬で洗濯が出来る、しかも乾燥もしてくれる優れもの。

 そして驚く事なかれ! これ、人にも使えるらしい。

 分かりやすくいうと服を着たままお風呂と着ている服の洗濯が一瞬で出来る。


(なにそれ凄い! これ欲しい!)


 思わずキラキラとした目で魔道具を見つめてしまう。

 これがあれば寝たまま服が洗えるし体も綺麗にできる。病気のソラには持ってこいの魔道具だ。

 実際この魔道具は病人に使用される道具らしく、通常は病院などの施設にあるらしい。


 ちなみに私とソラを助けた時もこれを使って綺麗にしてくれたそうだ。

 確かに雨が降る山の中を這いずり回って移動したのに目が覚めた時はどこも汚れてなかったから不思議に思っていたのだ。そもそも私の着てる服って私の一部だから脱がされたらアウトだったかもしれない。


 魔道具に対する感動と、もしかしたらスライムだとばれていた可能性にヒヤリとする感覚を同時に味わっていると、隊長さんが側にきてもうひとつ驚きの事実を教えてくれた。


「それ、トビーが作ったんだぜ」

「え!? 凄い!」


でも怖い。じわりと変な汗が滲む。


(……これ人に使っても大丈夫なの?)


「わー! なんで言っちゃうんですか!」

「いいじゃねーか、お前の唯一の特技だろ?」


 盛り上がっている二人の声を聞きながら手渡された魔道具を『鑑定』していると、副隊長さんが側に来て耳打ちしてくれた。


「それは大丈夫ですよ、トビーの魔石加工の技術はこの国でもトップクラスですから」


 ダメダメなのは料理と『錬金術』の味付けだけです。と最後に苦笑まじりに小さく呟く。


「医者じゃなくて魔石職人になればいいのによぉ、勿体ねぇ」

「僕は師匠みたいな医者になりたいんです!」

「まぁ『錬金術』のスキルを持ってますから、医者になるのを誰も反対はしないでしょうが……。トビーは魔石加工の才能がありますからねぇ。実際どちらにも携わるようにと言われているのでしょう?」


 副隊長さんの言葉にうぐっと言葉に詰まるトビー君。


「と、とにかく! 僕は見習いですが医者ですから! ハルちゃん! それ使っていいからね!」

「あ、はい。ありがとうございます、お借りします」


 そして隊長さんと副隊長さんに事情徴収の続きを後にしてもらうようお願いした後、キッチンから出てきた師匠さんに「先に飲ませなさい」と渡された水差しと魔道具を手にソラの所へ戻る。


 だが戻る途中、トビー君が洩らした小さな呟き声に私は戦慄した。


「僕のポーションそんなに不味いかなぁ? 僕は美味しいと思うんだけど……」


(!?)

【後書き】

思った以上に話が進まない……。

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