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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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35 雨

 プカプカとでっかい餡まん状の形をキープして浮かんだまま、私は川の流れに身を任せて進む。勿論『索敵』と『鑑定』をフル稼働中だ。


 窮屈で申し訳ないが、ソラには暫く私の中で大人しくしてもらうようお願いした。

 日が完全に落ちて既に辺りは真っ暗だし、小降りになったとはいえまだ雨もぱらついている。この中をソラが歩いて移動しするのは危険だ。


 このままソラから聞いた港町に朝までにたどり着けるだろうか。既にかなりの時間流されているが、まだ距離があるようなら食材の調達が必要だ。『収納』の食材をかき集めてもあと2食分位しかない。


 幸いここら周辺の魔物のレベルは元いた場所とあまり変わらないし、ゾジャも生息している。このまま朝まで移動しても港町にたどり着けないようならソラに相談しよう。


 今、ソラには休んでもらう。

 ポーションを飲んでもらっているとはいえ、心も体も疲れているはずだ。



 そう考えを纏めた時、トンッと内側からノックされた。


 空気を内側に取り込む為に開けていた穴を広げて「どうしたの?」と問いかけると、胡座をかいて俯いたソラが小さな声で「外に出たい」と言った。


 流されてからかなりの時間が経っている。同じ姿勢でずっと座りっぱなしだったし、少し体を動かした方が良いかと思い、辺りを見渡す。


少し進んだ先に壁が窪んで小さな隙間が空いている場所があった。増水した川の水によって出来たへこみだろう。今降っている雨ではそこまで川の水が入り込む事は無さそうだ。

 『索敵』と『鑑定』で調べてみても周囲に危険は無さそうだし大丈夫だろう。


 オール状に変化させた触手で川岸に寄り、ソラを外に出す。

 河原は人間になった方が歩きやすいので人化して、夜目の利かないソラの手を取ってへこみまで導く。


 窪みは思っていたより広く、雨も入ってこない。少しの間ならここで休憩しても大丈夫だろう。

 ただ、ソラは気にせずに座っているが地面が少し湿っていた。こういう場所は体温を奪う。


(敷物にでも『擬態』しようかな?)


 そう思って何となくソラを見て、絶句した。


 ソラが声もなく泣いていた。


 慌てて近くに寄り声をかける。


「ソラ、何処か痛いの?」


 首を振る。


「ナーガが怖かった? 寒い? お腹すいた?」


 首を振る。


 どうしよう、困った。


 痛いならポーションがある。ナーガが怖いならスキルで追って来ていないと説明して不安を取り除いてあげれる。寒いなら『擬態』で敷物になってあげれる。お腹がすいたなら簡単だけど作ってあげれる。


 でもそのどれでもないとソラは首を振る。

 私は途方にくれて、うずくまって声も出さずに泣き続けるソラの頭をそっと撫でた。


(やっぱりナーガが怖かったのかな? 男の子だし素直に言えないのかも……)



「……ん……死……だ」


 掠れるような小さな声に思わず手が止まる。


 「みんな死んだ」ソラはそう言った。



 ああ、そうか。そうだったのか。


 今やっと分かった。


 “なぜソラは、隷属が解除出来ると言ったのに盗賊達から逃げようとしないんだろう”


 ずっと不思議に思っていた。


 初めは盗賊達が怖いのだと思った。逃走した後の報復やその後の生活への不安があるのだろうと。当然それもあっただろう。


 けど違う。

 ソラが怖いのは。

 畏れていたのは。


 失う事。


 “家族を失う事”


 日々暴力を奮われ、食事も満足に与えられていなかったのは、出会った時の怪我や細すぎる体型から分かる。

 そもそも盗賊なんてするような人間達だ、気まぐれ以外の愛情なんてかけて貰った事もないだろう。


 でも。それでも。

 そんなどうしようもない人達でも。


 “ソラにとっては唯一の家族だった”


 急に小梅ばあちゃんが死んだ時の事を思い出した。

 私には両親がいない。

 あの日、小梅ばあちゃんが死んだ日。

 私は本当にひとりぼっちになった。

 葬式などの細々とした処理をしていた時は、忙しくてそれどころではなかった。


 けどそれが終わり、たった一人居間で一息ついたとき、そいつはやって来た。



 絶望にも似た喪失感(孤独)



 今この子はそれを味わっている。いや、私以上に複雑で孤独かもしれない。


 だって私には家があった、仕事があった、社会との繋がりがあった。


 でも、この子には何もない。


 気が付いたら、俯き静かに涙を流すソラを強く抱き締めて私も泣いていた。


 全てを失った人にかける言葉を私は知らない。

 この悲しみを取り除く術を私は知らない。


 知っている、どうする事も出来ない事を。

 知っている、受け入れるしかない事を。


 私はこの子に何もしてあげられない。

 それが、凄く、辛い。


 その時、ソラの手が私の体に回された。

 声を出さずに泣いていたソラが、声をあげて泣き始めた。



 ――――良かった。この子の泣き場所にはなれた。


 抱き締める腕に力を込める。


 ――――この子(ソラ)が望む限りずっと側にいよう。


 冷たい雨が降る暗い闇の中、震える小さな体に寄り添いながら、私はそう決めた。

【後書き】

一章終了です。

次話より二章となります。


人の世界でハルとソラがどうやって生きていくか……。という感じです。

二章はシリアス少な目、コメディー多目の予定です。


ファンタジーではお約束の騎士も出ます!

登場は次の次からかな?お楽しみに!

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