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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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32 命令

 良くできてる。


 血を吹き上げながら崩れ落ちる体を見てそう思った。


 あまりにも非現実的な光景に、私の脳がこれは現実ではないと判断したのだ。


 ナーガは予想どおり人間の上半身と蛇の下半身を持ったモンスターだった。だがその姿は予想以上に醜悪だ。

 下半身の蛇の部分は熱されたアスファルトの道路のような独特の光沢があり、かなり固そうだ。反対に上半身はガリガリに痩せ細った老人。皺だらけの肌には紫色の血管が透けて見え、皮膚の青白さから死者を彷彿とさせる。

 人間の頭部にあたる部分には頭髪も目も耳も鼻も無い。大きな唇の無い口に、尖った歯がいくつも不規則に並んでいるのが見える。

 そして両腕が異常なほど長く、屈んでもいないのに地面に手がついていた。


 ナーガは崩れ落ちて痙攣している死体に近付くと、長く鋭い爪を死体の腹に突き立て、引き裂き、貪り始めた。


 濃い血の臭いが辺りに漂う。


 視界が狭まり暗転していく。


 その時、グラグラと体が揺れて僅かに意識が浮上した。視線が彷徨い頭上に真っ青な少年の顔が見えた。


 ソラだ。


「イ、ヴァン……」


 小さく囁くような声に我に返える。そして


「くそがああぁぁあぁ!!!」

「よせ! ルドルフ!」


 小屋の中から飛び出てきた一人の赤毛の青年がナーガに長剣を振り下ろした。


 だが、両手で渾身の力を込めたであろう青年の長剣をナーガは右手をひょいと軽く上げただけで防ぐ。長い爪に刃が当たり金属音が響き渡る。ナーガの爪は刃物と同じ強度があるらしい。


 新たな標的に定められたルドルフという青年は、荒い呼吸を繰り返しながら長剣を構え直しナーガを睨み付ける。


 ナーガが身を屈めルドルフに襲いかかろうとした時、ナーガの背中に矢が突き刺さった。

 ナーガは長い手を背に回し突き刺さった矢を引き抜く。不思議な事に血の一滴も付着していない。その隙をついて赤毛の青年がナーガに襲いかかる。


“ぶおんっ”


 という重い音がしたと思ったら、ナーガに襲いかかろうとしていた赤毛の青年が吹き飛び、木に激突した。ナーガが長い胴体をくねらせ赤毛の青年に叩きつけたのだ。


 ソラは私を抱えるようにして身を伏せながらナーガから距離をとる。


 ナーガの尻尾の先が苛立たしげに地面を打つと土煙があがり、振動で周囲の木がゆらゆれと揺れた。

 尻尾の先だけでもこの威力だ、攻撃を受けた青年は木の根本で口から大量の血を吐いて痙攣している。このまま放置すれば数分も経たずに死ぬだろう。


 赤毛の青年に近付くナーガに向かって再び矢が放たれたが、今度はナーガに当たらず、その先にいる赤毛の青年の倒れている木の幹に刺さる。


 外れたのかと思ったがそうではなかった。


 矢にくくりつけてあったポーションが割れ、赤毛の青年に降り注ぐ。ポーションは飲まなくても体にかければその効果を発揮する。その証拠に赤毛の青年のHPが少し回復していた。


 続けて2回、ポーションの付いた矢が木に打ち込められ、3本目のポーションでようやく赤毛の青年のHPは8割程回復した。だが、まだ動きが悪くふらふらしている。


「ルドルフ! 早く移動しろ!」


 小屋の屋根の上から矢を放った名前のない男が叫ぶ。


 再び“ぶおんっ”と音がして、立ちあがりかけていた赤毛の青年にナーガの胴体が叩きつけられる。

 幸いにも赤毛の青年はギリギリの所で攻撃をかわしたが、ナーガは再び胴体をくねらせる。


 二度も避けれない。

 そう思った時、ナーガの顔の近くで何かが爆発した。白い炎がナーガの上半身にまとわりつき辺りに焦げた肉の臭いが充満する。


「ギィャアァァャァ!!!」


 今までどんな攻撃でも余裕で受けていたナーガが、初めて悲鳴を上げ炎から逃れようと無茶苦茶に暴れまわる。


 ほんの一瞬だったので自信はないが、投擲された小さな石がナーガに当たったのだ。おそらくあれは“魔石”だ。


「トカゲ! ナーガを“谷”に追い込む!」


 小さな獣道の先に顔に大きな傷痕がある男がいた。男が二つ目の石をナーガに向けて投擲しながら叫ぶ。「サソリが罠を張ってる! 魔石を全部持って来い!」そう早口で指示した後、森の中へ駆け込んで行く。


 ナーガは雄叫びをあげて石を投げた男を追って森に入る。


 魔石を投げた男の指示にいち早く反応したのはソラだった。

 ソラは私を地面に下ろすと小屋の中に入り、すぐに小さな麻袋を持って出てきた。おそらく麻袋の中に魔石が入っているのだろう。


 その間にトカゲと呼ばれた男が赤毛の青年にポーションを飲ませていた。

 赤毛の青年はイヴァンと呼ばれた男の死体をじっと見ている。握りしめた拳が小さく震えていた。

 ポーションを飲ませ終わったトカゲという男に、ソラは麻袋を渡す。トカゲは麻袋をソラから受け取り、


「ボケッとすんな!」


 そう言ってルドルフの頭を殴る。

 ルドルフがトカゲを睨み付け、トカゲも睨み返す。


 暫くしてルドルフが舌打ちをして視線を反らし、落ちていた長剣を拾いあげ、もう一度だけイヴァンと呼ばれた男の死体を見た後、無言で森の中に駆けていった。


 トカゲはソラに「お前はありったけのポーションを持ってバナハと来い!」と言い、ルドルフの後を追うように森へと姿を消した。



 ソラが再び小屋に入ろうとした時、小屋の中から男が一人姿を表した。


 褐色の肌と縮れた黒い髪を持った目付きの悪い男だ。

 腰に長剣を二本と短剣を一本差しており、右手に大量のポーションが入った木の箱をぶら下げていた。


「あーあ、トカゲの奴、あんなに慌ててよぉ。だっせぇなぁ。そう思わねぇか? ボウズ」


 ソラに話しかけながらのんびりと辺りを見渡す。


「んん? ……はははっ。なぁんだ、イヴァン。お前死んだのか? じゃあもう酒は要らねぇよな」


 そう言いながら死体の側に腰を降ろして服をあさり始める。

 死体の服から小さな酒瓶を取り出し「あったあった」と嬉しそうに笑っている。そんな男と目があった。


 驚いたような顔をして男が近付いてくる。


「なんだこいつ? ……スライムか?」


 男は手を伸ばして私を掴もうとする。私はもう色々と限界で、反応する事も出来ずに呆然と大きな手が迫って来るのを見つめていた。


 ……と。

 突然視界から男の手が消えた。


(あれ?)


 っと思って、次の瞬間ぎょっとした。ソラが男より先に私を拾い上げたのだ。


(ちょっと! そんなことしたら!)


 慌ててソラの手の中から出ようともがいたが、ソラは私を両手で圧縮し、無言で(出てくるな!)と伝えてくる。


「……へえ~」


 男の面白がっているような、苛立ったような声が聴こえる。


(ヤバイ!)


 ソラの手の隙間からなんとか体を出して急いでソラの肩の上に移動する。「おい!」っと慌てたソラの声が聴こえるが無視した。


 男と再び目が合い。今度は睨み合う。……というより私が一方的に睨み付けていた。


(ソラになんかしたら噛みついてやる!)


暫く睨みあった後――バナハという男はじっと私を観察しているだけだったが――男が私から興味を失ったように目を反らし、今度はソラを見る。


「……おい、ぼうず、”命令”だ。お前はくんな」


 それだけ言うと男は散歩にでもいくかのように森へと歩いていく。


「バナハ! 俺も行く!」


 唖然とソラの横顔をみる。

 だが止めようと私が口を開く前に、足を止めたバナハが少しだけ振り返り、言った。


「要らねぇよ。戦った事もねぇガキなんかいても足手まといになるだけだ。どうしても来てぇっていうなら、……俺がここでお前を殺す」


 ゾッとするような冷たい声と目だった。


 真っ青になり黙るソラを一瞥し、男は再び歩き始め。


 立ち止まった。


 男は腰にある短剣を外してソラに放り投げた。


 慌てて受け取ったためバランスを崩して転びそうになったソラを見て男は面白そうに笑った。


「それやるよ、じゃあな」


 ヒラヒラと手を振り、バナハは森に姿を消した。

【後書き】

戦闘シーンって難しい……。

ちゃんと分かるように書けているか不安( ;∀;)

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