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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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30 番外編~温かなスープ~

「何時までも“君”って呼ぶのもなんだしさ、私が勝手に名前つけてもいい?」


 ハルがまた馬鹿な事を言ってきた。


 こいつは驚くような事を知っている癖に当たり前の事を知らない。こんな時、以前聞かされた”異世界から転生した”という話が本当なのではと思ってしまう。


「……別に良いけど……無理だろ?」

「?」


 不思議そうな顔をするハルを見て(ああ、こいつ本当に知らないんだな……)と思う。


 名付けは聖職者のみに許された力だ。そして聖職者なら誰でも良い訳でもない。聖職者にもランクがある。名付けが出来るのはその土地の神殿長とその下に付く副官だけだったはずだ。

 名付けが出来なくても副官にはなれるだろうが、神殿長にはなれない。

 隷属を施すのも神殿長の役目だ。”奴隷は神の管理下にある”ため、神の代行者でもある神殿長が行う。神殿長は国の機関にも属しておりその権力は絶大だが、罪を犯した場合の失脚も早い。何故なら罪を犯した瞬間に“名付け”と“隷属付与”の力が消滅するからだ。


 今の俺は隷属状態にある。“人間”に名付けするのと”奴隷”に名付けする事は全く意味が異なる。

 隷属中は隷属を付与した神殿長の力が働いているため、その力の下に置かれている奴隷に名を付けれるのは神殿長より上の存在……。神もしくは神に準じる者にしか行えない行為ということになる。


 いくら“変”なお前でも無理だろ。


 そう伝えようとしたがその前にハルが口を開いた。


「“(ソラ)”なんてどう?」

「……」


 思わず耳を疑った。


 隷属印のあるうなじが熱い。

 震えそうになる声を必死で押さえ込んでハルに問いかける。


「何でお前名付けできんだよ」

「?」


 不思議そうな顔でハルは俺を見上げる。

 そのぽけっとした顔に少しだけ冷静になれた。名付けの事を簡単に説明してやると、ハルは変な顔をした後、申し訳なさそうにこう言った。


「今、君のステータスを確認したんだけど。……名前、確定しちゃったみたいなんだよね」


 俺は今度こそ本気で頭を抱え込んだ。


 こいつ今なんつった? “ステータスを確認した”? こいつ『鑑定』持ち?


 『鑑定』は現在確認されているスキルの中で、最も貴重とされているスキルだ。


 当然だ。無条件であらゆる存在の情報を得る事が出来るのだから。

 『鑑定』スキルを持っている者の数の少なさも貴重性を高める要因となっている。確か1つの国に20~30人程しかいなかったはずだ。

 国にもよるが、個人がどんなスキルを保有しているかを定期的に確認し、報告する事は国民の義務になっている。国は貴重なスキルを、個人はより良い生活を手に入れる事となるので不満の声を聞いた事はない。


 通常は生まれた時に。そして5歳から29歳までは3年毎に、30を越えると10年毎に確認する。

 スキルの確認には特殊な魔法紙とインクを使うため金がかかるが、国か定めた年齢時のスキル確認は無料で受ける事ができる。


 人によっては一年毎に自分で金を払ってでも確認する奴もいる。スキルによっては自分の価値が大きく変わるのだ、当然だろう。



 貴重な『鑑定』のスキルを持ち、そして神の代行者でもある神殿長よりも神に近い……喋るスライム。


 頭が痛ぇ……。

 ホントに何なんだこいつは……


 ハルをじろりと見る。ハルはビクッとした後、ちょっとだけ縦に伸びた。変な形だ。

 そのバカっぽい姿を見ていると、なんだか混乱している自分の方が馬鹿に思えてきた。


 深呼吸変わりにため息をついて自分の名前について聞いてみた。

 ハルの事だから何も考えてないというのも十分有り得るので、期待していなかったのだが、ハルの触手がおずおずと持ち上がった。


 自然と視線が上を向く。


「“ソラ”は”空”の事だよ」


 そこには青い空が広がっていた。

 小さな白い雲がゆったりと流れていくのをみて(ああ、ハルみてぇだな)と思った。


 うなじの熱がゆっくりと引いていく。恐らく“上書き”が終わったのだろう。

 ハルは気付いていないようだが、ハルが俺に“名付け”した瞬間、俺はハルの物になった。


 神殿長が俺に隷属印を入れた時に、俺の中に流れ込んできた命令は『善となり主となった者に従え』だった。隷属印に刻める命令は印に力を流し込む一度のみ、そしてそれは絶対だ。


 そう、絶対だったのだ。けれどもそれすらハルは塗り替えた。



 ぼんやりと空を見上げていたら爺さんの最後の言葉を思い出した。




『ぼうず、確かに名前は腹の足しにはならん。だがな、名前は心を満たしてくれるぞ』




 ハルから新たに与えられた命令は。流れ込んできた思いは。


 『自由でいて欲しい』ただそれだけだった。


 なんだそれは。奴隷に与える命令じゃねぇ。そもそも命令ですらないじゃないか。

 俺という器を与えられ、その中に温かなスープをたっぷりと注がれた。そんな感じだった。


 鼻の奧がツンとする。カッコ悪ィ。


 だからハルにスキルの事を問い詰めて意識を無理矢理反らした。



 爺さんの言った通りだった。


 俺はその日 ”人間(ソラ)” になった。

【後書き】

ハルは気付いていませんが、ソラの隷属は既に解除されておりました~。


ならば何故、ソラは逃げ出さないのか……。


その理由は本編で!

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