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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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28 番外編~少年~

 親の顔は知らない。


 5歳の夏に「今日からおまえは奴隷だ」と言われ、施設の人間に神殿に連れていかれた。

 うなじに奴隷の印を入れられる時に、俺を連れてきた施設の女の一人が「可哀想に……」と呟いたのを覚えている。その時初めてこの状態が『可哀想』な事なのだと知った。


 相続奴隷となった俺を受け入れる事となったのは、薬草や香辛料を取り扱っている商人の男だった。

 背の低い鼻息の荒い太った親父で、自分より上の人間には媚び諂い、下の人間は家畜以下の扱いをする。そんな何処にでもいる普通の人間だった。


 男の店の馬の世話が俺に与えられた仕事だ。

 馬に餌と水を与え、糞尿の始末をし、毛並みを整える。寝泊まりは馬小屋の脇にある小さな小屋で、常に獣の臭いがし、夏は暑く冬は凍えるほど寒かった。

 同じ時期に厩番となった男は、こんな生活は嫌だ、早く店の中で働ける使用人になりたいといつもぼやいていたが、俺は使用人達の顔色を伺いながら仕事をするより馬の世話をしている方がよっぽど気が楽だと思っていた。


 男の店に、週に一度育てた野菜を卸しにやってくる年老いた爺さんがいて、俺の事を「空色の目のぼうず」と呼び、生でも食える野菜が入った袋を誰にも気付かれないようにそっとくれていた。

 何故俺にだけそんな事をするのかと聞くと、昔世話になった知り合いによく似ているからだと教えてくれた。爺さんも昔、相続奴隷として働いていて、その時目をかけてくれた男に俺が似ているそうだ。


 「俺とそいつは別物だぜ」といったが「そんな事は大した問題じゃないんだ」と言って、細い目を更に細くして笑っていた。爺さんは相続奴隷の年季が開けた後、名前を買って農夫になったのだと言った。


「ぼうず、名前は良いぞ。お前もいつか名前を買え。そうしたら人間になれる」


 それが爺さんの口癖だった。

 俺は決まって「名前なんかより食い物の方がいい。名前じゃあ腹は膨れない」と言ってまともに取り合わなかった。


 8歳になったばかりの冬、いつもなら「じゃあまたな」と言って帰って行く爺さんが珍しく別の事を言った。


「ぼうず、確かに名前は腹の足しにはならん。だがな、名前は心を満たしてくれるぞ」


 俺には爺さんの言っている事がさっぱり分からなかった。爺さんもそれだけ言うといつもと同じように「じゃあまたな」と言って帰っていった。


 爺さんが死んだと知ったのはその数日後の事だ。


 その後、俺は熱病にかかり商人の男によって盗賊に売り渡された。

 盗賊に売られたと知った時はもう終わりだと思ったが、直ぐに今までの生活と大して変わらない事に気付いた。世話をするのが馬から人間に変わっただけだ。気まぐれに殴られるのも、常に飢えている事も同じだ。何も変わらない。


 俺を買ったバナハという男は、日に焼けた褐色の肌と縮れた黒髪の目付きの悪い男で、長剣とは別にいつも腰に黒い革の持ち手のナイフを差していた。

 「ガキは嫌いじゃねぇ」と言って機嫌が良ければ食い物が与えられた。


「お前死にかけだったし安かったからな」


 と言って笑っていたが、ただ酒の勢いで買ったのだろう。

 俺を買った次の日の朝、酒が抜けたバナハが俺を見て「なんだこのガキ、誰が買ったんだ?」と言ったのを覚えている。

 バナハは剣の腕がたつので盗賊達の中でも上位の権力者だが、直ぐに頭に血がのぼる。人質を殺して交渉を決裂させ乱闘になる事もしょっちゅうだ。


 そんな盗賊達との暮らしも3年も経つ。殴られる事も飢えにもいい加減馴れた。


 そんな頃、あいつに会った。


 ハルと名乗る白いスライム。


 というか、こいつスキル持ちすぎじゃないか? 俺が知っているだけでも『収納』『錬金術』は確実に持っている。どちらも1つでも持っていれば重要人物として国の保護対象になるスキルだ。


 そもそもスライムは喋ったりしない。

 理由は前世が人間だったからとか訳の分からない事を言っている。


 ハルは昼に川に行くと必ずいて、俺に飯を食えと言ってくる。

 冗談半分に一度「俺を太らして食う気か?」と問いかけたら、真面目な顔で「食う気はないが、太らす気満々デス」と言った。


 なんだこいつ。


 別の日に会った時、機嫌が良さそうだったのでどうしたのか聞いたら「めっちゃ良い石見つけた!」と飛び跳ねながら答えた。よっぽど嬉しかったようなので、綺麗な石だったのかと聞いてみた。

 女は綺麗な石が好きだと、女好きな盗賊のルドルフが言っていたのを聞いたことがあったからだ。嘘か本当かは不明だが、ハルは前世とやらで女だったらしいのでそうなのかと思ったのだが、ハルは「綺麗な石? ただの石だけど?」と言った。


 どうやらハルは綺麗な石よりなんの変哲もない石が好きらしい。


 なんだこいつ。


 そういえばひとつ気になっていたことがあったので聞いてみた。


「なぁ」

「なあに?」

「アラサーって何だ?」

「……」


 微妙な顔をして「……世の中ってのは知らない方が良いこともあるんだぜ」と言って目を反らした。


 こいつ、たまに言葉使いが変になる。異世界とやらの女はみんなそうなのか?

 そして結局教えてくれなかった。何でだ?

【後書き】

ハルはまだ知りませんが、スキルだけはチートです。


次話もソラの番外編です。

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