表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/109

24 少年と私。3

「人間? スライムが? え、苗字?」


 少年は混乱している。

 一度に情報を与えすぎただろうか? 少年の事を教えて貰いたいのだが今は無理っぽい。

 まぁ、いっか。

 光茸を焼きながら少年が復活するのを待つ。


「あ、そうだ。君に名前はないの?」


 『鑑定』で名前が“なし”になっているのは知っているが、もしかしたら隸属状態になっているせいで表示されていない可能性がある。

 もし名前があるのなら聞いておこうと、そう思ったのだが、少年は”何言ってんだこいつ”みたいな顔をした。


「俺は借金奴隷の子だ、借金が多い奴隷のガキには基本名前は付けねぇ。親が死んだらその子供が代わりに奴隷になって借金を返さなきゃならねぇからな。それが決まってるガキにわざわざ名前なんか付けねぇよ」


 少年が言うにはこの世界には三種類の奴隷がいるらしい。犯罪奴隷、借金奴隷、そして相続奴隷の三種類だ。

 犯罪奴隷は殺人や強盗などの犯罪者に課せられる刑罰のひとつで、余程の恩赦がない限り一生奴隷として生きていく。


 借金奴隷はその名のとおり借金を返済出来なくなった人が奴隷となり、肉体労働で借金を返済する。犯罪奴隷とは違い、ある程度の人権が認められているので最低限の衣食住は保証される。ただ、犯罪奴隷程ではないがかなり厳しい肉体労働を課せられる場合もあるので、病気や怪我での死亡率もそれなりに高い。


 相続奴隷は主に借金奴隷を親に持つ子供達が、親に代わり借金を返す制度だ。

 親が借金を返す前に死亡した場合に、その子供がその借金を背負わなくてならない。

 ただし相続奴隷には厳格な期限が設けられており、最長で10年と定められている。奴隷と付くから忌避感が強いが、昔の丁稚奉公みたいなもので、親を亡くした子供の救済措置的な面が強いらしい。


 隸属自体が禁術ではないのかと聞いたところ、奴隷になった時点でその人は“人”ではなく“物”と判断されるらしい。禁止されているのは“人”への使用なので奴隷に使用するのは問題ないそうだ。

 それに隸属の魔法には奴隷を犯罪に使われないようにする効力があるため、逆に無い方が問題らしい。

 なので少年は盗賊と共にいるが、犯罪行為は出来ないため荷物運びや洗濯などの下働きをしているらしい。


 当たり前だが隸属魔法は国の機関に所属している人にのみ使用が許可され、奴隷になった人達も全員、国の機関に登録される。

 では何故少年が盗賊なんかの奴隷をしているかというと、少年の勤務先となる店の商人に死んだ事にされ売られたからだそうな。


 なんじゃそりゃ。国の機関もっと頑張って取り締まってくれ。


 私が変な顔をしていると、少年が何でもない事のように「よくある事だぜ」と言った。

 ちなみに少年を買った盗賊達の半数以上も、少年と同じように先代の盗賊に買われてそのまま盗賊になったらしい。


 なんじゃそりゃ。


 私がカルチャーショックを受けている間に、少年は食事を済ませたらしく立ち上った。


「もう行く、あんま帰るのが遅いと殴られっから」


 引き止めようかとも思ったが止めた。今引き止めてもどうすればいいのか分からない。

 今は少年と知り合えただけで満足しておこう。

 川を渡って向こう岸に行こうとしている少年に声をかける。


「明日も来る?」


 少年は困惑と苛立ちと驚きが混じった複雑な顔をした。


「ご飯準備しとく」


 少年は少し戸惑ったような声で「分かった」とだけ言って川を渡って帰っていった。森に入る直前に一度だけ振り返ってくれたので、触手をブンブン振っておいた。


 ポーションは使って貰えなかったけど次に会う約束(?)は取り付けた。取り敢えずは一歩前進かな。

 少年の話し方は結構しっかりしていた、この感じだと暴力は振るわれていてもすぐに殺される事はなさそうだ。……そうだと信じたい。


「私も行こう」


 やるべき事が出来た。

 『収納』の食材のストックが大分減ってしまった、明日の分位はあるが補充しておいた方がいいだろう。

 周囲を確認してから人に『擬態』し、使われなかったポーションを回収する。少年ではなく盗賊達に見付かったら厄介だ。


 スライムに戻り少年がいる森とは反対の森に入る。ゾジャの場所は特定済みだ。まだ知らない食材もいくつかあるし、レベルアップした『擬態』で手を釣竿や網にすれば魚が釣れるかもしれない。人間だった頃でも釣りはしたことがないがやってみよう。


 足取りが軽い。


 たった一度、ほんの僅かな時間話しただけなのに、私の中で少年は大切な存在となった。

 依存しているのかもしれない、少年にとっては迷惑な話かもしれない、けどそれがなんだというのだ。私が少年を大切に思っている気持ちに変わりはない。


 そしてそれと同時に、今まで以上に死にたくないと思うようになった。少年を残して死ねない。死んでたまるか。


 美味しそうに食事をする少年の姿を思い出す。

 昨日からあれほど揺らいでいた気持ちが定まった。


(あの子を守りたい)


 そう、強く、思った。

【後書き】

後半のハルと少年の会話が、まるで妻を持つ男を見送る愛人みたいだな……と思いながら書きました。……ということは盗賊が妻か(* ̄∇ ̄*)


少年の名前は次話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ