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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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22 少年と私。

 暫くして昨日と同じ昼過ぎ頃に『索敵』の画面にこちらへ近付いてくる赤い点が表示された。『鑑定』すると少年だった。


 武器となる石を物色していた私は、急いでスライムの姿に戻りポーションを置いた対岸の石の陰に隠れる。

 少年のHPは幸いにもあれから減ることはなく、昨日よりも若干回復していた。


 ドキドキしながら少年を待つ。


 少年の姿が見えた。

 昨日程ではないが、両手に持った盥の中に大量の洗濯物が入っている。右足も相変わらず引き摺っている。

 ポーションから3メートル程離れた場所で少年が歩みを止めた。おそらくポーションを見付けたのだろう。


 私は石の影で(よっしゃぁ!)と声を立てずにガッツポーズをする。ミッション1クリアである。

 少年は訝しげにポーションを見ている。

 辺りを警戒して見渡しているが誰もいるわけない。私の『擬態』は完璧なのだ。ふふん。

 少ししてから少年は昨日と同じ場所で洗濯を始めた。


(あ、あれ? ポーション使わないの?)


 私は石の陰から少年を観察する。

 使うどころか手に取る気配すらない。無視である。


(な、何で?)


 次の瞬間、私はこの作戦の重大な欠点に気付いた。

 例えば、もし私が会社に行こうと家を出た玄関先に大好きなお酒が置いてあったとしよう。

 やったぁラッキー! と言って手に取るだろうか。


 ……絶対に取らない。

 逆に恐怖を感じるに違いない。これ置いたの誰だよ……と。


(ど、どうしよう)


 アワアワしているうちに少年は洗濯を終えて帰る準備を始めた。少年が立ち上り帰ろうと一歩を踏み出した瞬間、頭が真っ白になった。


「ちょっ! 待ってったぁ!」


 私は声を出していた。

 しかも焦ってたから変な感じに言い間違えた。

 慌てて振り返る少年。石の陰で項垂れて固まる私。


 なんかもう、色々な意味でどうでも良くなってきた。涙目でぐっと顔を上げる。

 まだだ、まだ姿は見られていない、なんとかしてこの場を乗り切るしかない。何としてでも少年にポーションを使ってもらうのだ!

 頑張れ私!


「……誰だ?」


 少年から当然といえば当然な質問が飛ぶ。


 でも誰って言われても……。ねぇ……。

 「スライムです」なんて正直に言えるわけないし……。

 「横浜ハルです」いやいやいやいやしっかりしろ私。


「誰だ! 何処にいる!」


 えー! ちょっと待ってぇ!


 その時、少年が後退りをした音が聴こえた。この場から立ち去ろうとしているのだと気付き、私は再び真っ白になった頭で叫んだ。


「こ、この森の主!? みたいな!?」

「……」

「……」

「……は?」


 ですよね~。


「え~っと……自称……なんだけど」

「……なに言ってんだ? 馬鹿なのか?」


 うっぐぉぅ!

 この子、結構口悪いな! 言葉が心に突き刺さるわ!

 心のライフがガンガン削られて行くのを感じる。でも私は諦めない、諦めたらそこで終了なのだ。


「……私の事はどうでもいいのデス。そんな事より何故ポーションを使わないのデスか」


 なんか変な喋り方になってる、何故!? でももうこれで行くっきゃない。

 退路は絶たれた。そんな私は森の主(自称)。


「……こんな怪しいモンに手を出すわけないだろ?」


 呆れたような言葉が返ってくる。ですよね~。


「それは怪しい物ではありません、貴方の傷を治したくて私がそこに置いたのデス。遠慮せず使うのデス」

「……いや、要らねーし」

「いやいや、そんな。ご遠慮なさらずに」


「……俺もう行くから」


 エー!!!


「えっ、ちょっちょっと待っ! ええっと……あ、そうだ、じゃあ食べ物は? 食べ物! 食べ物はいかがっすか!?」


 アホか私は。

 ポーションが駄目なのに、食べ物なんかで引き留められる訳ないだろう! と心の中で突っ込む。


「……食い物」


 なんと! 意外といけた! さすが成長期の男の子! ハラペコ万歳!


「そうデス! 食べ物! 私の使いを今そちらに寄越します。受け取って下サイ!」


 そう言うと私は今いる場所から少し離れた所までダッシュした。もちろん石に隠れながらの移動だ。そしてピョンっと大きめの石の上に飛び乗り姿を表す。


 少年はビクッと体を震わせ私を見る。

 少年と目が合った。綺麗な水色。春の青い空の色だ。


 私は『収納』から取り出しておいた、葉っぱにくるまれたゾジャの実のお焼きを“じゃ~ん”と取り出す。

 本当は温めたかったがさすがに少年の目の前で『錬金術』を使う訳にはいかない。


 飛び乗った石の上にお焼きを置いて少し離れる。ついでに怖がらせないようにと出来るだけ美味しそうにプルプルしてみた。


「……スライム? 変な色だな」


 え、そうなの?

 プルプル。



「……気色悪ぃ」


 プルプ……何だと!


「失敬な!」

「喋った!」


 あ……喋っちゃった。……もういっか。

 そんな事より大事な事がある。


「……美味しそうと言え」

「……」

【後書き】

ついにぼっち卒業。


ハルさんは色々考えるけど、いざとなったら本能で行動するタイプです。

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