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女神ちゃん

 グスグスと鼻をすする女神ちゃん。


「少しは落ち着いた?」

「はい、すびばせん。もう大丈夫です」


 まだ鼻をすすってはいるけど大丈夫だろう。


「じゃあ、とりあえず自己紹介ね」


 女神ちゃんは私の名前くらい知っているだろうけど、こういうのはちゃんとしておかないと。


「私は横山ハル。34歳。趣味は料理です」

「私はリーハローゼス。えと、女神です。年齢は神族にはありません。趣味は……美味しいものを食べることです」


 趣味の所でちょっと声が小さくなったのは出会った時を思い出しちゃったからかな?


「それで? 女神ちゃんは私に用があるんだよね? 私なんかやらかしちゃった?」


 女神ちゃんは今回の事は特例だと言っていた。

 もちろん私に思い当たることなどないが、気がつかないうちに何かしてしまったのかもしれない。と、思わず眉を寄せる。


「あ、ち、違うんです! あの、どちらかというとこちらからお願いしたい事というか、相談というか、謝罪したい事が……ありまして」

「女神ちゃんが? 私に?」

「はい……」


 申し訳なさそうにこちらを見てくる女神ちゃんに、なんだか諦めと懐かしさがまじったような複雑な感情かがわき上がる。


「あ」


 これあれだ。

 新人がミスを報告して来たときのやつ。


 ちょと女神ちゃん。

 貴女一体なにやらかしちゃったの?



 女神ちゃんから聞かされた話はなんとも微妙なものだった。


 簡単に説明すると、女神ちゃんが管理する世界、イシュハンメルに産まれるはずだった魂(私)が間違って地球に産まれてしまったらしい。そしてその事実がつい先程私が死んだ事により判明。

 本来なら死んだ魂は自動的に自分が在るべき世界の輪廻の輪に還り、新たな生命として産まれていくそうなのだが、私の魂は元々在るべき世界とは別の世界で長い間存在してしまっていたため還るべき道を見失ってしまったらしい。

 そしてそれに気付いた女神ちゃんが慌てて私の所へやって来たそうな。


 ちなみに何故私の魂が間違った世界に生まれてしまったかというと、女神ちゃんが地球へ行った時にうっかり世界と世界をつなぐ扉の鍵を閉め忘れたかららしい。


「う~ん?」


 これってどうなの?

 神様的には重大なミスらしいけど人間の私にはいまいちその重大さがわからない。


「すみませんすみません」

「あ、いや、別に怒ってないよ。そもそも本来在るべき世界に生まれないってそんなに大変な事なの?」

「はい。魂は輪廻転生を繰り返す事により魂の質を高めます。ですが一度でも輪廻の輪を外れてしまうと魂そのものが変質してしまいまして……」


 あれ? なんかよく分からないけどかなりヤバい方向へ話が進んでる?


「結論から言いますと……。もうハルさんは人間には生まれ変われません」

「マジで?」


 人間以外……。鳥になって空を飛んでみたいとか、金持ちの家のネコになりたいとか妄想した事はあるけど、こんな風に現実の話として突きつけられるとちょっと、いや、かなり遠慮したいな。


「あ、でも生まれ変わるなら今の人としての記憶はないよね?」


 だったらまだ良い……のか?

 暖かい布団も美味しい料理も知っている『横山ハル』じゃない。何も知らない新しい生命として誕生するだけだ。

 というかそもそも前世なんか完璧に覚えている人なんかいないよね?

 確かに来世の自分が苦労しそうなのは嫌だけど、生まれ変わったら今のこの感情も忘れるだろうし。


 と、よい方に考えてみたのだが、悲痛な顔をした女神ちゃんが此方を見てくる。やめて。


「……もしかして記憶ありのまま転生?」

「……はい」

「ちなみに種族とかって」

「……スライムです」

「……」

「……」

「え、一択!?」


 女神ちゃんはゆっくりと頷いた。

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