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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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20 で?

 少年が見えなくなっても暫くそこから動けなかった。

 頭の中は (どうしよう) で一杯だ。

 少年を救う方法というか、少年にかけられている隷属を解除する方法なら実は当てがある。


 どうやるのかって?

 簡単だ、隸属の印に流れている“主”とやらの魔力を全部食べちゃえば良いのだ。魔力で縛られているのならその元となる魔力が無くなればいい。


 スライムである私にならそれが出来る。

 何故ならこの世界にスライムに食べられない物などないからだ。

 ぶっちゃけこの川原に転がっている石も食べれるし、毒草などの人体に害のある物でも問題なく食べる事が出来る。

 魔力を食べる魔物にとって魔力に満ちているこの世界そのものが食料なのだ。不味いから私は石なんて食べないけど。


 もちろん魔物の種類によって好き嫌いや害になる物もあるだろう。だがスライムは別だ。この世界の全ての物から魔力を吸収出来る。


 理由は弱いから。好き嫌いなどしていては生きて生けないほどに。

 そして、少ない魔力でも生きていけるスライムだからこそ可能なのだと思う。


 そもそも魔石以外の物から魔力を吸収するのはかなり効率が悪い。

 魔石は一口でお腹一杯になるのに、体が小さくなった今でも普通の食事は人間だった頃と同じ量を食べているのがその証拠だ。


 だから少年の隸属を解除する事は可能なはずだ。


 では何に悩んでいるのかというと、助けた後だ。

 隸属を解除するのは良い。怪我もポーションでなんとかなるだろう。食事も森に入れば材料がある、少ないけど用意してあげられる。


 で?


 それで? その後は? ずっと森で一緒に暮らす?


 無理だろ。


 もちろん少しの間だけなら問題ない、けど忘れてはいけない。私がスライムだという事を。


 レベルが上がってやっとゴブリン並に強くはなったが、それでも私が世界最弱のモンスターである事に変わりはない。私が森で生きてこれたのは、神様達(みんな)からもらったスキルがあるからだ。


 けどそのスキルがあっても死にかけた。

 そんな私が少年を守って森で生きていく事は不可能だろう。そもそも私より少年の方がステータスが上だ。


 ではどうすれば良いのか。


 一番良いのは良識ある人間に少年を保護して貰う事だろう。日本で言う警察や児童相談所だ。


 ただこの世界にそんな場所が在るだろうか。

 小説なんかでは騎士団とか神殿とかに併設されている孤児院だけど、この世界でもそうだとは限らないし、もしあったとしてもそれが何処にあるのかも、ここからどのくらいの距離にあるのかも不明だ。


 ポーションで怪我を治しても体力などが付くわけではない。連れて行くにしても休みながらの移動になるだろう。

 そしてそんな少年を必ず“主”とやらは追って来る。

 この世界では違法でもある禁術を使い、なおかつ抵抗出来ない少年を殴るような最低の奴だ。捕まれば私も少年も確実に殺されるだろう。もしかしたらもっと酷い目にあうかもしれない。


 良識ある人達にここまで来て貰うのが一番良いのだろうが、その人達を呼ぶのは私だ。

 スライムなんかの声に耳を傾けるとは思えない。


 今さらだが、そもそも私の言葉が通じるのかどうかも不明だ。だって私、日本語で話してるし。


 それから少年自身の事。


 私は少年の事を何も知らない。少年がどうしたいのかが分からない。


 もちろん今の現状に満足している訳がない。

 それに少年以外に隸属状態の人はいないのだろうか? もしいたら、その人達はどうすれば良いのか。

 さすがに何人もの食料を調達し、危険な森の中を移動するのは無理だ。


 いずれにしても厳しい状況だ。スライムの私に出来る事なんてほぼ無いに等しい。


「……」


 うつむいて地面を睨み付ける。


 分かってる。


 これはだだの“言い訳”だ。

 私にはなにも出来ないからと逃げる為の言い訳だ。


 空を見上げるといつの間にか日が斜めに傾いていた。かなりの時間をここで過ごしていたらしい。


 風が吹いて川の水が散る。

 大分暖かくなったとはいえまだ夜は少し冷える。とりあえず急いで休む場所を探した方がいいだろう。


 少年が消えた森とは逆の森の方へと進み、森に入る直前に振り返って少年が消えた場所を見た。


「……あの子、薄着だったな」


 ぽつりと呟いた自分の声が、思っていた以上に重く、心にのし掛かってきた。

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