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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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15 戦い

 少しだけ来た道を戻り、枝が重なりあっている場所に身を潜める――見たこともない小さな虫が沢山いるけど気にしてられない。


 息を殺して赤い点が近付いてくる方向を確認する。


 暫くすると私と同じように枝を伝って移動してくる蜘蛛に良く似たモンスターが現れた。

 大きさは私と同じ位で、黒いボディに赤い眼を4つ持つ魔物だった。テレビで観たタランチュラによく似ている。

 ただ、よく見ると体にうっすらと縞模様があり、口(?)からは黄色い牙が見える。

 しかも8本の脚全てが硬そうな甲羅に包まれている。

 あの脚でガードされたらもうなすすべが無さそうだ。


(っていうか武器も防御力も充実しすぎ……)


 レベル1のスライムとHPの差はそんなに無いのに、身体のスペックにえげつないほどの差がある。スライムには武器どころか防御力すら無いのに。


 だがレベルの上がった今の私なら十分倒せる相手だ。

 スキルの『毒』が少し気になるが、スキルレベル自体が低いので『収納』に入っている低級ポーションで回復出来るだろう。


 でもどうやって倒そう。

 石は使えない。

 『収納』から取り出した石を落下させて敵に当てるのが私の攻撃スタイルだから、同じ高さにいるラグノーにこの攻撃は使えない。

 石を持って直接ぶつけるのは不可能だ。

 スライムの貧弱な手では重たい石は持ち上げられない。


 だからといって今からここを出て高い所に移動する事も不可能。相手との距離が近すぎて今動けば確実にバレる。『擬態』をしていても無理だ。


 『収納』の中に何かないかと探してみるが、武器になりそうな物は適当に放り込んでいた木の枝ぐらいだ。

 『収納』から一番使えそうな大きさの木の枝を取り出してみる。

 結構頑丈な枝だが、殻に覆われていない体の部分もそれなりに硬そうだ。やっぱり木の枝では不安がある。

 私でも倒せそうな獲物だがここは諦めるしかないかもしれない。


 もうちょっと戦える体だったら良かったのになぁ……と、自分の白濁したプニプニな触手をみる。


 そこでふと気が付いた。

 『擬態』でこの手を剣のように変化出来ないだろうか。

 『擬態』には姿を隠すだけではなく姿を変える力もある、身体の一部だけなら今のスキルレベルでも出来るんじゃないだろうか。


 やってみる価値はある。


 私は右手が尖った剣になるようにイメージした。すると、右手がウニョウニョと波打つように動き始める。


(細く。長く。鋭く)


 必死でイメージし続けると、遂に右手が細長く変化した。剣というよりアイスピックとか千枚通しみたいになったけど、これはこれで成功だろう。もしかしたら剣より使えるかもしれない。

 変化していない左手で右手をちょんちょんと触ってみると硬い感触が伝わってきた。

 右手の感覚もあるがかなり薄く、分厚い布越しに触っている感じだ。

 これなら攻撃しても自分自身が痛い目に合うことはなさそうだ。


(これ使える!)


 武器はある、変化した右手で硬そうな脚ではなく胴体の部分を突ければ確実にダメージを与えられるはずだ。

 けれどどんなに上手く事が進んでも抵抗は必至だろう。死を悟った生物の怖さはヤートが教えてくれた。ラグノーは必ず死物狂いで私に反撃してくる。


 少し考えてから、私はアイスピック状になった右手の先に収納から取り出した痺れ薬をまぶした。

 射した時に体内に薬が入った方が効き目がいいだろう。もちろんラグノー自身にも痺れ薬をぶつけるつもりだ。

 追加で取り出した痺れ薬を左手に握りこみ、直ぐに撒けるようにする。


 覚悟を決めて枝の下にある僅かな隙間からラグノーの様子を伺う。ラグノーはもうすぐそこまで近づいて来ていた。


 カサカサという足音が徐々に大きくなる。


 あと100センチ。


 あと50センチ。


 あと10センチ。


 ラグノーの脚が視界に入った瞬間、私は持っていた痺れ薬をラグノーに向けて放った。

 慌てたように多々良を踏むラグノーの【状態】に“麻痺”が表示されたのを確認した私は、ラグノーに向かって右手を力一杯突き出した。


 少しの抵抗を感じた後にパキッという殻にひびが入ったような音がして、右手が一気にズルリと進む。

 硬い物を削る感触と柔らかな肉の感触がほぼ同時にアイスピック状の右手から伝わってきて、思わず力を緩めそうになったが、体重をかけて更に押し進めた。


「キーッ!!!」


 という甲高い音がラグノーから発せられた。


 ラグノーの残りのHPは3。

 更に手を押し込む。硬い物に再び当たったと感じた瞬間に、殻が割れるような音と同時に右手の先がラグノーの体を突き抜けた。


 ラグノーは体を回転させながらもがき、遠心力に耐える事ができなかった私は枝の上にポテッと転る。運良く枝の上から落ちずにすんだが、まだラグノーは生きている。


 慌てて体制を立て直してラグノーに向き合い『収納』から石を出して盾にしようと思った次の瞬間、ラグノーはカチカチと牙を鳴らしなが崩れ落ちた。


 数秒後、ラグノーは息絶え、私は初めて “戦って” 勝った。

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