14 鳥と収納
『索敵』のマップで目的地までのルートを確認しながら慎重に進む。
今回はヤマの群生地帯でもある池を迂回しながら進むルートだ。
ただ、途中までは木の上を移動すれば良さそうだが、川と森の間に平原がありどうしても一度は地面に降りる事になる。
枝を伝って川まで行くルートもあるが、ピエルというモンスターの縄張りと被っていて、枝を伝って行く方が危険な場所になっている。
なぜならピエルは鳥系のモンスターだからだ。
一度だけ遠目に見ただけなので大きさなどは分からないが、おそらくカラス位のサイズだろう。
ちょっとだけ≪卵≫の文字が脳裏をよぎる。
ピエルは魔物なので卵を産む可能性は低いが、ゾジャのように倒しても何か消えずに残る物があるかもしれない。
もしそれが≪卵≫だとしたらぜひ欲しい。卵は色々な料理に使える万能食材だ。
だがそれと同時にある苦い思い出が甦ってきた。
あれは二十代最後の夏。
お盆の時期でお墓参りをしに行った時の事だ。
お供え物としてばあちゃんが大好きだった水まんじゅうを用意した。手を合わせた後に持って帰って自分で食べようと思っていたので、奮発してちょっとお高いのにしたのでよく覚えている。
それをカラスに盗られた。
しかも手を合わせている最中にだ。
目の前にいきなり現れたカラスに驚いたのと、水まんじゅうを盗られた衝撃で私は大声で叫んだ。
「のぉうあぁあぁああぁ!」
って。
察しの良い方なら既にお分かり頂けたかもしれないが、お盆の時期ってお墓参りする人が一杯いるんだよね。
騒いだりする所ではもちろんないので大きな声は目立つ。当然皆様何事かと私の方を見る。
そして私と私の視線の先にいるカラスを見て悟る訳ですよ。
(ああ、やられたな……)
と。
でもそれだけならまだいい、美味しく食べてくれるなら我慢する。知らない人達がいるなかで大声で叫んでしまったという辱しめも甘んじて受けよう。
だが奴は落としやがったのだ。
お坊さんの頭の上に…………。
今でもあの”ベチョッ”という音が忘れられない。
私は絶叫し、走った。
真夏の炎天下の中、お坊さんに土下座したのはあれが初めてだ。もう二度としたくない。
横山ハルの二十代最後の夏はそうして幕を閉じた。
まぁそういう訳で、私は鳥という生き物に若干苦手意識があるのだ。嫌いな訳ではない。……多分。
それにあの時、カラスに落とされたのは今や私の分身と言ってもよい水まんじゅうだ。きっとあれは“鳥には近づくな”という今世への警告だったに違いない。
この森の中にお坊さんがいるわけないが、もしかしたら丸い石の上に落とされる可能性だってある。
あの忌ま忌ましい“ベチョッ”という音が聞こえた気がして、思わずぎゅっと眉間にシワをよせる。
「……鳥には出来るだけ近づかないようにしよう」
そう呟きながら枝から枝へと移動しながら其処らにあるものを手当たり次第に『収納』へ入れる。
落ち葉だったり木の皮の切れ端だったり何かよく分からない種の様なものだったり、とにかく価値のあるなしに関係なくどんどん放り込んでいく。
そしてある程度『収納』に溜まったら必要のないものは捨てる。
何故こんな事をしているのかというと『収納』のレベルを上げるためだ。
最初に『収納』のレベルが上がったのは≪岩塩≫を取りに行った時。その次が洞穴の片付けの時。
経験からしてスキルレベルは“使い続ける事”と“新しい経験を積む事”で上がるのではないかと考えた。
まだ二回しかレベルは上がっていないので絶対とはいえないけれど、『錬金術』も同じ感じで上がったように思うのであながち間違えではないだろう。
なので、価値のあるなし関係なく手当たり次第に物を入れて『収納』に経験を積ませているのだ。
レベルが上がった事により今の『収納』のサイズはみかん箱から二人用冷蔵庫を経て、現在はファミリー用冷蔵庫にまでに進化した。
なかなかの広さだし生活するだけなら何の問題もないが、今後、更に大きな石を武器として使用するとなると『収納』の容量が足らずに採集した貴重な薬草などを諦めなくてはならなくなる事があるかもしれない。
それを防ぐためにも少しでも早く『収納』のレベルを上げようと色々試しているのだ。
ちなみに『収納』に“生物”を入れる事は出来ない。虫の死骸は『収納』出来たが目の前を歩いている虫を『収納』しても何も起こらなかった。
ザラザラと『収納』に溜まったゴミを棄てていると『鑑定』していた前方に赤い点が表示された。
【種族】ラグノー
【レベル】1
【HP】10/10
【スキル】『逃走(level1)』『毒(level1)』『潜伏(level1)』
鑑定結果をじっと見つめる。
あれ? もしかしてこの魔物、私でも倒せる?
【後書き】
ラグノーのスキルに『潜伏』入れるの忘れてました。
あと、魔物のピエルの卵について少し追記しました。




