女神 2
「ところで、今更なんだけど私に何かご用ですか? それとも死んだら女神様に会う事になってるんですかね?」
とりあえず一番の疑問を聞いてみることにした。
「いえ、違います。貴方に用事があるのは確かですが、死者の魂に神族が関わることは原則としてありません」
じゃあ今の状況は通常ではあり得ない現象って事か?
珍しい……レア? 私はレア物?
なんて呟いてみる。
ふむふむと頷いている私を複雑そうな顔で女神様が見てくる。
「あ、あの……。なんでそんなに落ち着いているのですか? 『死んだら』とおっしゃいましたので自分が死んでいる事は理解されているのですよね?」
「うん」
そりゃあもうバッチリ理解しているとも。まさか自分が事故死するとは思わなかったけど。
いやぁ強烈な体験でした。と素直な感想を述べるも、女神様は複雑そうな顔をしている。
「普通もう少し慌てたり悲しんだりするものなのでは?」
女神様からの問いにう~んと唸りつつ考えてみる。
確かに普通ならもう少し慌てたり悲しんだりするものなのかもしれない。
おそらく私が冷静でいられるのは私の帰りを待っている人がいないからだろう。
幼い頃に両親を失い、私を引き取り育ててくれた祖母も、もう10年も前に他界した。連絡を頻繁にとる友達もいない。
そんな事を女神様に語っていると女神様の瞳が潤んできた。
「幼い頃にご両親を失い、更には育ててくださった方すら……」
女神様の青い瞳からついに涙がこぼれおちた。
……あの~泣いてるとこ悪いんだけど、私、別に不幸ではなかったからね? 育ててくれた祖母は私をちゃんと愛してくれたし。
それに別に人付き合いがゼロという訳でもない。
会社の人達とは良好な関係を築けていたし、ご近所さん達ともゴミ出しついでに立ち話する位には仲良しだ。一軒家に住んでいたから都会のマンション暮らしのOLさんよかよっぽど人付き合いは頻繁だったはず。
そもそも私はひとりが苦痛ではないタイプの人間だ。ひとりで牛丼屋にだって入るし旅行にも行く。
と色々と追加してみたのだが、私が無理に明るく振る舞っていると勘違いした女神様はついに本格的に泣き始めた。
いや、あの、話し聞いて?
この子、こんな泣き虫で大丈夫なのかなと余計な心配をしつつ、とりあえず私は女神様……女神ちゃんの頭をなでなでしておいた。
女神ちゃんの髪ってつるさらでさわり心地最高なんだよ。