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元アラサー女子はスライムとして生きて行く(仮)   作者: おんじゃく
第一章 (スライムと少年)

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3 敵

 あと1分もせずにゴブリンの姿が見えるようになる。


 そう思った瞬間、私は洞穴の入口に向かって走っていた――実際は這うように移動したのだが。

 とにかくゴブリンの姿を確認しようと思ったからだ。

 見た目で判断するつもりはないが、小説などでは善の存在として描かれる事もある。勿論、ゴブリンが善の存在で、更に意思疎通が出来たとしても、毒に犯されたゴブリンにスライムである自分が何か出来るとは思っていない。

 ただ、この洞穴を拠点とする限り、いずれは対峙する事になるだろうから一目見ておく必要がある。そう思っただけだ。


 そっと洞穴の外を覗く。

 どうやら今は夜らしく、地球とは違う巨大な月が空に浮かんでいた。


 洞穴の周辺は少し拓けているが、5メートルもいけば巨大な木々が鬱蒼と茂る森があり、その奥には深い闇が広がっている。

 ただ、周囲の至るところにに淡いオレンジ色の光を放つキノコが生えており、洞穴の周辺は夜でも薄明るい。


 『鑑定』をしたまま外を覗いたせいか、キノコの鑑定結果がパネルの隅に表示された。



光茸(ひかりだけ)(別名:痺れキノコ)≫

 春先に森の奥深くに生える茸。食用可。

 ただし乾燥させたものは痺れ薬の原料となるため食用不可。

 乾燥させ粉末状にすると痺れ効果が高くなる。



 私はとっさに身近に生えていた光茸を引きちぎって『収納』に仕舞うと、急いで洞穴の壁をよじ登った。

 登れるかどうか不安だったのだが予想外にスルスルと滑るように登ることが出来た。4メートル程登った辺りで少しだけ段になっていたのでそこで止まり『収納』から光茸を取り出す。


 ここからは『錬金術』を使う。

 『錬金術』の使い方はリーハちゃんが貸してくれた雑誌に載ってたのでバッチリ予習済みだ。まさか初めて使う『錬金術』が料理以外になるとは思ってもみなかったけれど。


 『錬金術』は錬成空間内で様々な素材を掛け合わせたりして、新たなアイテムを作り出すスキルだ。

 今から作るのは勿論、光茸から作れる≪痺れ薬≫。

 『錬金術』で錬成空間を作り出し、その中にキノコを放り込む。そして“乾燥”した後に“粉砕”を行う。

 出来立ての≪痺れ薬≫を『収納』へ入れたその時、木々の間からそれは表れた。


 肌は緑がかった黒。耳は大きく先が尖っている。

 目は赤黒く濁り、毒のせいで苦しいのか耳元まで裂けた半開きの口からは紫色の長い舌がだらりと垂れていた。


 あまりの醜悪さに息をのむ。生物としての本能が訴える。


 あれは 『敵』 だ。


 ギュッと目をつぶる。

 本能でゴブリンが敵だと解ったのに、まだ迷いがあった。我ながら情けないとも思うがこればかりはどうしようもない。

 けれどどんなに嘆いてもこの世界でスライムとして生きていくしかない事も十分理解している。

 そして、今ここで逃げれば二度と戦う事は出来ないだろう事も。


 戦う事から逃げても良い。

 でもその替わりに、私は永遠に洞穴の周囲しか知らず、いつ襲われるかも知れない恐怖に怯えながら一生を過ごす事になるだろう。


 冗談じゃない。


 そんな生活を送るために私は転生した訳ではない。

 美味しい物を食べたい。安心して眠りたい。知らない食材を使って料理をしてみたい。


 そして、この世界の事を知りたい。


 私は目を開けた。戦う為に。


 改めてゴブリンを『鑑定(みる)』。



【種族】ゴブリン

【レベル】3

【HP】15/38

【スキル】『棍棒(level2)』『逃走(level2)』

【状態】毒



 まだ毒状態のようだ。HPも最初に『鑑定』した時より3下がっている。


 どうしよう。

 もう少しHPが下がるまで様子を見た方が良いだろうか。いくら毒に犯され弱っているとはいっても、相手の体力はまだ私の3倍はある。

 どうやって戦うかにもよるが、出来れば一桁代まで下がってからにしたい。


 そのときふと、このゴブリンは何処に向かおうとしているのだろう? と疑問に思った。


 じっと観察していると、ゴブリンが洞穴を回り込んだ先に向かっているのに気付き、音をたてないようにゴブリンの向かう場所に先回りする。


 向かいながら洞穴の壁に登っていて良かったと思った。

 洞穴の周辺は拓けていたから気付かなかったが、ここは森の中だ。歩きやすい道なんてあるわけがない。

 地面は様々な植物で覆われており、サイズの小さなスライムでは植物に埋もれて身動きが取れなかっただろう。

 それに動けば草が音を立て、ゴブリンに私の存在を知られてしまう。

 洞穴の壁にも草花は生えているが、どれも背丈が低いうえに適度に隙間があるため、動きを阻害される事もなく植物に触れて音を立てる事もない。


 毒に犯されてるせいかゴブリンの歩みは遅い。『索敵』で周囲を警戒しつつも、私はゴブリンが目指している場所に先回りする事が出来た。

 洞穴の壁に沿って進んだ先には小さな池があり、その池を囲むように背丈の低いギザギザとした葉を持つ植物が生えていた。

 発動しっぱなしの『鑑定』が植物の情報を教えてくれる。



≪ヤマ≫

 年間を通して採集出来る薬草。

 回復、解毒、造血、健胃効果がある。

 磨り潰して塗布すれば止血効果がある。

 低級ポーションの素材。



 ヤバい。ゴブリンの目的はこの薬草だ。

 ここにゴブリンがたどり着いたら私に勝ち目はない。


 慌てて周囲を確認すると壁に埋もれるように生えている一本の大きな木が目に入った。

 見上げると太い枝が四方に伸びており、その枝の一つが池に行くために通るであろう場所の真上に張りだしていた。


 急いで来た道を戻る。

 ここに来る途中で壁が崩れ、レンガ位の大きさの石がいくつか転がっていたのを思い出したからだ。

 壁が崩れている場所にたどり着くと、大きな石を2つ『収納』に仕舞い、すぐにまた来た道を戻る。木をはい登り池に続く道のりの真上に張りだした枝の上にたどり着いたその時、ゴブリンが姿を表した。


 ゴブリンの現在のHPは10。


 ゆっくりと近付いてくるゴブリンが真下に来た瞬間、私は『収納』から取り出した≪痺れ薬≫を下に向かってばらまいた。


「ギッ!?」


 ゴブリンが慌てたような声を上げてその場に倒れる。

 【状態】に麻痺が追加されたのを確認し、『収納』から石を1つ取り出し、私はゴブリンに向けてその石を――――落とした。



 ガツッ……。と嫌な音がした。

 自分に当たったわけでもないのにおもわず身をすくめてしまう。

 ゴブリンの残りのHPは3。

 ゴブリンはまだ生きていた。頭部から赤い血を流し、痺れた手足を動かしながら必死で逃げようともがいている。


 『収納』に入れていたもう1つの石を落とす。

 今度はグチッと肉が潰れたような濡れた音がした。


 その瞬間、『索敵』から赤い点が1つ消え、私のレベルは4になった。

【後書き】

シリアスもう少し続きます。

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