2 ステータス
水面に写る水まんじゅう……。ではなく私。
中央にうっすらと透けて見えるのがスライムの『核』というものなんだろうけど……。何故に小豆色?
おかげで水まんじゅう感が半端ない。いや、もう水まんじゅうにしか見えない。
これはあれか? 私が和菓子好きだからか? それともあの世で和菓子を食べたからか?
暫くの間そんなどうでもいい事を考えてしまった。
「……まぁ、なっちゃったものは仕方ない。さすがに道に落ちている水まんじゅうを喜んで食べるモンスターはいないだろう……。多分」
ははははは~っと乾いた笑いが口から零れる。そこでふと気が付いた。
「そういえば私、喋れるんだ」
自分以外のスライムを知らないので絶対とは言えないが、何となく他のスライムは喋れないだろうなと思った。
でなければスライムの寿命は『不明』にはならないはずだ。
コミュニケーションがとれる自分より弱い生き物を好き好んで殺す人間はそういないと信じたい。
まぁ、他のモンスターに殺される可能性も十分あるのだが。というよりその可能性の方が高いかもしれない。
とりあえずこの洞穴は安全だと思う。
崩れた岩が入口を塞いでいるので、中まで入ってこられるのは私サイズの小動物ぐらいだし、なによりここはトラちゃんが私が発生する場として選んでくれた場所だ。
この先どうなるかは分からないけれど、暫くはここを拠点として活動した方がいいだろう。
ふぅ……。と息を吐く。
やるべき事もするべき事も考えなくてはならない事も沢山ある。だが、まずは自分の体力等を確認すべきだろう。
これによって今後どう生きていくか決めなくてはならないのだから。
よしっ! と気合いを入れて自分を『鑑定』してみた。少しでも良い結果が出るように神様'sの顔を思い浮かべながら。
目の前にゲームのシステム画面のような半透明の白いパネルが現れる。
【名前】横山 ハル
【種族】スライム
【年齢】1
【レベル】1
【HP】5/5
【スキル】
『索敵(level2)』『逃走(level5)』
『鑑定(level10:最大値)』
『収納(level2)』『錬金術(level1)』
【モンスタースキル】
『擬態(level1)』『自動回復:小』
【特殊スキル】
『ノーダメージ(1/1)』
「ノーダメージ」
即効で特殊スキルを発動させた。
これ、転んだだけで死ぬ。
☆
「えいちぴーがご……」
呆然と白いパネルを眺めた。
しかし何度確認してもパネルの数字は変わらない。
転生する前は出来るだけ平穏無事に生きる方法を探そうと思っていたが、そんな事すら許されないほど今の私は弱いようだ。
このままでは日常生活もまともに送れそうにない。
「せめて転んでも死なない程度には強く……。いや、丈夫になりたい……」
しかしあまりの弱さに愕然とすると同時に、自分がどれ程恵まれているのかも実感した。
他のスライムはモンスタースキルの『擬態』と『自動回復:小』しか持っていないだろうから。
おそらく『擬態』で姿を隠しながら生きているのだろう。『自動回復:小』は一見すると戦いに向いているスキルのように感じるが、これは日常生活で傷を負った場合の自己修復機能程度のものだろう。
そもそも敵の攻撃が当たったら即死なのだ。
戦闘においてスライムの自動回復は意味がない。
でも私には神様達から貰ったスキルと人としての知識がある。これらをフル活用してレベルを上げる方法を考えなくてはならない。
それにはまず、周囲の敵の強さを知る必要がある。
「『索敵』」
白いパネルに表示されていたステータスが消え、代わりに周辺の地図が表示された。
地図の中央の白い点、これが私のいる場所。そしてその周囲に幾つかの赤い点が散らばっていた。おそらくモンスターの位置を示しているのだろう。
一番近くにある赤い点を『鑑定』してみる。
【種族】ゴブリン
【レベル】3
【HP】18/38
【スキル】『棍棒(level2)』『逃走(level2)』
【状態】毒
状態の欄に目が釘付けになった。
「……毒に犯されてる」
これ、もしかして今なら……。
いや。
いや待て。
ちょっと待って。
確かにレベルを上げるために、敵を探すために『索敵』と『鑑定』をした。
けど、出来る?
小さな虫などではない肉体を持つ生物を殺す事が……。
つい先程までこんな事とは無縁の、平和な世界で暮らしていた私に?
生きた魚なら捌いた事がある。
けれどそれと、今からやろうとしている事は全く意味が異なる。
呼吸が荒くなる。
赤い点はゆっくりとこちらに近付いてきていた。
【後書き】
ハルさん弱すぎですね。
一応、強くなる予定です。




