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1 始まり

 ポチャンッ……


 と、水滴が水面に落ちる音がして目が覚めた。


 湿った土の匂いがする。

 ゆっくりと目を開けるが、焦点が合わずぼんやりとした景色が見えるだけだった。

 そして目を擦ろうとしてぎょっとする。自分の手が、人のそれではなかったからだ。


 それは白濁した触手のようなものだった。

 呆然と眺めているうちに記憶がはっきりしてきた。


(……そうか、私。スライムに転生したんだ)


 改めて辺りを見渡す。

 幸いにも焦点が定まらなかったのは一時的なものだったらしく、今でははっきりと見ることができた。


 どうやら洞穴のような所にいるらしい。

 奥に入口があるが、岩が崩れたのかほぼ全て埋まってしまっており、わずかに空いた隙間から外の光が差し込んでいる。


 そしてすぐ側に周囲とは違う質感を持った薄汚れた灰色の石がひとつ転がっていた。


 その石を見た瞬間、とてつもなく嫌な気持ちになった。

 石そのものにではく、石の在りようにだ。

 石は何者かによって壊され、汚されていた。


 何故だかわからないが、とても大事なものを土足で踏みにじられた――――そんな気分になった。


 洞穴は随時長い間使われていないようで、灰色の石の上にはうっすらと埃が積もっている。

 触手のような手を伸ばしてそっと灰色の石を拭い埃を落とすと、僅かにだが白い部分が見えた。おそらく元は美しい白い石だったのだろう。


(後で綺麗にしよう)


 そう心に誓いながら自分の体を見下ろしてみた。


 想像通りのプルプルボディのようだ。

 ただ、色が白だったのは予想外だ。スライムは青や緑のイメージがあったから。

 全身を見てみたいけど、ここには鏡なんて無いしなぁ……。と思っていたら


 ポチャンッ……


 と、また水が落ちる音がした。


 洞穴の奥なの天井の岩肌から染みだした水が溜まっている場所があるようだ。


(水面に写るかもしれない)


 そっと水音がした方へ近づき、恐る恐る水面を覗く。


 そこには一匹のスライムがいた。


 白濁したプルンとしたボディの中に小豆色の塊がうっすらと透けてみえる。

 思わず――無いけど――眉をしかめる。


(……なんかこれ見たことある)


 私も小梅ばあちゃんも大好きで、夏になると冷蔵庫に必ず入っていたあれ。


 そう、これは。



「……水まんじゅうだ」



 どうしよう。


 私。


 私。




「…………美味しそう」

【後書き】

スライムになりました!

やったね!

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