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転生

「……じゃあそろそろ行くかにゃ」


 トラちゃんが私をみた。


 いよいよだ、私はスライムに転生する。

 不安で心臓がギュッとなる。皆とはお別れだ、ここから先は一人でなんとかするしかない。

 鼻から息を吸って、、、、吐く。

 大丈夫、今までだってなんとかやってきた。ハリーとリーハちゃんが一生懸命考えてくれたスキルもある。トラちゃんの祝福だってある。


「ハル。大丈夫?」


 ゾフル君が心配そうに見上げてきた。


「大丈夫だよ」


 全然大丈夫じゃない顔で答えたと思う。

 ごめん。


「……ハル。あのね、これあげる」


 ゾフル君はそう言いながらお魚のぬいぐるみを差し出してきた。

 お菓子を食べてる時も大事そうに抱えていたぬいぐるみだ。


「でもそれゾフル君の大事な物なんじゃないの?」

「うん、一番のお気に入りなの」

「じゃあそれはゾフル君が持ってなきゃ」


 ゾフル君はう~んと少し考えたあと、ぬいぐるみをもう一度私に差し出してこう言った。


「じゃあねぇ、貸してあげる」

「でも返せるかどうか……」


「大丈夫だろ? それは神界の物だ。何処でどうなろうが最後はゾフルの元に戻る」


 いつの間にか側まで来ていたハリーが私の声に被せるように喋る。そして、ボソッと呟いた。


「ゾフルはこう見えて頑固だからな。……受け取るまで退かねぇぞ」


「ハルぅ。貸したげるのぉ」


 ゾフル君はグイグイとぬいぐるみを私に押し付けてきた。これは受けとるしかなさそうだ。


「じゃあ、借りるね」

「うん! 貸したげる!」


 目線を合わせるためにしゃがみ、頭をなでなでしながら受け取るとキューキューと嬉しそうに鳴いた。

 ちょいと、この子激可愛いんですけど!


「ハルさん、準備が出来ましたわ」


 リーハちゃんの声に振り返った私は息を飲んだ。


 そこにはが宇宙(そら)が拡がっていた。

 さっきまでいた白い空間は、天井も壁も消え去り、16畳ほどの床だけ残して何もかもが闇と星の世界になっていた。


「こっちにゃ」


 トラちゃんが手招きをしているので近付く。床の端っこだ。ちょっと怖い。

 トラちゃんが床の下を指差すので落ちないように注意しながら覗いた。


 そこには『世界』があった。


 そしてその『世界』を取り巻くように無数の小さな光の粒がくるくると一定の方向に向かって流れていた。それはゾッとするほど美しい光景だった。

 本当に美しい物を見ると自然に涙が出るというのは本当なんだと初めて知った。


「あの光の粒、全てが命です」


 リーハちゃんが細い指先で『世界』差す。


 凄い。


「ここから飛び降りてもらうにゃ」


「………………はい?」


「ここから飛び降りてもらうにゃ」


 ビックリすると涙が止まるって本当だった。しかもヒュッって引っ込むの。一瞬で。


 ……凄い。


「ト、トラちゃん? ものすごい高さなんですが?」

「直ぐに意識が無くなるにゃ」


 それただの気絶……。


「ハルさん勢いですよ!」

「下を見ずに飛び込め!」

「ハル頑張って!」


 ちょっと!

 なにそのバンジージャンプみたいなノリ!


「もう死んでるから大丈夫だにゃ!」


 その励ましいらねぇ!


「うぐぐぐぐ……」


 これはかなり怖い!

 ゾフル君から借りたお魚のぬいぐるみを思わず握りしめたら『ギョェェェェ……』って音が出た。

 こ、これ鳴るんだ。ちょっと面白いじゃないか。


 後ろを振り返ると皆が応援してくれていた。


 よ、よし! 女は度胸!


「皆!」


 ふと我に返った。

 『行ってきます』って言うべきかどうか迷ったから。



「ハルさん!」


 リーハちゃんの声にハッとなった。


「ハルさん! 行ってらっしゃい!」


 思わず目を見開いた。

 『行ってらっしゃい』なんて久々に言われた。

 小梅ばあちゃんが死んでからは言ってくれる人なんていなかったから当たり前だけど。


 私は大きく頷いて叫ぶように答えた。


「行ってきます!!!!」



 飛び降りた瞬間、小梅ばあちゃんの声が聞こえた気がした。




『ちゃんと生きるんだよ』


 そして、私の意識は光に溶けた。

【後書き】

つ、ついに転生までこぎ着けました!!

まだスライムにはなってないけど……。


次話は神様目線の閑話(?)的なお話となりますので、要らんわ!って方はスルーで。

ハルが去った直後のリーハちゃんとトラちゃんの会話です。


その後からスライムです!

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